定年退職で退職金2500万円ほどを受け取る予定です。妻から「半分は私のものにして」と言われました。自分が長年働いて得た退職金なのですが、退職金は夫婦で分けるものなのでしょうか?
では、2500万円の退職金を受け取った場合、本当に半分を妻のものにする必要があるのでしょうか。本記事では、退職金の法律上の扱いや離婚時の財産分与、妻へ現金を渡す場合の税金について解説します。
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退職金は結婚しているだけで妻と半分ずつになるわけではない
結論からいうと、婚姻関係を続けている夫婦であっても、夫が受け取った退職金を法律上当然に半分ずつ所有しなければならないわけではありません。
民法第762条では、婚姻中であっても、自分の名義で得た財産は原則として本人の財産(特有財産)とされています。そのため、夫が勤務先から受け取った退職金について、妻が「半分は自分名義の預金にしてほしい」と希望したとしても、直ちに退職金の半分を渡す法律上の義務が生じるわけではありません。
一方で、退職金が夫個人の財産だからといって、すべてを自分のためだけに使ってよいということでもありません。
民法第760条では、夫婦は資産や収入などを踏まえて、婚姻生活に必要な費用を分担すると定められています。そのため、老後の生活費や住宅費、医療費などをどのように負担していくかについては、夫婦で話し合っておくことが大切です。
例えば、退職金を夫名義の口座に置いたままでも、夫婦の老後資金として活用できます。そのため、「誰の名義にするか」だけでなく、「今後どのような目的で使うか」もあわせて考えることが大切です。
退職後は生活費に加えて医療費や介護費などが必要になることもあるため、将来の支出を踏まえたうえで、夫婦で管理方法を話し合うとよいでしょう。
離婚する場合は退職金も財産分与の対象になる可能性がある
注意したいのは、離婚する場合です。財産分与では、単に名義だけで判断するのではなく、夫婦が婚姻中に協力して取得・維持した財産かどうかが重要になります。
この考え方は、退職金にも当てはまります。退職金には「長年働いたことに対する賃金の後払い」という性質があり、婚姻期間中の勤務に対応する部分は、財産分与の対象となり得るためです。
また、妻が専業主婦だった場合でも、家事や育児などを通じて配偶者の就労を支えていた場合は、財産形成への貢献として考慮されることがあります。
ただし、退職金の全額を単純に二等分すればよいとはかぎりません。例えば、結婚前から同じ会社に勤務していた場合は、婚姻前の勤務期間に対応する部分を除いて考えるケースもあるため、実際の分与額は婚姻期間や勤務期間などの事情によって変わります。
このように、退職金は離婚時に財産分与の対象となる可能性があるものの、婚姻中に受け取った時点で直ちに夫婦で半分ずつに分けなければならないわけではありません。
そのため、現在離婚を予定していないのであれば、妻から求められたという理由だけで、直ちに退職金の半分を渡す必要があるとはいえないでしょう。
退職金の半分を妻に渡すと贈与税がかかる場合がある
妻の希望に応じて、退職金の一部を妻名義の口座へ移す場合は、贈与税にも注意が必要です。個人から財産を無償でもらったときは、原則として受け取った側に贈与税がかかるためです。
暦年課税では、その年に受け取った贈与財産の合計額から110万円の基礎控除を差し引き、残った金額をもとに税額を計算します。この仕組みは夫婦間の贈与にも適用されるため、「夫婦のお金だから税金はかからない」とはかぎりません。
一方で、夫婦間でやり取りするお金のすべてが贈与税の対象になるわけではありません。通常必要と認められる生活費などを、その都度負担する場合は非課税とされることがあります。
ただし、まとまった金額を妻名義の預金として残すと、生活費ではなく贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。
そのため、退職金の一部を妻名義に移したい場合は、金額や目的によって税務上の扱いが変わることを踏まえて判断する必要があります。まとまった資金を移す予定がある場合は、事前に税理士などの専門家へ確認しておくと安心でしょう。
退職金は「夫婦で半分にする」と決める前に老後資金全体で考えよう
退職金は、結婚しているだけで当然に夫婦半分ずつのものになるわけではありません。ただし、離婚時には婚姻期間中の勤務に対応する部分が財産分与の対象になる可能性があります。
また、妻名義の口座へまとまった金額を移すと、贈与税がかかる場合もあります。退職金をどのように分けるかを決める前に、今後の生活費や年金、医療・介護費などを整理し、必要に応じて専門家にも相談しながら、夫婦で納得できる管理方法を考えましょう。
出典
デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法
最高裁判所 財産分与請求調停
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
