年金改正で繰下げ受給が75歳まで可能に。繰下げ増額率はどう変わった?
配信日: 2020.08.13
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
現行の繰下げ受給は70歳まで可能
65歳から受けられる年金には老齢基礎年金、老齢厚生年金があります。それぞれ65歳から終身で受給することが可能です。
この65歳から受けられる年金について、受給開始時期を遅らせる代わりに年金を増額させる、という繰下げ受給制度があります。1カ月受給開始を遅らせるごとに年金を0.7%増額させることが可能です。
現行制度上、66歳0カ月受給開始・8.4%(0.7%×12月)増額からの繰下げ受給が可能で、66歳0カ月から最大70歳まで1カ月単位で繰り下げることができます(図表1)。
65歳から70歳まで5年間(60月)繰り下げ、70歳の受給開始とすると、42%(0.7%×60月)の増額が可能です。
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改正により75歳まで繰下げが可能に
以上が現行の繰下げ受給制度ですが、2020年5月に成立した年金制度改正法により、2022年4月以降は、繰下げ受給が75歳まで可能となります。
最大10年(120月)繰り下げることにより、65歳から75歳まで年金が0円の代わりに、75歳からの年金を84%(0.7%×120月)増額させて受給することが可能になります。改正後は70歳から75歳までも1カ月単位での繰下げが可能です(図表2)。
実際に75歳まで繰り下げる人は少ないかもしれませんが、選択肢は今より増えることになります。これまでと同じように、老齢基礎年金と老齢厚生年金、片方ずつ繰下げ時期を選ぶことができます。
繰下げ受給制度の注意点は変わらない
このように繰下げの可能時期が75歳まで拡大されますが、従来の繰下げ受給に関する注意点は変わりません。
老齢厚生年金に加算される加給年金、老齢基礎年金に加算される振替加算といった加算部分に対しての繰下げによる増額はありません。また、老齢厚生年金については、65歳以降厚生年金加入者となると、1月につき0.7%の増額率より少ない増額率でしか増額しないことにもなります。
繰下げ受給により増額され、その結果年金収入が増えると、税金や国民健康保険・後期高齢者医療保険の保険料、介護保険料の負担も増えることにもつながりますので、その点も注意が必要です。
さらに、65歳時点ですでに障害年金や遺族年金を受給する権利がある場合、老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げができません(※ただし、障害年金のうち障害厚生年金がなく、障害基礎年金のみの受給権がある場合は老齢厚生年金の繰下げが可能です)。
これから繰下げ受給を考える場合は、改正も踏まえたその基本的な仕組みと注意点を今一度整理しておきましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー