年金生活の母から「振込金額がおかしい」と連絡が。「支給額が多い」とのことだけど、もしかして“誤振り込み”？ 理由を解説
しかし、実際には年金の受給額は毎年変動し、振込額が増えることもあります。本記事では、どうして年金額が増えるのか、その理由や注意点を解説します。さらに、ここ数年の年金額の推移や、増えた年金はいつから振り込まれるのかなども紹介しますので参考にしてください。
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年金支給額は物価の上昇などで変動する
すでにもらい始めている年金が途中で増えるのは、年金支給額が前年度の物価上昇率や賃金の変動率に応じて改定されるからです。実際に令和7年度の年金支給額については、前年度比で1.9％の上昇となっています。
国民年金が満額の人は、令和6年度の月額6万8000円から6万9308円に、さらに平均的な厚生年金の夫婦世帯の受給額も、月額22万8372円から23万2784円に増額されています。
実際の振込額は、所得税や介護保険料、健康保険料などが天引きされたあとの金額ですが、それでも大半の人の振込額は増えているでしょう。ただ、受給額が変動するということは、必ずしも増えるケースばかりではありません。
実は物価上昇率や賃金の変動率によっては、年金支給額が減ってしまうこともあります。図表1に示した、最近の老齢基礎年金支給額の推移を見ても、増える年度ばかりでなく、減っている年度もあるため注意が必要です。
図表1
| 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 国民年金月額 （老齢基礎年金：満額1人分） |
6万5075円 | 6万4816円 | 6万6250円 | 6万8000円 | 6万9308円 |
| 対前年度増減額 | ― | ▲259円 | 1434円 | 1750円 | 1308円 |
| 対前年比 | ― | 0.4％減 | 2.2％増 | 2.6％増 | 1.9％増 |
厚生労働省 年金額改定についてお知らせします（令和4年度～令和7年度）より筆者作成
さらに、年金支給額の改定には、平均寿命や年金加入者数に合わせて給付水準を抑制する「マクロ経済スライド」が導入されています。実はこの仕組みによって、年金の増額は物価上昇率などに比べ、低い水準に抑えられてしまうのです。つまり、年金が増えたからといって、生活が楽になるとは限りません。
増えた年金額はいつから支給されるのか
このように、年金の増額は物価高に追いついておらず、手放しでは喜べません。しかし、お米の価格に代表される物価高が続く中では、増額された年金はいち早く受け取りたいものです。では、増額された年金はいつから受け取れるのでしょうか。
毎年度の年金額は4月分から改定されます。つまり、令和7年度の年金改定が金額に反映されるのは、令和7年4月分以降になります。ただ、実際に年金が振り込まれるのは、2ヶ月ごとの偶数月で年6回です。振り込まれるのは前月と前々月となるため、増額された年金が手元に届くのは6月となり、2025年度の振込日は6月13日金曜日でした。
ただ、前述ように、天引きされる税金などがあるため、年金額と振込額は一致しません。今年度の年金額の改定は、図表2にある「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」が一体となった通知書が、6月4日から送付されています。通知書から年金支給額や天引きされる保険料などが分かりますので、振り込まれた金額の詳細を確かめておきましょう。
図表2
日本年金機構 「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」（年金受給者用：はがきサイズ）
まとめ
年金受給額は物価変動率や賃金の上昇率などによって毎年改定されており、受給が始まったあとでも、振込額が増えるのは決して珍しいことではありません。また、改定前には通知書により、年金額の改定や振り込まれる内容の詳細が送付されますので、誤った振り込みではないことも確認できるでしょう。
ただ、現在の改定ルールでは、受給額が減るケースもあり、増える際も物価の上昇率を超えて年金が増えることはありません。つまり、年金が増えたからと言って、必ずしも生活が楽になるわけではないのです。
ただ、月1000円程度であっても、手取りが増えるのは悪いことではありません。内容を確認した上で、少しでも有効に活用してみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 令和7年度の年金額改定についてお知らせします
令和7年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について
執筆者 : 松尾知真
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