夫の死後、自分の年金に「遺族年金」がそのまま上乗せされると思っていました。ところが友人から「両方満額ではない」と聞いて困惑…。年金額はどう決まるのでしょうか?
そこで今回の記事では、夫の死亡後に妻が受け取れる遺族年金の仕組みと、具体的な金額の計算方法を見ていきます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
遺族年金は夫の年金がそのまま引き継がれるわけではない
まず知っておきたいのは、遺族年金は夫の受け取っていた年金をそのまま妻が引き継げるというものではないということです。
公的年金には大きく分けて老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。夫が会社員だったのであれば、基本的にこの両方に加入しているはずです。
一方、夫が亡くなったときに妻が受け取れる可能性があるのが、老齢厚生年金が基となる「遺族厚生年金」です。
日本年金機構によると、遺族厚生年金は原則として、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額になります。
例えば、夫が月19万円の年金を受け取り、その内訳が老齢基礎年金7万円、老齢厚生年金の報酬比例部分が12万円だったとします。
この場合、遺族厚生年金の基本的な計算額は月額約9万円となります。夫の年金19万円全体の4分の3ではなく、老齢厚生年金の報酬比例部分にあたる12万円を基準に計算する点に注意が必要です。
なお、遺族基礎年金については、原則として18歳到達年度の末日までの子がいることが必要であるため、ここでは割愛して話を進めます。
妻自身の厚生年金がある場合は調整される
では、妻が自分でも年金を受け取っている場合はどうなるのでしょうか。
この点、65歳以上の妻については、自分の老齢基礎年金は原則としてそのまま受け取れます。しかし、老齢厚生年金については、遺族厚生年金と重複する部分が調整されます。
具体的には、妻自身の老齢厚生年金が優先して全額支給され、遺族厚生年金は、その額を超える部分だけが支給されるという仕組みです。
例えば、妻自身の年金が月10万円で、内訳が老齢基礎年金7万円、老齢厚生年金3万円だったとします。そして、遺族厚生年金の額は、先ほどの例と同じく9万円としましょう。
この場合、妻の老齢厚生年金3万円が優先されるため、遺族厚生年金として実際に支給されるのは6万円となります。
結果として、妻が受け取れる年金は、老齢基礎年金7万円+老齢厚生年金3万円+遺族厚生年金6万円で合計16万円となるわけです。
つまり、夫の年金19万円と妻の年金10万円を単純に足した合計額である29万円にはならないわけです。
妻の年金が多ければ、遺族年金がゼロになることもある
注意したいのは、妻自身の受け取る老齢厚生年金がある程度多い場合です。
65歳以上の人の遺族厚生年金は、亡くなった夫の報酬比例部分の4分の3の額と、「その報酬比例部分の額の2分の1+妻自身の老齢厚生年金の2分の1」の額を比較し、高い方を基準に決められます。
そのうえで、妻自身の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金の額に応じて一部または全額が支給停止となります。なお、加給年金などの加算を考慮しない場合、妻の老齢厚生年金が遺族厚生年金の計算額以上であれば、遺族厚生年金は全額支給停止となります。
したがって、共働きで妻自身に老齢厚生年金がある程度支給されるような場合、遺族厚生年金が全額支給停止となることもあります。
反対に、長年専業主婦だった妻で、自分の老齢厚生年金がほとんどなければ、老齢基礎年金に遺族厚生年金を組み合わせて、想定より多くの額を受け取れることもあります。
まとめ
夫が亡くなった場合に妻の受け取れる遺族年金は、妻自身の年金に夫の年金がそのまま上乗せされるわけではありません。
条件にもよりますが、今回試算した夫の年金が月19万円、妻自身の年金が月10万円というケースでは、夫の死亡後に妻が受け取れる年金は月16万円程度になることもあると予想されます。
遺族年金の額は、夫婦それぞれの年金加入歴などによって変わります。老後の生活設計では、夫婦2人で受け取る年金額だけでなく、どちらか一方が亡くなった後に他方が受け取ることになる遺族年金の額も確認しておくことが大切でしょう。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 年金の併給または選択
執筆者 : 柘植輝
行政書士
