年金制度の改正で私たちの生活はどう変わる?3つの主な変更点とは
配信日: 2020.07.15
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
厚生年金の適用範囲が拡大されます
現在、パートなどで働く短時間労働者の厚生年金への加入条件のうち、企業規模の条件は、被保険者数が常時501人以上の企業となっています。ただし、被保険者が常時501人以上の企業であっても、労使合意に基づき申し出をする企業等も対象となる場合があります。
ちなみに短時間労働者とは、勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、以下の(1)~(4)すべての要件に該当する方をいいます。
(1) 週の所定労働時間が20時間以上であること
(2) 雇用期間が1年以上見込まれること(改正により撤廃)
(3) 賃金の月額が8.8万円以上であること(残業代や一時金などは含まれない)
(4) 学生でないこと
さて、改正法では、企業規模の要件を現在の従業員「501人以上」から、「51人以上」まで段階的に引き下げ、適用範囲を拡大します。具体的には、令和4年10月に「101人以上」に、令和6年10月に「51人以上」まで、2段階で引き下げます。
短時間労働者が厚生年金保険等の適用対象となると、将来、基礎年金に加え報酬比例の厚生年金を受け取ることができるようになり老後の年金が増える、医療保険(健康保険)の給付の充実などのメリットがあります。
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在職老齢年金制度の見直されます
在職老齢年金は、老齢厚生年金を受け取りながら働いて一定の収入がある場合、年金が減額される制度です。減額される収入の基準額は65歳未満と65歳以上で異なります。
老齢厚生年金の月額と月給・賞与(直近1年間の賞与÷12)が、65歳未満は28万円、65歳以上は47万円を超えると、年金が減額されます。なお、老齢基礎年金は減額されず全額支給されます。
改正法(令和4年4月から適用)では、60歳から64歳の人の年金が減らされる収入の基準額を、今の月額28万円から47万円に引き上げます。さらに、受給開始時期の選択肢が拡大されます(令和4年4月から適用)。
現在60歳から70歳までとなっている年金の受給開始年齢の選択肢の幅が、75歳までと拡大されます。勘違いしている人がいますが、年金の受給開始年齢が75歳からとなるわけではありません。年金の受給開始年齢は、60歳から75歳の間で自由に選ぶことができるようになります。
老齢年金は原則65歳から受給できます。65歳より早く受け取り始めた場合(繰り上げ受給)、年金額は1ヶ月あたり0.4%減ります。減額される率は、今の0.5%から縮小されます。一方、65歳より遅らせた場合(繰り下げ受給)は1ヶ月あたり0.7%増えます。これは、今の増加率と同じです。
例えば、75歳から受け取り始めると、65歳からの場合と比べ、年金額は84%増えることになります。
個人型確定拠出年金(イデコ)が利用しやすくなります
確定拠出年金(DC)には、企業型DCと個人型DCがあります。個人型DC(イデコ)が公的年金の不足分を補う私的年金です。拠出した掛金を定期預金や投資信託などで運用し、積み立てた掛金と運用益を60歳以降に受け取ります。加入は任意です。
「掛金が全額所得控除の対象」「運用益は非課税」「年金(分割)で受け取る場合は公的年金等控除の対象」「一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象」といった税金の優遇を受けられるのが特徴です。
改正法では、60歳未満となっている加入期間の上限が65歳未満まで延長される一方(令和4年5月)、60歳から70歳までの間で選べる受給開始年齢の選択肢が75歳まで広がります(令和4年4月)。また、申し込みなどの手続きが、オンラインでできるようになります。
さらに、企業型確定拠出年金に加入している会社員が希望すれば、労使の合意がなくても個人型確定拠出年金(イデコ)に加入できます。なお、企業型DCの加入可能年齢を65歳未満から70歳未満まで、受給開始時期を70歳か75歳に拡大する改正も行われています。
このほかにも細かい制度改正があります。詳しく知りたい方は、厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」をご参照ください。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー