年金は65歳なら「月14万円」。夫から「70歳まで繰り下げたほうが得」と言われましたが、受給を「5年」遅らせても本当に得になるのでしょうか? “元が取れる年齢”を確認
では、どのくらい長生きすれば繰下げ受給のほうが得になるのでしょうか。今回の記事では、月14万円の年金をベースに、70歳まで繰り下げるとどうなっていくのかについて考えていきます。
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
70歳まで繰り下げると年金は月当たり約20万円に増える
公的年金は原則65歳から受け取れます。ただ、1ヶ月単位で、最長75歳まで年金の受給開始を遅らせる「繰下げ受給」を選択することで、受給額を増やすことができます。
繰下げ受給によって年金の受給開始時期を1ヶ月遅らせるごとに、自分が受け取る年金額は0.7%増加します。例えば、70歳まで5年間、つまり60ヶ月繰り下げれば、増額率は42%になります。
仮に65歳から受け取れる年金が月14万円の場合、全額が繰下げ増額の対象になると仮定すると、70歳まで繰り下げることで毎月の年金額は19万8800円(14万円×1.42=19万8800円)まで増加するのです。
これを65歳から受け取る場合と比べると、毎月の受給額は5万8800円増加します。年間では70万5600円もの増額です。なお、この増額は生涯変わりません。つまり受給期間が長くなるほど、繰り下げによる恩恵が大きくなる仕組みが繰下げ受給なのです。
何歳まで生きれば「元が取れる」?
とはいえ、70歳まで繰下げる場合、65歳から69歳までの5年間は年金を受け取れません。65歳から月14万円を受給した場合、5年間の受給総額は840万円です(14万円×12ヶ月×5年=840万円)。
つまり、70歳からの受給を選んだうえで元を取る、すなわち65歳から受給開始した場合に受け取る年金額を下回らないようにするには、5年分の差額840万円分を将来の増額によって取り戻す必要があるわけです。
この場合、毎月の増額分は5万8800円なので、約143ヶ月分(840万円÷5万8800円)、65歳から受け取ったときに比べて長く受け取り続ける必要があります。
143ヶ月は約11年11ヶ月です。したがって、70歳から受給を始めた場合、およそ82歳頃まで年金を受け取り続けなければ、いわゆる元を取れたという状態にはならないわけです。
なお、これらの計算は、年金額の改定や税金、社会保険料などを考慮しない単純計算になりますのでご注意ください。
65歳から70歳までの生活費も重要
繰下げ受給にあたり重要な点があります。それは年金を受け取らない期間をどう生活するかです。もし、70歳まで働き続けてその間は給与収入で生活するつもりであれば、繰下げ受給もしやすいでしょう。
一方で、65歳で退職して収入がなくなる場合は、生活資金が不足するなどのトラブルが発生する可能性があります。なぜなら、生活費についてこれまで蓄えてきた貯金から取り崩さなければならないからです。
仮に月20万円で生活するならば、5年間の生活費は1200万円です。1200万円というと非常に大きな金額です。老後資金が少ない状態で無理に繰り下げると、70歳で年金を受給する前に家計が厳しくなるおそれもあります。
そうした場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか一方を繰り下げることもできます。年金のすべてを同じタイミングで受給しなければならないわけではなく、一方を65歳から受け取り、一方は70歳から受給することも可能だからです。
まとめ
65歳から月14万円の年金を受け取れる人が70歳まで繰下げ受給した場合、増額対象の年金は42%増え、毎月の受給額は19万8800円になります。
単純計算になりますが、基本的に82歳頃が損益分岐点となります。そのため、82歳より前に亡くなった場合は繰下げ受給をしないほうが受給総額は多くなり、82歳を超えて長生きした場合は、繰下げ受給を選んだほうが受給総額が多くなる計算です。
ただし、繰下げ受給を選択する場合は、受給を遅らせる間の生活費を確保できるかどうかという点も重要です。70歳まで年金受給を待てば必ず得すると考えるのではなく、健康状態や貯蓄、退職後の収入を踏まえ、自分に合った受給開始年齢を選ぶことが大切でしょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者 : 柘植輝
行政書士
