認知症になる前に、考えたい相続のこと 「財産だけ残せばいい」は間違い?

配信日: 2017.12.12 更新日: 2019.01.10

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認知症になる前に、考えたい相続のこと 「財産だけ残せばいい」は間違い?
悲しいけれど、いずれ老いは訪れます。当所にも「自分が動けなくなる前に、何か対策はありますか?」とお問い合わせをいただくことがあります。
そんな時にお勧めしているのが、「遺言」と「任意後見」と「家族信託」です。遺言は、前回お伝えしました。今回は、後見制度とはいったいどんなものなのか、見ていきたいと思います。
竹内美土璃

Text:竹内美土璃(たけうち みどり)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、企業年金基金管理士、さくら総合法律事務所・FP部門、確定拠出年金相談ねっと認定FP。
FPでありながら、ある時は夫婦問題カウンセラー、ある時は相続アドバイザーとなり、「お金と気持ちを一気に解決」することを得意とする。
法律事務所で13年間勤務して得た知識と、5年間のファイナンシャルプランナーとしての実績で、「お客様を幸せで豊かな未来へ導く案内人」として定評が高い。
1972年生まれ。愛知県豊田市出身。現在は、名古屋市在住。

成年後見制度(法定後見制度と任意後見制度)とは?

成年後見制度とは、「認知症や知的障害などが原因で、本人で判断ができなくなった場合、その本人を保護し支援するための制度」のことです。成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
 
法定後見制度は、現在、本人の意思判断能力が低下しているときに使います。本人に代わってお金や財産の管理をしたり、契約をしたり、本人の行為に同意を与えたり、本人の行為を取り消したりする人(後見人・保佐人・補助人)を、本人や親族、検察官等の申立に基づき、家庭裁判所が任命します。
そしてそれ以後、本人に代わって、後見人等が財産管理等をしていきます。
 
一方、任意後見制度は、本人が、判断能力が衰えてしまう前に使います。将来、判断能力が衰えたときに、財産等の管理をしてもらう代理人(任意後見人)とあらかじめ公正証書で任意後見契約を結びます。
そして、本人の意思判断能力が衰えたタイミングで、家庭裁判所に任意後見監督人の選任手続きをして、後見を開始することができる制度です。
任意後見監督人は、後見人が悪事を働かないようにチェックをする人で、任意後見には必ず登場してきます。
 

法定後見制度と任意後見制度の違いは?

法定後見人等(後見人、保佐人、補助人)の任務期間は、家庭裁判所から後見開始の審判がおりてから、原則として本人の死亡までとなります。
法定後見では、家庭裁判所が誰を後見人等にするか選ぶため、後見人が必ずしも本人の希望に合う人になるとは限りません。
 
例えば、長男と折り合いが悪くても、長男に面倒を見てもらわなければならないかもしれません。
一方、任意後見人の任務は、家庭裁判所が任意後見監督人選任の審判をしてから、原則として本人の死亡までとなります。
 
任意後見人は、本人が判断力のあるうちに、自分の意志で、自分の希望する人を、自分の後見人になる人として指定できるので、よりご自身の希望に添って後見事務を行うことが期待できます。
 
また、任意後見人契約は、必ず公正証書を作成しなければなりません。
この機会に「公正証書遺言」や、本人の判断力があるうちに代理人に財産管理を委ねる「財産管理契約」、本人の死後の葬儀や遺品整理を代理人に委ねる「死後事務委任契約」を作成すれば、一度に色々な心配事を整理することが可能です。
 

誰でもやった方がいいの?

例えば、認知症により判断能力が低下してしまうと、誰かに騙されて財産を取られてしまうということもあり得ます。
でも、後見をしていれば、本人は守られます。本人の財産は後見人が管理していますし、法定後見であれば、本人がした契約を取り消すことができるからです。
 
ただ、注意しなければならない点もあります。一度後見を始めてしまったら、なかなか大きな財産の処分ができなくなってしまいます。
後見人は、本人の財産を守るために財産を管理します。法定後見人は、家庭裁判所に1年に1回、1年分の収支報告を行い、そのチェックを受けます。
任意後見人は、後見監督人に定期的に報告をしてチェックを受けます。本人のために必要とはいえない財産の処分は認められません。
 
例えば、本人が死んだときの相続税の納税資金を確保するために、不動産を売却して現金化することは認められません。相続対策を必要とするのは、本人ではなく相続人だからです。
同様に、相続対策のために更地にアパートを建てることも認められません。財産を、リスクの高い投資商品としておくことも認められません。
 
また、自宅の売却はハードルが高く、本人の医療費や施設入所のため、他に財産がないといった場合でなければ認められません。
このような心配もありますので、財産処分を考えているのであれば、判断力が衰える前に完了する必要があります。
 

愛する人への最後のラブレターを書きませんか?

自分の老いのことは、あまり考えたくはありません。
ただ、愛する家族が自分の死後も幸せに暮らしていけるためには、「遺言」「任意後見」「家族信託」等できちんと備えておくことが必要です。これが最後のラブレターになります。
 
愛する家族のためを考えると、財産だけ残せばいいというものではありませんね。
 
Text/竹内美土璃(たけうち・みどり)
http://www.sakura-sogo.jp/

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