公開日: 2020.12.16 年金

障害年金ヒント集(1) 初診日を変更する

執筆者 : 和田隆

年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて…」と悩んでいる人がたくさんいることが分かります。確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。
 
しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。
 
第1回は「初診日を変更する」です。
 
和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「すぐわかる! 障害年金のもらい方」
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和田隆

執筆者:

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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初診日は、原則として変更できないが…

障害認定基準によると、障害年金の初診日は「障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」とされています。最初の病院、次の病院というような病院ごとの初診の日ではありませんから、本来は、すでに確定しており、後から変更されることはありません。
 
ですから、この初診日での保険料納付要件が満たせなかった場合は、障害年金の請求自体ができませんし、初診の病院の受診証明が入手できない場合は、請求が難しくなります。
 
ところが、この初診日を変更することができるかもしれません。決して違法な手段を用いるのではありませんから、ご安心ください。次のような方法です。
 
1)社会的治癒の適用を検討する
2)「初めて2級」の適用を検討する
3)病名の確定診断日を調べる
4)20歳前の受診を探す
 
それぞれ説明します。
 

1)社会的治癒の適用を検討する

社会的治癒は、病気が完治していなくても、長期間、治療を受けることなく、普通の社会生活が送れていたのなら、いったん治癒したとみなして、再発したときの治療を初診とする方法です。医療の分野での医学的治癒とは別物で、社会保障制度の中で認められた考え方です。
 
障害年金の請求では、この考え方を適用することが認められています。治療を受けることなく過ごした期間は、傷病の種類によってさまざまですが、精神障害の場合で5年以上というのが一般的です。
 
もっとも、社会的治癒を適用する場合は、普通の社会生活が送れていたことを具体的に示さなければなりません。再発防止の薬は飲んでいても構わないとされていますので、その薬をもらっていたときの医師の診断書をはじめ、例えば、しっかり就労できていたことを示す給与明細や昇格辞令の写し、友人・知人らの証言などを集めて提出する必要があります。
 
社会的治癒は「主張したら、承認される」というような甘いものでありません。請求者側が説得力のある資料を提出できるかどうか、にかかっています。
 

2)「初めて2級」の適用を検討する

障害等級が3級以下の障害を持っていた人に、新たに別の障害が発生し、両方の障害を合わせると障害等級が2級に該当する場合を「初めて2級」と呼びます。
 
この場合は、後から発生した障害(「基準障害」と言います)については、加入要件や納付要件が問われますが、先に発生した障害(「前発障害」と言います)は、加入要件や納付要件が問われません。
 
初診日が、基準障害の初診日より前でさえあればよいのです。ですから、前発障害のときに障害年金を裁定請求しようとしたものの、保険料納付要件や初診日の証明でつまずいて請求できなかった人も、改めて請求が可能になります。
 
「初めて2級」を適用するには、条件があります。
 
まず、前発障害が過去に1級または2級に認定されていた場合は適用になりません。このため、前発障害が単独では3級以下であったことを証明する必要があります。通常の障害年金の請求の場合とは逆に、軽い症状だったことを示す資料を集めることになります。
 
前発障害についてのカルテ、障害者手帳を請求したときの診断書などが考えられます。上記の社会的治癒の適用と同様に、説得力のある資料を提出しなければなりません。
 
また、65歳の誕生日の前々日までに2級に該当しなければなりません。請求は65歳以降でも構いませんが、遡及(そきゅう)はありません。支給は請求月の翌月分からです。
 

3)病名の確定診断日を調べる

慢性疲労症候群、線維筋痛症、化学物質過敏症など病名の判定が難しい病気で障害年金を請求した場合に、病名の確定診断日が初診日として認定されるケースが増えています。
 
これらの病気の患者さんは、病気の診断が難しいために、あちらこちらの病院を受診することが多く、厚生労働省や日本年金機構など保険者側も、初診日の判定に苦労したようです。そこで、3、4年前から、こうした運用が行われるようになりました。
 
法令に基づくものではなく、あくまでも保険者側の運用です。このため、「裁定請求の時期によって不公平が生じる」などの批判の声もあります。しかし、病名の確定診断日が初診日になれば、有利になる人にとっては、ありがたいことです。
 
該当している場合は、積極的に取り入れて、障害年金を請求するのが得策でしょう。
 

4)20歳前の受診を探す

初診日が20歳前ならば、保険料納付要件は問われません。また、その傷病の治療が20歳前に行われたことが証明できれば、正確な初診日が分からなくても構いません。20歳前の受診を探す理由はそこにあります。
 
子供のころの治療は覚えていないこともあるでしょうし、子供だけに正確な病名を聞かされていないこともあるでしょう。両親や兄弟にたずねてみると、受診歴が分かるかもしれません。
 
ただし、初診日が20歳前の場合(厚生年金保険や共済年金に加入している場合は除きます)は、2級以上に該当しなければならず、また支給額も、同じ等級の障害厚生年金受給者や障害共済年金受給者より低額になります。
 

積極的に取り組んでみませんか

初診日を変更できれば、助かるのは、保険料納付要件が満たせない場合や初診の病院の受診証明が入手できない場合に限りません。
 
社会的治癒が適用される場合などは、初診日が厚生年金保険の加入期間中になれば、障害等級が3級まで設けられているし、2級以上に認定された場合は報酬比例部分の支給もあるので、国民年金の場合よりも有利です。
 
上記のいずれの手法も、障害年金の受給にこぎつけるのは簡単ではありません。年金事務所に足を運んでしっかり相談することや、社会保険労務士など専門家の助力を得ることなども含めて、積極的に取り組んでみてはどうでしょうか。
 

執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
 

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