「iDeCo」で税金が高くなることも!?「非課税」と「課税の繰り延べ」の違いを理解しよう。

配信日: 2018.09.20 更新日: 2021.02.01

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「iDeCo」で税金が高くなることも!?「非課税」と「課税の繰り延べ」の違いを理解しよう。
「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」は老後のための資産形成の制度として、税制面での優遇制度が設けられており、人気です。
 
確かにiDeCoを始めると所得税が少なくなるなどのメリットがあるのですが、場合によってはかえって税金が高くなるケースもあるため、注意が必要です。
 

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村井英一

執筆者:村井英一(むらい えいいち)

国際公認投資アナリスト

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。

積み立てている間は、税金がかからない

一般に、iDeCoには「3つの税制メリット」があると言われています。
 
1つ目は、購入時のメリットで、「iDeCoの掛金が所得税や住民税の対象から外れること」です。これによって、税額が小さくなりますが、これは掛金の分が非課税になるというわけではありません。
そもそも、所得税(住民税も)は、“お金を受け取った時”に課税されるものです。確定拠出年金で運用されている間は「まだ受け取っていない」という扱いで、課税の対象から外されます。
 
そして、老後になって年金や一時金で受け取る際に課税の対象となります。厳密には、税金を後からかける「課税の繰り延べ」と言えます。結果的に、受け取りの際にも税金の対象から外れると、「非課税」となるわけです。
 
2つ目は、「運用期間中に課税されないこと」です。iDeCoでは、運用期間中に投資信託から出る分配金は、すべて再投資されます。ここでもお金を受け取っていないので、税金はかかりません。
一般の投資信託でも分配金を再投資するものがありますが、分配金が出た時点で課税され、20%(現在は復興特別所得税も含めて20.315%)が引かれた後の金額が再投資されます。
 
iDeCoでは、分配金のすべてが再投資に充当されますので、その分投資効率が良くなります。
 
一般の投資信託の中にも、あえて分配金を出さずに、利益はすべて内部で運用に回しているものもあります。その分は値上がり益に反映されますが、値上がり益に税金がかかるのは売却した時だけです。それまでは利益に課税されないので、iDeCoと同じメリットが得られます。
 

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控除額の範囲内であれば、非課税に

3つ目は「受け取る時に税額控除されること」です。今まで触れたように、税金はお金を受け取った時にかかります。iDeCoも同様で、老後に受け取る年金、または一時金が課税の対象になります。値上がり益だけでなく、元本部分もここでは対象です。
 
ただ、年金で受け取る場合は厚生年金などと同じ扱いになり、非課税枠(公的年金等控除)があります。一時金で受け取る場合は、退職金と同じ扱いになり、やはり非課税枠(退職所得控除)があります。この範囲内に収まれば、元本も利益も非課税となります。それを超えても、超えた分だけが課税の対象ですから、税額が小さくなります。
 
もっとも、サラリーマンだった人などは、厚生年金などで公的年金等控除の額を超えてしまうことも少なくありません。会社から出る退職金が退職所得控除を超える人もいます。
 
その場合、iDeCoから受け取る年金や一時金は課税の対象となります。課税の対象になるのは、控除額を超えた金額であり、元本部分・利益部分という区別はありません。(一時金の場合は、超えた金額をさらに半分にしますので、税額は小さくなります。)
 

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利益ではない部分も課税の対象になることが

専業主婦の場合は、積み立てをしている時期には所得税がかかっていませんので、「繰り延べ」のメリットはありません。受け取りの際に一時金を選択すると、積み立てをしていた年数に応じて退職所得控除が適用され、この範囲内であれば、税金はかかりません。本来の退職金がありませんから、たいていはこの範囲に収まります。結果的に利益も非課税となります。
 
年金で受け取る場合は、公的年金等控除の範囲内であれば税金がかかりません。専業主婦だった人は厚生年金がないか、あっても少ないので収まることが多いでしょう。しかし、iDeCoの掛金を上限までかけていて、年金での受け取りを5年間などの短期間にすると、控除額を超えてしまう場合があります。
 
超えた金額は所得税・住民税の対象になります。課税の対象は、控除額を「超えた金額」ですので、利益の部分とは限りません。元本部分は、もともと自分のお金です。預金でも投資でも、通常、税金がかかるのは利息も含めて利益の部分です。自分のお金を引き出したのに税金がかかるというのはおかしな話ですが、このように、状況によってはかえって税金が高くなる場合もありえるのです。
 
一時金で受け取る、長期間の年金で受け取るなど、受け取り方に気を付ければこの問題は回避できますので、それほど心配はありません。積立期間が長い人は、上限近くまでかけているならば注意が必要です。もっとも、掛金額が小さいと、毎年の手数料で運用の成果が悪くなってしまいますから、それも気を付けてください。
 
これらのことを考えると、確かに税制面のメリットはありますが、それを生かすことができない場合もあります。iDeCoの最大のメリットは、「長期間、継続して、積立投資を続けること」にあると言えるでしょう。
 
Text:村井 英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト


 

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