老齢年金生活者支援給付金、低所得者でなくても支給される場合とは?
配信日: 2020.11.20
そのうちの老齢年金生活者支援給付金は、障害年金生活者支援給付金や遺族年金生活者支援給付金と比べ、特に低所得者を対象としていますが、受給している年金額が多くても支給される場合もあります。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
老齢年金生活者支援給付金を受けるための要件
老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で、現に老齢基礎年金を受給している人を対象としている給付金で、それらの基本要件の他、所得要件を満たしていれば、支給されます【図表1】。
その所得要件は、(1)本人の前年の年金収入とその他の所得が所得基準額(2020年度:77万9900円)以下であること、(2)同一世帯全員の市町村民税が非課税であること、いずれも満たすこととなっています。これらを満たせば、最大で月額5030円(2020年度)の給付金を受給できます(計算方法は【図表1】の計算式)。
また、所得要件(1)の所得基準額を超えてもそれが10万円以内(2020年度:87万9900円以下)であれば、保険料納付済期間に応じて支給される補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になります。
いずれにしても、この所得要件については、本人の収入・所得だけでなく、世帯の要件を満たさなくてはいけません。
夫婦のうち、もし65歳以上の妻の収入が老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計70万円のみで、妻自身は市町村民税が非課税となるとしても、同一世帯の夫にある程度の収入があり、市町村民税が課税され続けると、妻に老齢年金生活者支援給付金は支給されないでしょう。
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夫死亡で妻1人の非課税世帯になった場合
しかし、この夫婦のうち、夫が亡くなると、妻は当該給付金の支給対象になる場合があります。
まず、妻自身は市町村民税が非課税でしたので、市町村民税が課税されていた夫が亡くなった後、妻1人の単身世帯となった場合であれば、世帯として非課税になり、【図表1】の所得要件のうちの(2)の世帯要件を満たすことになります。
次に、(1)の妻本人の収入・所得要件ですが、夫が亡くなった当時、その前年の妻の年金収入・所得が70万円の老齢年金のみであれば、妻は(1)も満たすことになります。夫死亡後、(1)(2)の要件をともに満たし、妻は老齢年金生活者支援給付金が受給できます【図表2】。
年金収入が200万円で給付金が支給されることも?
年金生活者支援給付金は、毎年所得要件が判定され、受給可否が決まります。
ここで、会社員だったことのある夫が亡くなり、妻に厚生年金保険制度の遺族厚生年金が支給されるようになると、妻は遺族厚生年金と自身の老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)と併せて受給するようになります(※実際の遺族厚生年金の支給額は、その本来の額から老齢厚生年金相当額が差し引かれた額)。
年間70万円の老齢年金に、仮に年間130万円の遺族厚生年金も受けられると、200万円の年金が受給できます。
そうなると、翌年以降は所得基準額を超えてしまうのではないかと思うことでしょう。しかし、所得基準額以下であるかどうかの判定にあたって、非課税の遺族厚生年金の額は含まれません。
引き続き年金収入としては老齢年金のみで判定されることになり、他に所得がなく、単身世帯となっている妻は給付金の対象になり続けます。なお、この場合、受けられる給付金はあくまで老齢年金生活者支援給付金です。
国民年金制度の、遺族基礎年金を受給している人を対象とした遺族年金生活者支援給付金ではありません。
一方、夫死亡以降の妻が、例えば働いている子と同一世帯で、その子に市町村民税が課税される場合は、世帯要件を満たせないため、その間給付金は支給されません。
このように遺族厚生年金が受けられるようになっても、自身の老齢年金としての額や世帯構成によって、給付金が受けられたり、受けられなかったりします。給付金が受けられるようになった場合、その受給には請求が必要ですが、請求した月の翌月分から支給されますので早めの手続きも必要となるでしょう。給付金の手続きの詳細については年金事務所にお問い合わせください。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー