「5万円の通勤定期」購入で、会社から“5万円支給”のはずが「税金1万円」取られる!?「実質マイナス」「納得いかない」の声も…なぜ“収入扱い”で「社会保険料」を取られる? 基本給30万円のケースで確認
「遠くなったけれど、会社から通勤手当が全額出るから」と安心していると、給与明細を見て違和感を覚えるかもしれません。通勤手当の増額にともない、「社会保険料」の天引き額も増えるからです。
先日、SNSでもこの「通勤手当と社会保険料」に関するルールが大きな話題となり、多くのビジネスパーソンから共感と不満の声が殺到しました。今回は、なぜ会社から実費として支給される「通勤手当」によって手取りが減ってしまうのか、その仕組みをみていきましょう。
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「通勤手当をもらって実質マイナス」の嘆き
ある日、以下のような会社員の嘆きがSNSのX(旧Twitter)に投稿されました。
「5万円の定期を買って通勤手当が5万円出たのに、税金(社会保険料)で約1万円引かれて、実質マイナスになっている」
この投稿は大きな反響を呼び、ほかのユーザーから以下のような反応が次々と寄せられました。
「通勤手当が収入換算されるせいで、社会保険料の等級が上がって手取りが減った。本当に納得いかない」
「実費を補てんしてもらっているだけなのに、なぜ収入扱いになるの?」
「所得税は非課税って言っているのに、社会保険料はがっつり取るのはおかしい」
多くの人が「税金を取られた」と表現していますが、厳密に言えば、増えた負担は所得税や住民税ではなく「社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)」です。なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
所得税は「非課税」でも、社会保険料は「報酬扱い」
給与明細の控除欄を見ると、大きく分けて「税金(所得税・住民税)」と「社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)」の2種類が引かれています。基本給などからは両方の天引きが行われますが、通勤手当に対する扱いは以下のように特殊なものとなっています。
1. 所得税・住民税における通勤手当の扱い:原則「非課税」
国税庁のルールでは、公共交通機関を利用する場合、通勤手当は「月額15万円まで非課税」とされています。つまり、基本給などに加えて月額5万円程度の通勤手当をもらっても、所得税や住民税は増額されません。いわゆる「累進課税」のボーダーラインにも、「通勤手当の支給額」は無関係です。
2. 社会保険料における通勤手当の扱い:全額「報酬(収入)」に含まれる
一方、健康保険法や厚生年金保険法などのルール(日本年金機構の規定)では、通勤手当は非課税ではなく、基本給や残業代と同じように「労働の対償として受ける報酬」にすべて含まれます。
社会保険料は、毎年4月~6月の給与(通勤手当を含む)の平均額をもとに「標準報酬月額(等級)」が決まり、その年の9月~翌年8月までの保険料が確定します。そのため、4月から6月に高額な通勤手当が支給されると「標準報酬月額」の等級が上がり、毎月引かれる社会保険料も上がってしまうのです。
では、実際に5万円の通勤手当が支給されることで、社会保険料はいくら増えるのでしょうか。標準報酬月額30万円の40歳会社員を想定し、シミュレーションしてみましょう(※東京都の協会けんぽ・令和8年度保険料率、40歳以上で介護保険料ありと仮定)。
標準報酬月額:30万円(第22級)
健康保険料(介護保険料含む本人負担分):1万7205円
子ども・子育て支援金:345円
厚生年金保険料(本人負担分):2万7450円
社会保険料の合計:月額 4万5000円
標準報酬月額:36万円(第25級)
健康保険料(介護保険料含む本人負担分):2万646円
子ども・子育て支援金:414円
厚生年金保険料(本人負担分):3万2940円
社会保険料の合計:月額 5万4000円
5万4000円-4万5000円=9000円
さらに、「雇用保険料」が報酬額の0.5%分で250円増えるため、合計で毎月9250円の負担増となります。よって、SNSでの「約1万円引かれた」という嘆きは決して大げさなものではなく、かなり正確な数字であることが分かります。
会社員にとって、通勤のための定期代は毎月必ず発生する、いわば「経費」とも表現できる支出ですので、そこから社会保険料を徴収されるという仕組みは、納得しがたいものかもしれません。しかし、現行の法律がそのように定められている以上、会社員がこの負担を個人の努力で回避することはできません。
ただ、1つだけ前向きな見方をするのであれば、厚生年金保険料を多く払うということは、「将来もらえる老齢厚生年金の額が少し増える」ということでもあります。また、病気やけがで休職した際にもらえる「傷病手当金」の額も、標準報酬月額が高いほど多くなります。
「今は損をしているようで腹立たしいけれど、将来への貯金や保険の掛け金が少し増えた」と割り切って考えることが、精神衛生上の一番の対策と言えるかもしれません。
まとめ
毎月の給与で支給される「通勤手当」は、所得税などの課税対象とはなりませんが、社会保険料は徴収されます。そのため、月額報酬30万円程度の会社員が、毎月5万円の通勤手当追加で受け取る場合、9250円程度の社会保険料が毎月上乗せされて徴収されることになります。
通勤のための定期代は、会社員にとって毎月必ず発生する「仕事のための経費」のような支出です。そこから社会保険料を徴収される現状について嘆きの声が上がるのは、無理のないことかもしれません。
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
日本年金機構 標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
全国健康保険協会 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント、琉球古典音楽野村流 歌三線 師範
