更新日: 2019.07.04 その他資産運用

「銀行に融資を渋られ倒産へ」そんなドラマはもう古い?新しい資金集めの方法とは

監修 : 豊田賢治 / 執筆者 : 鈴木 陽三(Yozo Suzuki)

「銀行に融資を渋られ倒産へ」そんなドラマはもう古い?新しい資金集めの方法とは
先日最終回を迎えた、ドラマ「陸王」。このドラマは倒産のピンチを迎えた老舗足袋メーカーの4代目社長が、再起をかけて奮闘するストーリーです。ドラマの中では銀行に融資を渋られた中小企業が窮地に立たされるシーンが描かれました。陸王や半沢直樹に限らず、このようなシーンは見覚えがある人も多いのではないでしょうか。

しかし、実は今、銀行を介さない資金調達手段が続々と増えてきています。

日米のフィンテックスタートアップ企業を対象とした投資ファンド「SV-FINTECH Fund」を運営する、「SV FRONTIER(カリフォルニア州サンフランシスコ)」の鈴木 陽三代表に、ICOをはじめとした新しい資金調達の方法について聞いてみました。

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豊田賢治

監修:豊田賢治(とよた けんじ)

弁護士

開成高校卒、東京大学法学部卒。弁護士登録後、大手渉外法律事務所、外資系法律事務所での勤務を経て独立。現在は弁護士16名を擁する東京桜橋法律事務所の所長として、多数の企業や個人の法務顧問として活動。どんな相談に対しても「わからない」とは言わないことをスタンスに、日々クライアントのために奮闘中。
【東京桜橋法律事務所】

鈴木 陽三(Yozo Suzuki)

執筆者:鈴木 陽三(Yozo Suzuki)(すずき ようぞう)

SV-FINTECH & SV FRONTIER

進化1)商品や事業に共感した人から資金を募る「クラウドファンディング」

まず、新しい資金調達法のひとつとして登場したのが「クラウドファンディング」です。
 
ドラマ「陸王」のタイトルは、物語の主役である足袋メーカー「こはぜ屋」が開発した新しいランニングシューズの名前です。この「陸王」のような新商品について、文章・写真・動画を駆使して熱感を伝え、共感した人から応援資金を調達する仕組みがクラウドファンディングの仕組みです。商品化したら少しのメリットをつけて応援者達に真っ先に届けます。銀行が介在しないばかりか、融資でもありません。
 
インターネットの出現によって、多くの人に情報を発信できるようになりました。WEB上での資金集め、決済システムが進化したおかげで、開発者にとっては素晴らしい環境が誕生したといえます。これらのシステムは、もはや陸王を2時間ドラマに短縮しかねませんね。
 

進化2)銀行が介在しない「貸し付け型クラウドファンディング」

ゴーグル的なヘッドマウントをつけて360度動画を体感できるVR(仮想現実)も、実はクラウドファンディングから出てきました。2014年にVRを開発したオキュラス社をFacebookが買収した時、応援者の不満で炎上しました。買収額はなんと約2,200億円。応援者には初期型商品だけというのは仕方がない話ですが、見返りが欲しい応援者も数多く存在するという事です。
 
多数の貸し手と学費や事業資金などの借り手を繫げるプラットフォームが、想像を超えるスピードと規模で世界的に立ち上がってきています。日本で個対個は難しいため、個対不動産デベロッパーという形をとり、日本だけで累計貸付残高1,000億円を突破する会社も出始めました。
 

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進化3)取引データを判断基準に融資する「トランザクション・レンディング」

従来は、銀行に過去3期分の損益計算書・貸借対照表・税務申告書を持ってお金を借りに行くのが通常でした。昨今は、会計ソフトサービスのクラウド化や、人工知能の発達から、取引履歴やお金の流れを見て、融資判断できるようになってきています。
 
この領域のパイオニアは中国EC大手のアリババでした。ECプラットフォーム上で商売するEC事業者の状況を全て把握し、その上で融資します。商品を仕入れやすくしてあげて、返済が滞ったら出金を押さえる。このような極めて低リスクな短期高利融資を行う事で、ECから金融事業へと爆発的に成長していきました。
 
これに続いた「Amazonレンディング」は、2014年のサービス開始からの融資総額で約数千億円という規模感といわれています。日本の某大手通販サイトでも既に始まっており、EC事業者は銀行に頼る事なく迅速に、仕入れ資金を調達できるようになってきています。
 

進化4)仮想通貨を発行して資金を調達する「ICO」

「新規株式上場」を表すIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)に対して、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)という調達手段が新たに生まれました。資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自の仮想通貨を発行・販売し、資金を調達する手段およびプロセスを指しています。
 
投資家側はその事業を発展させれば、発行した仮想通貨の資産価値が上がります。企業側は従来よりも低コストで、かつ世界中から資金を調達する事が可能です。IPOではなくICOを選ぶ企業も出始めています。
 

■投資家の注意点・リスク

・価値喪失の可能性
ICOで発行されるトークンの価格が急落したり、取引所が破綻したりして価値が喪失するリスクがあります。
 
・詐欺の可能性
ICOではホワイトペーパーと呼ばれる、実施するプロジェクト内容・メリット・販売方法・リスクなどをまとめた文書が作成されます。しかし、そこに記されたプロジェクトが実施されなかったり、約束されていた商品やサービスが提供されなかったり、ICOに便乗した詐欺のリスクもあります。
 

■事業者の注意点

・ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法などの規制対象になります。自らのサービスが資金決済法や金融商品取引法などの規制対象となる場合には、登録などの必要があります。登録なしにこうした事業を行った場合は刑事罰の対象となることがあります。
 
金融庁「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」http://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/06.pdf
 

まとめ)インターネットの普及で資金調達の手段が多様化

インターネットの普及と技術の進化によって資金調達の手段が多様化し、銀行が行っていた資金提供の役割を新興企業が担い始めました。まだ未整備な部分は多々ありますが、志高い開発者にとっては追い風が吹いてきています。
 
ドラマの中では銀行から融資が受けられずに困る中小企業が描かれていますが、銀行以外でもお金を借りられる仕組みが普及すれば、そのようなシーンは成り立たなくなってしまいますね。新しい資金調達の選択肢を積極的かつ慎重にチェックしてみてください。
 
最後に、新しい資金調達の法律的な注意点について、東京桜橋法律事務所の豊田賢治弁護士にお聞きしました。

 
クラウドファンディングやICOなどの新しい資金調達法は、事業者としてはビジネスチャンスの面もあります。ただし、制度として整備されていないものだけに、安易に利用すると「だました」「だまされた」という話になりやすいところがあります。利用するなら、誠実さと管理能力が重要です。
 
現在、法律で規制されている部分とそうでない部分が混在しています。多くの場合、既存の金融法令の適用が想定されるため、それらに反すると一定の制裁を受ける可能性があります。
 
例えばクラウドファンディングだと、出資法、金融商品取引法等の適用が想定されます。
資金調達の新しい仕組みは、旧来の規制や法律の中から関連しそうなものを確認して、その上ではじめることが重要です。
 
TEXT:ファイナンシャルフィールド編集部
監修:豊田 賢治 (とよた けんじ)弁護士
東京桜橋法律事務所 所長 http://tksb.jp/
弁護士登録後、大手渉外法律事務所、外資系法律事務所での勤務を経て独立。
現在は弁護士16名を擁する東京桜橋法律事務所の所長として、多数の企業や個人の法務顧問として活動。
 

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