「人生何があるか分からない」と、70歳で「6000万円」貯めこむ母に呆れ…義両親はすでに“生前贈与”などしてますし、ある程度の年齢なら「資産を手放す準備」をすべきですよね? 終活開始の目安とは
本記事では、平均余命から見た終活の目安、現金6000万円と実家2000万円を相続した場合の相続税額、そして生前贈与を賢く活用するポイントと注意点を、7年の持ち戻しルールも含めて解説します。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
終活はいつから? 平均余命から見る目安
「人生何があるか分からない」という母親の言葉は、あながち間違いではありません。厚生労働省の調査によると、70歳女性の平均余命は20.10年、70歳男性は15.78年で、平均的には女性は90歳ごろ、男性は86歳ごろまで生きる計算になります。
ただし、平均余命はあくまで統計上の目安であり、加えて、心身ともに元気に過ごせる期間とは限りません。判断能力が低下すると生前贈与や遺言書の作成が難しくなります。一方、老人ホームへの入居や介護が必要になれば、まとまった費用がかかることもあります。
母親がお金を残したがるのは、老後の安心を確保し子どもに迷惑を掛けたくないという親心とも言えるでしょう。だからこそ、終活は資産を手放すことを急ぐのではなく、生活防衛資金を確保した上で、余った分をどう整理するかを、元気なうちから逆算して考えるのが現実的です。
現金6000万円と実家2000万円、相続税はいくらかかる?
仮に、父親はすでに亡くなっており、現金6000万円と実家(相続税評価額2000万円)を子ども1人が相続するケースで考えてみます。遺産の合計は8000万円です。相続税には基礎控除という非課税の枠があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
相続人が子ども1人であれば、基礎控除は3600万円です。遺産8000万円から基礎控除3600万円を差し引くと、課税対象になるのは4400万円になります。この金額に相続税の税率20%を掛け、控除額200万円を差し引くと、相続税額はおよそ680万円です。
今回は現金6000万円があるため納税資金には困りませんが、何もしなければこれだけの税金がかかる点は変わりません。なお、同居しているなど一定の条件を満たせば、実家には「小規模宅地等の特例」が使え、評価額を最大80%減額できる可能性があります。
生前贈与で相続税を抑える方法
相続税を大きく減らすためには、元気なうちから少しずつ資産を家族に移しておく生前贈与が役立ちます。ポイントは、非課税枠の使い方と、税金逃れとみなされないための年数のルールです。
生前贈与には、暦年課税のほかに相続時精算課税という制度もありますが、本記事では基本となる暦年課税の使い方を中心に紹介します。
年110万円の非課税枠をコツコツ使う
贈与税には、1年間(1月1日~12月31日)に110万円までなら税金がかからない非課税枠があります。この110万円は贈与する側ではなく、もらう側1人あたりの基準です。
例えば、子ども・子どもの配偶者・孫2人の計4人に贈与すれば、1年で440万円を非課税で移せる計算になります。ただし、子や孫の名前を借りただけの口座にお金を移しても、税務署に「名義預金」とみなされ相続税の対象になります。
通帳や印鑑はもらった本人が管理し、贈与のたびに契約書を作り、銀行振込で記録を残しておくと安心です。
7年の「持ち戻し」ルールに要注意
注意したいのが、亡くなる前の一定期間内に行った贈与を相続財産に足し戻す「生前贈与加算」というルールです。
2024年からの制度改正により、この期間は3年から7年に延び、2031年にかけて段階的に適用されます(延長された4年分は合計100万円まで足し戻されません)。
また、このルールの対象は、原則として相続や遺贈で財産を受け取る人です。相続人ではない孫や子どもの配偶者への贈与は、遺言で財産を渡すなどの事情がない限り、原則として対象外になります。
早めに、かつ贈与する相手を広げて始めることが、有効な対策につながります。
まとめ
70歳の平均余命は男性でおよそ16年、女性でおよそ20年です。ただし、健康や判断力があるうちにしか手続きはできません。大切なのは、母親自身の生活防衛資金を確保した上で、余った分を整理することです。
年110万円の非課税枠を、贈与する相手を増やしながら早めに使えば、相続税を抑えられます。まずは、家族で将来の暮らしについて穏やかに話し合ってみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 令和7(2025)年簡易生命表の概況
執筆者 : よし・こう
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
