年収1000万と世帯年収1000万の税負担の違いは一体どれくらい?
配信日: 2020.12.15
実は同じ1000万円の収入でも夫婦共働きで稼ぐか否かによって大きな違いが出るのです。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
同じ1000万円でもどうして違いが出るの? 違いはどれくらい?
夫または妻が単独で年収1000万円稼ぐ世帯(以下、年収1000万円と定義します)と世帯年収1000万円の世帯、同じ1000万円の世帯収入でも、その他の条件が同じであれば年収1000万円の家庭の方が税負担は重くなります。
その理由は日本の所得税の制度にあります。基本的に日本の税制度においては高い収入の人ほど高い税金を負担するような仕組みとなっているからです。なお、実際の税金額は扶養親族の数や各種控除の有無などにもよって大きく変化する点にご注意ください。
主な原因は所得税にある
所得税とは、個人の1年間の所得に対してかかる税金です。収入から各種の控除を差し引いて算出したもの(課税所得)に課税所得に応じた税率をかけて計算します。
その際に使用する税率は所得が多くなるにつれて段階的に高くなっていくよう整備されており、その税率は最小で5%、最大で45%にも達します。この仕組みを超過累進課税と呼びます。
上記の表で簡単に考えてみましょう。
年収1000万円であれば課税される所得金額は基本的に695万円から899万9000円の範囲に収まるため、税率23%に該当します。
対して、世帯年収1000万円の家庭では、330万円から694万9000円までの範囲に収まるため夫と妻それぞれに20%ずつの税率となります(所得税は夫婦合算して考えず分けて計算され、夫と妻それぞれに発生するため)。
同じ1000万円でも1人で稼げば23%となるところ、2人で500万円ずつ稼げば20%に軽減されます。この差が具体的にどれくらいの金額になるのかは諸条件によっても異なりますが、年間でおおむね50万円前後の差になります。
雇用保険や社会保険料、住民税など
雇用保険や社会保険料、住民税といった税の税率自体は一律です。そのため、年収1000万円の家庭と世帯年収1000万円の家庭とでは所得税ほど大きな差が出ません。
ただ、世帯年収1000万円の家庭が単に夫婦500万円ずつで1000万円ではなく、片方が900万円程稼ぎ、もう片方が扶養に入り100万円程度稼ぐというような場合は扶養となって社会保険料や住民税が発生しない関係上、単身で1000万円稼ぐよりも1人分、税の負担が少なくなります。
1人で1000万円稼ぐよりも共働きで1000万円稼ぐ方が税の負担が軽い
所得税は超過累進課税という所得が多いほど税率が高くなる計算法を採用しているため、同じ1000万円でも、夫婦合わせて1000万円稼いだ方が、単独で1000万円稼ぐよりも税率が低く計算されるため有利です。
また、税負担以外の観点ではリスクの分散という意味でも夫婦共働きで1000万円という働き方は有利とも考えられます。夫婦一方が単独で1000万円稼いでいたとしても、その方が病気やけがで働けなくなってしまっては収入が0になります。
しかし、夫婦500万円ずつ稼いでいれば一方が働けなくなってしまっても一方の収入は確保されます。
今一度、税制度とリスクの分散という観点も加味した上で、夫婦の働き方と世帯年収について考えてみるようにしてください。
出典
国税庁 所得税のしくみ
国税庁 No.2260 所得税の税率
全国健康保険協会 令和2年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
厚生労働省 令和2年度の雇用保険料率について
執筆者:柘植輝
行政書士