給料“額面45万円”なら、年金保険料「月4万円×40年=計2000万円」の支払い。それなのに夫婦で「年金23万円」だけ! さらに「老後資金1500万円足りないから自分で用意しろ」の理不尽…年金額はどう決まる?
ところが、実際に受け取れる年金額がそれほど多くないと知り、割に合わないと感じる人もいるでしょう。
本記事では、厚生年金保険料の仕組みともらえる年金額の関係、そして老後資金として「1500万円足りない」と言われる数字が何を意味しているのかを解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
「毎月4万円負担」の年金保険料はどう決まるのか
厚生年金保険料は、4月から6月の給与をもとに決まる標準報酬月額に、保険料率をかけて計算します。
保険料率は平成29年9月以降18.3%で固定されており、会社と本人が9.15%ずつを負担する労使折半の仕組みです。例えば給与が額面45万円の場合、標準報酬月額44万円の等級にあたり、本人が負担する保険料は月4万260円になります。
仮にこの金額を40年間払い続けると、本人負担分だけでおよそ1932万円です。ただし会社も同額の保険料を負担しているため、実際に支払われる保険料の総額は本人負担分の2倍にのぼります。
年金額はどう決まるのか
厚生労働省が公表している令和7年度のモデル年金額は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含めて月額23万7279円です。これは、夫が平均的な収入で40年間厚生年金に加入し、妻が専業主婦だった世帯を想定した金額です。
平均的な収入の月額換算は45万5000円で、額面45万円前後の給与で働き続けた場合の年金水準に近い数字と言えます。ただし、これはあくまでモデルケースであり、実際の受給額は加入期間や収入によって一人ひとり異なります。
ここで押さえておきたいのは、公的年金が積立方式ではなく、現役世代の保険料をそのときの高齢者への給付にあてる賦課方式で運営されている点です。
自分が払った保険料がそのまま自分の口座に積み立てられているわけではなく、世代を超えて支え合う仕組みのため、支払った総額と将来受け取る総額を単純に比較できる制度ではありません。
「2000万円払っているのに1500万円足りない」は本当に正しい比べ方なのか
2019年に話題となった「老後2000万円問題」は、2017年の家計調査をもとに、高齢夫婦のみの無職世帯では年金収入だけだと毎月5万4520円の赤字が生じるとして、これを30年分単純計算したものでした。
同じ計算方法を2025年の家計調査に当てはめると、毎月の不足額は4万2434円に縮小しており、30年分ではおよそ1500万円になります。不足分が少なくなっているとは言え、すでに2000万円近い保険料を払っているのに、さらに1500万円も足りないのかと感じる人もいるでしょう。
しかしこの2つの数字はそもそも比較できるものではありません。
夫婦の年金のモデルケース23万2784円は年額およそ279万円です。この額を毎年受給していると、本人負担で支払ってきた保険料、およそ1932万円は7年ほどで、会社負担分を含めた総額でも14年ほどで回収してしまいます。それでも生きている限り受け取れるのが年金です。
一方、足りないとされる1500万円は、収入に対しての支出の赤字額を試算したものであるため、実はまったく別の話であり、支払った保険料と比較すべき数字ではないのです。
まとめ
40年でおよそ2000万円の年金保険料を払っても、老後資金はさらに1500万円足りないと言われれば、割に合わないと感じるのは自然な反応です。
しかし「1500万円」というのは、収入より支出が多い分を試算した金額にすぎません。収入の範囲に支出をおさめる必要があるのは、老後も今の生活でも同じです。
自分で備えるべきお金は「損の穴埋め」ではなく、年金という土台に積み増し、自身の老後の生活を豊かにするものと考えれば、理不尽な思いも少しは和らぐのではないでしょうか。
まずは、ねんきん定期便で見込み額を確認し、不足しそうな分を早めからNISAなどで補っていくことが現実的な対応と言えそうです。
出典
日本年金機構 厚生年金保険料額表
厚生労働省 令和8年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
