70歳の父は「貯金3000万円」ですが年金が“月12万円”なので「住民税非課税世帯」…でも“株の利益100万円”を確定申告したら「課税世帯」に? そもそも“申告ナシ”で問題なかったのでしょうか?
貯金が数千万円あっても住民税非課税世帯になるのに、株の利益を申告すると課税されるのはなぜなのでしょうか。本記事では、住民税非課税世帯の仕組みや、株式投資の利益を確定申告することで起きる影響について解説します。
FP2級、防災士
住民税非課税世帯とは
住民税非課税世帯とは、世帯全員の住民税が非課税となっている世帯のことです。住民税は、前年の所得などをもとに計算され、保有資産額は反映されません。そのため、貯金が3000万円あっても、それだけで住民税が課税されるわけではありません。
日本年金機構によると、65歳以上で年金収入のみの単身者の場合、住民税が非課税となる年金収入の限度額は、住んでいる地域によって異なりますが、年間148万〜155万円です。
今回のケースの父親は年金収入が月12万円、年間144万円なので、ほかに所得がなければ非課税の基準内に収まります。ただし、住民税非課税世帯になるかどうかは、同じ世帯の家族の所得なども関係するため、注意しましょう。
株式投資の利益を確定申告するとどうなる?
株式投資で得た利益には、原則として20.315%の税金がかかります。ただし、証券会社で「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合、利益から税金が自動的に差し引かれるため、原則として確定申告は必要ありません。
一方、源泉徴収のない口座などでは、原則として確定申告が必要になります。
また特定口座(源泉徴収あり)でも、損失と利益を相殺する「損益通算」や、過去の損失を差し引く「繰越控除」などを利用する場合は、確定申告を選ぶことがあります。確定申告によって税負担が軽くなる可能性がある一方、申告した利益が住民税の所得判定に含まれる点には注意が必要です。
なお、2024年度の住民税からは、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました。つまり、所得税で申告した株式の利益を、住民税だけ申告不要にすることは原則としてできません。
株の利益100万円を申告した場合の影響
今回は父親が、特定口座(源泉徴収あり)で得た株式の譲渡益100万円を確定申告した場合を考えてみましょう。
年金収入144万円から、65歳以上の公的年金等控除110万円を差し引くと、年金に係る所得は34万円で、ここに株式の利益100万円を加えると、所得の合計は134万円です。年金所得だけなら住民税非課税の範囲内ですが、株式の利益を申告すると、住民税が課税される可能性があります。
なお、100万円の株式投資の利益に対する源泉徴収税額は20万3150円です。確定申告によって税金の還付を受けられる場合もありますが、住民税の課税状況が変わることで、別の負担が発生することもあるので注意しましょう。
住民税以外にも影響する可能性がある
株式の利益を確定申告すると、住民税のほかに、国民健康保険料や介護保険料などにも影響する場合があります。例えば、国民健康保険料は前年の所得などをもとに計算されるため、申告した利益によって翌年度の保険料が増える可能性があるのです。
また、住民税非課税世帯を対象とした給付金や、医療費の自己負担限度額などの判定にも影響することがあります。
ただし、70歳の場合、加入している医療保険や世帯構成によって負担は異なります。税金の還付額だけでなく、保険料や各種制度への影響も確認しておきましょう。
収入がある場合は確定申告が必要か確認して
株式投資で利益を得たからと言って、必ず確定申告が必要になるわけではありません。特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要を選べる場合がありますが、申告することで税金や保険料などに影響が出る可能性があります。
ただし、確定申告が必要な場合は、申告しないという選択はできません。確定申告をする場合は、翌年の住民税や保険料なども含めて確認し、自分に合った申告方法を選びましょう。
出典
日本年金機構 住民税の非課税限度額基準について
国税庁 株式等の譲渡所得等・配当所得等
国税庁 課税方法(総合課税と申告分離課税)
執筆者 : 渡辺あい
FP2級、防災士
