更新日: 2021.01.28 その他年金
障害年金ヒント集(5) 障害者特例という変則技がある
確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。
悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第5回は「障害者特例という変則技がある」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
障害年金より受給要件が緩やか
障害年金に似ていますが、障害年金より受給要件が緩やかで、人によっては、障害年金より高額の年金を受給できる制度があります。
それは、「特別支給の老齢厚生年金の特例」(厚生年金保険法附則第9条の2)です。一般的に「障害者特例」と呼ばれています。
(※共済年金の場合は、条件が若干異なります。各共済組合におたずねください)
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「特別支給の老齢厚生年金」とは
「特別支給の老齢厚生年金」は、老齢年金受給開始年齢の65歳になる前に受給できる年金で、次の条件すべてに該当すると、請求によって支給されます。
【1】男性は1961年4月1日以前生まれ、女性は1966年4月1日以前生まれ
【2】60~64歳(支給開始時期は、生年月日等によって異なる)
【3】厚生年金保険の加入歴が1年以上ある
【4】老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている
障害を持っている人に、より手厚い配慮
「特別支給の老齢厚生年金」は、老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されますが、「障害者特例」はこれに加えて、「老齢厚生年金の加入期間に応じた定額部分」と配偶者加給年金額が支給されます。障害を持っている人には、より手厚い配慮がされているわけです。
「障害者特例」の受給には、上記の「特別支給の老齢厚生年金」の支給要件に加えて、次の条件すべてを満たす必要があります。
【1】障害厚生年金3級以上の障害状態にある
【2】初診日から1年6ヶ月経過しているか症状固定が認められる
【3】請求時に厚生年金保険の被保険者ではない
「関門」がずっと少なくなる
障害者特例が障害年金より受給要件が緩やかであるというのは、次のような点からです。障害年金を請求する場合なら、直面することが多い、いわば「関門」がずっと少なくなります。
【1】初診日の加入要件や保険料納付要件が問われない(障害年金は、初診日の加入要件や保険料納付要件が厳密に問われる)
【2】3級の障害状態でも支給される(障害基礎年金の場合、3級の障害状態なら不支給)
【3】障害年金が支給停止になっていても支給される(障害年金には、「20歳前障害の所得制限」等による支給停止がある)
【4】第三者行為や労働災害による障害の場合も支給調整がない(障害年金は、支給調整がある)
障害者特例の受給が始まると、たいていの障害年金の場合と違って更新手続きが不要です。
老齢年金の一部なので課税される
ただし、次の点はしっかり認識しておかなければなりません。
【1】老齢年金の一部なので課税される(障害年金は、非課税)
【2】支給される定額部分は、厚生年金保険の加入期間に応じた分だけなので、人によっては少ない場合がある(障害年金の定額部分は、満額)
【3】支給開始は、請求月の翌月分から(障害年金の受給権を取得していた場合は、請求月にかかわらず遡及(そきゅう)がある)
【4】受給中に重症化して2級以上に該当した場合は、障害年金に切り替えるなどの気配りが必要(障害年金は、たいていの場合、更新手続きがあるために重症化が分かりやすい)
障害年金の請求に併せて障害者特例の請求も
障害年金と障害者特例のどちらが有利かは、人によって異なります。そのため、障害者特例の請求を検討する場合は、年金事務所で受給額を試算してもらうと良いでしょう。
障害年金の請求に併せて障害者特例も請求する場合は、請求書が1枚増えるだけですので、手続きは簡単です。該当する人は、念のため、障害者特例の請求書も提出しておくことをお勧めします。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士