更新日: 2020.12.30 その他年金

障害年金ヒント集(2) 納付してから受診する

障害年金ヒント集(2) 納付してから受診する
年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて……」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることが分かります。
 
確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。
 
悩んでいる人たちへ受給のためのヒント集です。第2回は「納付してから受診する」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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納付要件を満たしているか、まず確認を

障害年金の請求を検討するうえで、まず確認をしておかなければならないのが、納付要件を満たしているかどうかということです。初診日の時点で保険料をしっかり納めていたなら、納付要件を満たしていたことになります。
 
加入していた年金制度が国民年金にせよ、厚生年金保険にせよ、あるいは共済年金にせよ、いずれであっても保険制度ですから、保険事故(障害年金の場合は、障害を負うこと)が発生したときに保険料の納付状況が問われるのです。火災保険や生命保険と変わりません。
 

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「3分の2要件」と「前1年要件」がある

納付要件は、次の(a)(b)のどちらかに該当する必要があります。
 
(a)初診日の前日において、初診日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、猶予期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あること
 
(b)初診日が2026年3月末日までにあって、初診日に65歳未満である場合は、初診日の前日において、初診日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
 

いろいろな条件に注意

ここで、注意してほしいのは次の点です。
 
(1)上記の(a)(b)に「初診日の前日において」という文言があります。納付要件が満たされているどうかを見るのは「初診日の前日」ということです。このため、受診後に(厳密にいえば、初診日以後に)未納期間の保険料を納付しても、納付済期間としては認められません。
 
火災が起きたあとで、未納だった火災保険料を納付しても効果がないのと同じことです。
 
(2)上記の(b)については、60歳から64歳までに初診日がある場合は、最後の被保険者月から1年間さかのぼって未納期間がないかを見ます。
 
(3)上記の(b)にある「保険料の未納」には、保険料の免除期間や猶予期間は含まれません。また、海外に住み、国内に住民票がなかった期間など国民年金に加入しなくてもよかった期間も未納期間には含まれません。
 
(4)初診日が20歳前の場合は、納付要件自体がありません。20歳前は国民年金の被保険者ではないからです。
 
(5)初診日が1991年4月末日以前の場合は、納付要件が別です。
 

「初診日の前日において」が重要

上記の(1)は重要です。国民年金の保険料をいつ納付したかは、あまり覚えていないものです。特に、保険料の支払いを不定期にしていた人や、家族に任せていた人などは注意が必要です。
 
日本年金機構から定期的に送られてくる「ねんきん定期便」では支払日まではわかりません。年金事務所や市役所に足を運んで、自身の記録を調べてもらう必要があります。
 
筆者のもとに実際に来た相談事例をご紹介します。
 
筆者がある団体の電話相談で相談員をしていたときのことです。電話をかけてきた人が、「前日において」の意味を繰り返し質問され、最後にこう言われたのです。
 
「わかりました。障害年金をもらいたいので、私はこれから年金事務所に行き、未納期間の保険料を支払ってきます。そして、明日、初めて病院へ行きます」と。
 
筆者が驚きつつ、不安にもなって「きょう、病院へ行かなくて大丈夫なんですか」と聞くと、その人は、自身の親の病気の時と症状が似ており、病名の予測がついていること、1日や2日では、病気があまり進行しないとわかっていることなどを話してくれました。賢明であり、冷静ですね。脱帽でした。
 

免除申請や猶予申請でも同じ効果がある

もちろん、保険料の納付でなくても、保険料の免除申請や猶予申請でも同じ効果があります。こうした申請をするときは、二度手間にならないように、事前に年金事務所に問い合わせて必要書類をしっかり確認しておいてください。
 
どんな傷病にでも使える手法ではありませんが、この「前日において」というルールは、覚えておくと、今後役に立つかもしれません。
 

執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
 

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