更新日: 2021.01.02 その他年金
熟年離婚する場合、年金分割はどうなる?
年金には「基礎年金」と「厚生年金」があることはご存じだと思います。年金分割制度とは厚生年金を分割するための制度であり、基礎年金には影響しません。これはつまり、離婚して影響があるのは厚生年金部分であることを意味します。
厚生年金の分割方法には「合意分割制度」と「3号分割制度」があります。今回は「合意分割制度」「3号分割制度」、それから「熟年離婚した場合の年金分割」について解説します。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
合意分割制度
合意分割制度とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間の合意(または裁判)により分割することができるという制度です。
この制度を利用するには以下の条件に該当する必要があります。
・婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
・当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと
・請求期限(離婚からおよそ2年)を経過していないこと
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3号分割制度
3号分割制度とは、国民年金の第3号被保険者であった方(主婦など)からの請求によって、その期間については相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割(2分の1ずつ)することができるという制度です。なお、この期間は平成20年4月1日以後に限られます。
また、この制度は当事者双方の合意を必要としません。
この制度を利用するには以下の条件に該当する必要があります。
・婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること(平成20年4月1日以後、国民年金の第3号被保険者であった期間に限る)
・請求期限(離婚からおよそ2年)を経過していないこと
婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、先述の合意分割の請求が行われた場合、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
つまり、婚姻期間のうち平成20年4月1日以後、国民年金の第3号被保険者であった期間が含まれる場合には、その期間については「3号分割による分割」によって、それ以外の期間については「合意分割による分割」によって標準報酬の分割が行われるということです。
熟年離婚した場合の年金分割
以上の年金分割制度の解説は、原則として年金を受け取る前の年金の取り扱いについてでした。では、既に年金を受け取っている場合、その取り扱いはどうなるのでしょう。
正解は「既に老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割の請求をした月の翌月分から年金額が変更される」です。つまり、年金を受け取る前と後で、その考え方は変わらないということです。
年金を受け取ってしまったからその額を変更することはできないということではなく、改めて年金額を受け取って計算しなおした額を受け取ることができるということです。
まとめ
今回は離婚(熟年離婚)と年金分割について見てきました。
年金には基礎年金と厚生年金があり、離婚により年金分割をするのは厚生年金の方です。基礎年金の方は離婚による影響はありません。
年金分割制度には合意分割制度と3号分割制度があります。分割の按分割合については、合意分割制度では当事者間の合意(または裁判)で決めます。3号分割制度では2分の1ずつとなり、当事者間の合意は必要ありません。
離婚のタイミングが年金を受け取る前か後かによる取り扱いの違いは、基本的にはありません。年金を既に受け取っている場合であっても、離婚により年金額が再計算されます。離婚を考えていらっしゃる方の参考になれば幸いです。
出典
日本年金機構 「離婚時の年金分割」
日本年金機構 「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」
日本年金機構 「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー