更新日: 2020.04.07 その他年金

年金は60歳からもらった方が賢い? 定年退職前に考えたい老後のマネープラン

年金は60歳からもらった方が賢い? 定年退職前に考えたい老後のマネープラン
国民の老後の生活に関係の深い年金。多くの人たちが将来に不安を持つ中、今一度この年金制度について勉強してみましょう。
 
金融庁の老後2000万円問題以降一気に関心の高まった老後のライフプラン。そこで老後のマネー計画を立てる際のポイントを紹介します。
 
蓑田透

執筆者:蓑田透(みのだ とおる)

ライフメイツ社会保険労務士事務所代表

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、
社会保険労務士、米国税理士、宅建士
早稲田大学卒業後IT業界に従事していたが、格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。
 

ライフプラン、年金、高齢者向け施策、海外在住日本人向け支援(国内行政手続、日本の老親のケア、帰国時サポートなど)を中心に代行・相談サービスを提供中。

企業向けコンサルティング(起業、働き方改革、コロナ緊急事態の助成金等支援)の実施。

国内外に多数実績をもつ。
コロナ対策助成金支援サイト
海外在住日本人向け支援サイト
障害年金支援サイト

50歳を過ぎたら老後のライフプランを考えよう

平均寿命が年々上がり人生100年時代と言われてきた今日、この長生きリスクを無事に乗り切るためにはやっぱりお金が必要ですよね。しかし定年を迎え現役時代の様にバリバリ働いて十分な就労所得が得られない状況においては、賢く「稼ぎ」「保有し」「支出を抑える」方法を身につけたいものです。
 
おそらく日々忙しく働いているとそうしたことをきちんと考える機会があまりないかもしれませんが、定年を迎える数年前から少しずつ情報を入手し老後のライフプランに備えていきたいものです。
 

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定年退職後のマネー計画で考えるべきポイント

ライフプランでやはり中心となるのはマネー計画です。計画を立てる際にはまずは資産、収入、支出の面でどういった項目があるか、整理するところから始めてみましょう。下記に代表的なものを書き出してみました。人によってはそれ以外の項目があるかもしれません。
 

・資産

保有資産(家、預貯金、有価証券、親からの相続、など)
 

・収入

退職金、年金(公的年金、企業年金)、再雇用による就労所得など
 

・支出

借入金(ローン)、老後生活費、健康(医療費、介護費)など
 
資産はもともと保有しているものですし、支出における老後生活費は人によってほぼ消費スタイルは決まっていますので、わりと計画は立てやすいと思います。そこで、ここでは収入面にフォーカスし、マネー計画を立てる上でのノウハウをいくつか取り上げてみました。
 

収入を最大限にする賢い受け取り方、稼ぎ方

定年退職後の代表的な収入源についてそれぞれ見てみましょう。
 

【1】退職金

退職金の有無や額については就労先企業によって変わりますのでここでは触れませんが、受け取り方としては3つのパターンがあります。全額を一括で受け取る「退職一時金」、何年かに分けて受け取る「退職年金」、「2つのパターンの併用」です。この時の選択基準としては、税金とその使い道です。
 
(1)税金
退職金は「退職所得」として他の所得と合算しない「分離課税」で税額計算します。そして退職一時金の場合、金額によって以下のような「退職所得控除」があり税負担が軽減されます。
 
・勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
 
一方退職年金の場合、国民年金や厚生年金等の公的年金と同じ扱いになり、「公的年金等控除額」が適用され、公的年金と合算されます。
 
一時金でのメリットは、税金面での所得控除額が多い、ローンがあれば返済に充てて返済額を減額できること、年金でのメリットは、会社側の運用次第で受給額が増える、計画的な利用ができることになります。一時金としてまとまったお金を受け取ったものの、投資に失敗して目減りさせてしまうといったケースも少なくないので、長い老後人生では年金方式による受給も有効です。
 
(2) 使い道
前述の通り住宅ローンなどの借入金があれば金利がありますので、取得した退職金を高い利率で運用しないのであれば、返済に充てるのが金利支出を減らすためにもよいでしょう。その他住宅の買い替え、海外旅行、子供の結婚資金、健康面に問題があり医療費がかかる場合など、使い道が決まっているのであれば、一時金からの計画的な利用を考えましょう。
 

【2】公的年金

(1)「繰り上げ」「繰り下げ」請求制度
厚生年金、国民年金などの公的年金を受給する際に考えておきたいことは「繰り上げ」「繰り下げ」制度の利用です。受給開始年齢が原則65歳である公的年金では、「繰り上げ」請求(最大60歳から)、「繰り下げ」請求(最大70歳まで)を利用することができます。
 
「繰り上げ」請求では受給開始時期が早くなる分、本来の受給額から減額されます(1ヶ月あたり0.5%の減額)。一方「繰り下げ」請求では逆に遅れて受給する分、本来の受給額が増額されます(1ヶ月あたり0.7%の増額)。
 
たとえば60歳に「繰り上げ」請求すると65歳からの本来受給額が30%減額、逆に70歳に「繰り下げ」請求すると42%増額された年金を生涯受給します。
 
ここでポイントとなるのがどの受給方法がお得か、ということになります。受給総額だけの単純計算によれば、「「60歳繰り上げ」「70歳繰り下げ」請求を利用した場合」と「しない場合」の損益分岐点を比較すると約11年で逆転が生じます。
 
言いかえれば、
 
→76歳まで長生きするのであれば「60歳繰り上げ」請求しない方がお得
→さらに81歳まで長生きするのであれば「70歳繰り下げ」請求した方がお得」
 
ということになります。
 
なお配偶者または18歳未満の子がいる場合、65歳から加給年金を受給できる場合がありますが、加給年金は繰り下げの対象にはなりません(繰り下げても増額されない)。またその場合基礎年金のみ繰り下げ請求するという方法が有効です。これは加給年金が厚生年金の一部であり、基礎年金とは独立したものであるためです。
 
なお一度「繰り上げ」「繰り下げ」請求手続きすると後で変更することはできないので慎重に決めましょう。
 
(2)「60歳~年金受給開始年齢」の無収入期間
またこの時考えておくべきことは、多くの企業が60歳定年退職制を採用している中、年金を受給するまでの期間(60歳~65歳)の収入をどう確保するかです。もし就労先での再雇用、または転職できるのであれば貯蓄を切り崩さずに(または切り崩しても少額で)過ごせるでしょう。
 
その期間を公的年金の繰り上げ受給でまかなう方法も考えられますが、長生きリスクを考えると「繰り上げ」請求はお勧めしません。できることなら65歳以降も継続して働き、70歳「繰り下げ」請求できれば年金額も42%増額されますので、長生きリスクへの対応としてはかなり有効ではないでしょうか?
 

【3】定年退職後の就労

(1)在職老齢年金に注意
最近、定年退職後の再雇用はもとより、65歳以降も働けるうちは働く人が増えています。理由は収入を得るためですが、健康維持や社会とのつながりを維持したいといった理由もあるようです。
 
65歳以降の就労となれば公的年金とダブル収入となるわけですが、ここで注意すべきは在職老齢年金の扱いです。厚生年金(基礎年金は除く)の毎月の受給額と収入の合計額が47万円を超えると、超えた分の2分の1の厚生年金額が減額されます。47万円という額は少ない金額ではないので該当者は少ないと思われますが、年金額や給与が多めの場合は一度確認することをお勧めします。
 
なお、繰り下げ請求をした場合でも、在職老齢年金の停止額の計算は繰り下げ請求をしなかったものとして計算されます。(つまり繰り下げ請求をしても在職老齢年金による停止額の回避はできない)
 
また在職老齢年金は就労先で自分が厚生年金に加入した場合に発生するもので、契約社員、アルバイト、自営業などで厚生年金に加入しない場合は、合計額が47万円を越えても減額の対象にはなりません。
 
(2)雇用保険の活用
また60歳以降に就職活動をする場合、一定の要件を満たせば就職先が見つかるまでの期間雇用保険の求職者給付(65歳まで)や高年齢求職者給付金(65歳以降)を受け取ることができるので、ぜひ活用したいものです。ただし人によって受給要件が異なるので、詳細についてはお近くのハローワークで相談してみましょう。
 

まとめ

いかがでしょうか? マネー計画は一人ひとりの寿命や個人が置かれている状況が異なるため、ズバリ正解というのはありません。重要なのは必要な知識を身につけ、自分にあった最善の計画を日々考えていくことです。定年退職前にぜひ一度マネー計画にチャレンジしてみてください。
 
Text:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表

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