更新日: 2021.03.08 厚生年金

厚生年金保険料は4月から6月の給料で変わる? 厚生年金保険料の算出の仕方

執筆者 : 辻章嗣

厚生年金保険料は4月から6月の給料で変わる? 厚生年金保険料の算出の仕方
厚生年金保険料は、収入に応じて徴収されますが、毎年4月から6月までの3ヶ月の給料で1年分の保険料の額が決まります。今回は、厚生年金保険料の仕組みについて詳しく解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

厚生年金の保険料はどのように決まるの?

1.厚生年金保険料の算出方法

厚生年金の保険料は、毎月の給与から徴収される保険料と賞与から徴収される保険料があります。その保険料の額は、下表の式から算出されます(※1)。
 


 
この計算では、毎月の給与額ではなく標準報酬月額が、また、実際の賞与額ではなく標準賞与額が用いられます。なお、保険料率は、共通で18.3%に固定されており、事業主と被保険者が折半して負担します。
 

2.標準報酬月額とは

毎月の保険料の算出に使用する「標準報酬月額」とは、被保険者が受け取る給与を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定されます。そして、現在の標準報酬月額は、下表のとおり1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています(※2)。
 


 
なお、標準報酬月額の対象となる報酬には、基本給のほか、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金など、事業所から現金または現物で支給されるものが含まれます(※1)。
 

3.標準賞与額とは

賞与の保険料の算出に使用する標準賞与額とは、税引き前の賞与の額から1000円未満の端数を切り捨てたもので、支給1回につき、150万円が上限となります。なお、同じ月に2回以上支給されたときはその合計額を1回として計算します。
 
標準賞与額の対象となる賞与は、賃金、給料、俸給、賞与などの名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち年3回以下の回数で支給されるもので、賞与、ボーナス、期末手当、年末手当、夏(冬)季手当、越年手当、勤勉手当、繁忙手当、年末一時金などが対象となります。
 
なお、年4回以上支給される賞与については、標準報酬月額の対象となります(※1)。
 

標準報酬月額はどのように決まるの?

1.標準報酬月額の決定方法は5種類

標準報酬月額の決定方法には、以下の5種類があります(※1)。
 
(1)資格取得時の決定
被保険者が資格を取得した際の報酬に基づいて一定方法によって報酬月額を決定します。
 
(2)定時決定
毎年7月1日現在で使用される事業所において、同日前3ヶ月に受けた報酬の総額をその期間の総月数で割って得た額を報酬月額として標準報酬を決定し、9月から翌年8月までの各月の標準報酬とします。
 
(3)随時改定
被保険者の報酬が昇給・降給などで固定的賃金に変動があり、継続した3ヶ月間に受けた報酬の総額を3で割って得た額が従前の標準報酬の基礎となった報酬月額に比べて「著しく高低を生じた場合」において、厚生労働大臣が必要と認めたときに改定されます。
 
(4)育児休業等終了時の改定
被保険者からの届け出によって、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額に基づき、その翌月から新しい標準報酬月額に改定します。
 
(5)保険者決定
算定が困難な場合や算定額が著しく不当であると認められる場合は、厚生労働大臣が算定する額を被保険者の報酬月額として標準報酬月額を決定(改定)します。
 

2.定時決定の方法

毎年7月1日現在で使用されている全ての厚生年金の被保険者(6月1日以降に資格を取得した方など一部を除く)について、同日前3ヶ月(注)(4月、5月、6月)に受けた報酬の総額をその期間の月数で割って得た額を報酬月額として、標準報酬月額を決定し、9月から翌年の8月までの各月に適用されます(※3)。
 
(注)支払基礎日数(勤務日数)が17日(厚生年金保険が適用される特定適用事業所に勤務するパートタイマーなどの短時間労働者は11日)以上の月が対象
 
報酬月額=(4月の報酬+5月の報酬+6月の報酬)÷3
 
なお、パートタイマーなど(短時間労働者)の定時決定は、4月、5月、6月の支払基礎日数(勤務日数)が17日以上の月、15日以上17日未満の月、15日未満の月ごとに以下のとおり判定し決定されます(※3)。
 

(1)支払基礎日数が17日以上の月が1ヶ月以上ある場合は、該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
 
(2)支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
 
(3)支払基礎日数がいずれも15日未満の場合は、従前の標準報酬月額で引き続き定時決定します。

 

まとめ

毎月支払う厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けた額を労使で折半して負担しています。そして、標準報酬月額は、毎年4月、5月、6月の報酬を基に決定され、その年の9月から翌年の8月までの保険料の計算に用いられます。
 
出典
(※1)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※2)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表
(※3)日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
 

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