更新日: 2020.01.10 厚生年金

遺族厚生年金を受け取るために受給資格期間はどれだけ必要?(2)25年ない場合は期間短縮の特例もある?

遺族厚生年金を受け取るために受給資格期間はどれだけ必要?(2)25年ない場合は期間短縮の特例もある?
老齢厚生年金の受給資格期間そのものは10年に短縮されても、遺族厚生年金の要件としては、亡くなった人の受給資格期間が25年必要であることを前回述べました。では、25年ない場合、遺族は遺族厚生年金を受給できないのでしょうか。
 

井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

25年なくても遺族厚生年金の受給が可能な場合も

老齢厚生年金を受給するためには、(1)老齢基礎年金としての受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、カラ期間)を10年以上満たし、(2)厚生年金加入期間が1ヶ月以上必要ですが、遺族に遺族厚生年金が支給されるためには、亡くなった人の(1)(2)のうち、(1)の受給資格期間は10年ではなく25年以上必要であることは前回述べたとおりです(長期要件による支給)。
 
しかし、特例として、(1)の受給資格期間が25年未満でも25年と見なされて要件を満たせる場合があります。その特例は3つあり、
A.1930年4月1日以前生まれの人の特例
B.厚生年金加入期間の特例
C.第1号厚生年金被保険者期間(会社員の厚生年金加入期間)の中高齢者の特例

となっています。この3つの特例のうち、いずれかを満たしている人が亡くなった場合も、受給資格期間が25年相当と見なされます。
 

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3つの期間短縮の特例

上記3つの期間短縮の特例のうち、まず、1930年4月1日以前生まれの特例は【図表1】のAのとおり、1930年4月1日以前生まれの人が亡くなった場合に、保険料の納付、免除などの受給資格期間について、生年月日に応じた21年~24年の期間があれば、25年なくても受給資格が満たせる特例です。
 
国民年金制度は1961年4月から全面的に始まりましたが、生年月日の早い人は制度が始まって以降の期間で25年以上の受給資格期間を満たすことも難しくなるため、このように期間短縮措置が設けられています。
 
次に、厚生年金加入期間の特例とは、受給資格期間に含まれる期間のうち、厚生年金加入期間(公務員等の共済組合加入期間も含む)が生年月日に応じて合計20年~24年であれば満たせる特例となっています(【図表1】B)。
 
厚生年金加入期間のみで20年~24年満たすことになりますので、自営業、学生等国民年金第1号被保険者としての国民年金保険料の納付や免除の月数、被扶養配偶者である第3号被保険者としての月数は含まれません。
 
そして、第1号厚生年金被保険者期間(会社員の厚生年金加入期間)の中高齢者の特例とは、生年月日に応じ、男性は40歳以降、女性・坑内員・船員は35歳以降の第1号厚生年金被保険者期間、つまり会社員としての厚生年金加入期間が15年~19年あれば要件を満たせる制度となっています(【図表1】C)。
 
当該期間は会社員としての厚生年金加入期間を対象としていますので、公務員や私立学校教職員としての厚生年金(共済組合)加入期間は含まれません。
 

 

年金加入記録の確認を

以上のように25年未満でも受給資格期間を満たせて、遺族厚生年金が支給されることもあります。老齢厚生年金と遺族厚生年金(長期要件)の受給可否を再度まとめると、【図表2】のとおりです。
 

 
遺族厚生年金が支給されるかどうかは、遺された家族(主に夫死亡後の妻)にとっては重大なことです。老齢厚生年金を受給する自身の年金加入記録を見て、自身が亡くなった際に、遺族に遺族厚生年金が支給されるかどうか確認しておきましょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー


 

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