更新日: 2020.07.16 厚生年金

65歳以降も働いた場合の老齢厚生年金額の再計算のルールが変わる?いつから?その内容とは

執筆者 : 井内義典

65歳以降も働いた場合の老齢厚生年金額の再計算のルールが変わる?いつから?その内容とは
65歳で本格的に年金を受けられるようになってから、引き続き働く人も多くなっています。
 
年金を受給しながら働いている人の給与、賞与から控除された厚生年金保険料については、後になって受け取る年金の計算で反映されることにはなりますが、2022年よりその再計算のルールが変わります。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

老齢厚生年金を受け始めてから働いた場合の年金額の再計算

会社員等の場合、65歳以降については老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けることになります。そのうち老齢厚生年金は厚生年金加入記録(加入月数や在職中の給与・賞与額)に基づいて計算されます。
 
年金の支給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げられている中、65歳以降も勤務する人も増えていますが、70歳以降勤務していたとしても、厚生年金加入は最大70歳になるまでです。
 
65歳到達以降、厚生年金保険制度に加入し、給与・賞与を元に計算された厚生年金保険料を負担すると、その加入期間分は受け取る老齢厚生年金に反映されます。後で受給する年金額は再計算されるため、年金を受け始めて以降の加入期間の保険料は掛け捨てにはなりません。
 
現行制度上は、退職したとき、70歳になったときに、それまでの厚生年金加入記録に基づき、老齢厚生年金を再計算します。
 
65歳以降在職し続けていると、厚生年金加入月数が毎月増えていくことになりますが、毎月毎月、その分の年金受給額が増えるわけではなく、退職か70歳というタイミングでまとめて増えることになります。
 

2022年改正によって年金額は毎年再計算

以上が現行の老齢厚生年金再計算のルールですが、2022年に行われる改正によって、65歳以降在職している人については、退職、70歳を待たず、毎年年金が再計算されます。65歳以降も勤務する人が毎年再計算された年金を受け取れるよう、就労意欲を高めるための改正です。
 
具体的には、毎年9月1日を基準日とし、その前月(8月)以前の厚生年金加入記録を元に再計算を行います。そして、基準日の翌月である10月分から老齢厚生年金の受給額が変わります。これは在職定時改定制度という制度です。

現行制度とどう異なる?

もし、2020年7月に65歳になる人で、65歳時点で厚生年金加入月数が400ヶ月、65歳から70歳まで5年間給与(標準報酬月額)20万円で厚生年金へ加入し続けた場合、現行制度のままでは70歳になった際に、460ヶ月(400ヶ月に、65歳到達月から70歳到達前月までの60ヶ月分を加算)で再計算され、年金が増えることになります(【図表1】(2)のパターン)。
 
この場合に、今年度の老齢厚生年金の額で計算すると、報酬比例部分として年額6万2000円強増え、また、厚生年金加入月数の合計が480ヶ月以下ですので、経過的加算額として年額9万7800円が増えます。70歳時に増える老齢厚生年金の年額の合計は約16万円です。
 
しかし、2022年に改正でルールが変わると、2022年から毎年、これまでの厚生年金加入記録に応じて再計算されて年金が増えることになり、その後70歳で最後の再計算が行われます(【図表2】)。
 
改正後、まず、2022年10月に最初の在職定時改定があり、2020年7月~2022年8月分(26ヶ月分)で計算した年額7万円弱の年金(報酬比例部分と経過的加算額の合計)が増えます。65歳時点の400ヶ月に26ヶ月分がここで加算され、合計426ヶ月分で再計算されます。
 
その後、2023年10月に、2022年9月~2023年8月分(12ヶ月分)の年額3万2000円程度の年金が再計算で加わり、2024年10月にさらにまた2023年9月~2024年8月分(12ヶ月分)の年額3万2000円程度が増えます。
 
そして、70歳になったときの再計算時に、2024年9月~2025年6月分(10ヶ月分)で年額2万6000円以上が増えることになります。
 
65歳時点の年金額と比べて70歳時点の年金額は16万円増えている点は現行制度の場合と変わりませんが、改正の結果、70歳までに、老齢厚生年金の計算対象となる月数が400ヶ月から426ヶ月、438ヶ月、450ヶ月、460ヶ月へと徐々に変わり、年金額も変わります。
 


 
このように今後は年金額が変わる回数が増えることになります。改正は2年後になりますが、これから65歳以降に引き続き働く人は、毎年年金額の変化を確認できるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー


 

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