今回は、こういったシングルマザーの年金事情について解説します。
監修:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
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執筆者:松木優子(まつき ゆうこ)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。フリーライター。
来店型保険ショップ元コンサルタント。首都圏郊外の地域密着店や、都市部の富裕層が多い店舗で、年間約150組のお客様のコンサルタントを担当。
国民年金保険料の納付が困難な場合
「保険料免除制度」や「保険料納付猶予制度」が適用できます。
保険料免除制度
本人または世帯主の前年所得が一定額以下の場合、保険料の納付が免除されます。免除の割合は所得に応じて、全額・4分の3・半額・4分の1、のいずれかになり、老齢基礎年金額もそれに基づいて計算されます。
保険料納付猶予制度
20歳から50歳未満で、本人の前年所得が一定額以下の場合、保険料の納付が猶予されます。免除と違い、猶予期間分は老齢基礎年金額の計算に含まれません。あくまでも「猶予」なので、将来的に納付できるとみなされるためです。
※日本年金機構 「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 1.保険料免除・納付猶予制度とは」より筆者が作成
保険料が未納のままだと、将来的に老齢基礎年金が支給されなかったり、万が一のときに障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されなかったりする可能性があります。早めに免除や納付猶予の申請をしましょう。
免除や納付猶予を受けるには
前年の所得が以下の金額内であることが条件です。
1.全額免除
(扶養親族等の人数+1)×35万円+22万円
※ただし、シングルマザーの場合は前年の所得が125万円以下であれば全額免除。未婚のひとり親やシングルファザーも含む。
※生活保護法により扶助を受けている場合も全額免除。
2.4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
3.半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4.4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
5.納付猶予制度
(扶養親族等の人数+1)×35万円+22万円
「扶養親族等控除額」や「社会保険料控除額等」の金額は、前年の源泉徴収票や確定申告の控えで確認してみましょう。
免除や納付猶予の手続き方法
申請書を年金手帳または基礎年金番号通知書とともに、住民登録をしている役所・役場の国民年金担当窓口へ提出します。その他、個々のケースに応じた書類が必要になるので、手続きの前に窓口へお問い合わせください。
免除や納付猶予を受けた分は追納できる
免除や納付猶予を受けた分の年金保険料は、追納できます。ただし、免除や納付猶予を受けた翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、加算額が発生します。また、追納できるのは、追納が承認された月からさかのぼって10年分までです。
夫と死別した場合は遺族年金が支給される
支給を受けるには、夫が次の年金加入要件を満たしている必要があります。
・国民年金に25年以上加入していた。保険料納付済期間が、それまでの加入期間の3分の2以上ある。
・65歳未満で亡くなった場合は、亡くなった月の前々月までの1年間に保険料滞納がない(2026年3月31日までの措置)。
遺族年金額はいくら? 夫が国民年金に加入していた場合
18歳未満の子どもが1人いる場合、遺族基礎年金78万1700円+子の加算22万4900円=年間合計100万6600円が支給されます。
子どもが2人なら子の加算がさらに22万4900円、子ども3人目以降は1人当たり7万5000円が加わります。子どもが18歳に達した年の年度末で、子の加算はなくなります(1級・2級の障害状態にある子どもは20歳未満まで)。
18歳未満の子どもがいない場合は、夫が亡くなったときに妻が65歳未満だと支給はありません。
遺族年金額はいくら? 夫が厚生年金に加入していた場合
18歳未満の子どもがいる場合は、国民年金保険から「遺族基礎年金」が支給されるのに加え、厚生年金保険から「遺族厚生年金」が支給されます。遺族厚生年金の金額は、夫が亡くなるまでの平均年収に応じます。
子どもが全員18歳になる年度末に到達、または1級・2級の障害状態にある子どもが20歳になると遺族基礎年金の支給は終了しますが、このとき妻が40歳以上なら「中高齢寡婦加算」が支給されます。
※公益財団法人 生命保険文化センター「遺族保障ガイド」より筆者が作成
18歳未満の子どもがいない場合、遺族基礎年金はありませんが遺族厚生年金は支給されます。金額や支給期間は妻の年齢によって下の図のように変わります。
※公益財団法人 生命保険文化センター「遺族保障ガイド」より筆者が作成
なお、再婚すると遺族基礎年金、遺族厚生年金とも支給停止となりますが、18歳未満の子どもに対しては遺族厚生年金が支給されます。
1人で家事に子育て、さらに仕事をこなすのは大変なことだと思います。無理をしてさらに困難な状況になる前に、このような年金事情を確認し、申請できるものは申請して制度を活用いただければと思います。
出典
日本年金機構 「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
さいたま市 「国民年金保険料の免除について」
公益財団法人 生命保険文化センター 「公的な遺族年金の仕組みについて知りたい」
公益財団法人 生命保険文化センター 「遺族保障ガイド」
執筆者:松木優子
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。フリーライター。