暗号資産(仮想通貨)の今後は?価格が上昇してきた要因とは
配信日: 2021.03.15
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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仮想通貨ではなく暗号資産?
仮想通貨という呼び方が日本では浸透していますが、2019年の資金決済法と金融商品取引法の改正の中で法令上「暗号資産」と呼ばれるようになりました。この背景には、過去に海外では暗号通貨(Crypto-currency)と呼ばれていたときがあり、その後G20などの国際会議などで暗号資産(Crypto-asset)を国際標準の表現として使い始めていたためです。
ここで改めて「資金決済に関する法律」での暗号資産の定義について確認します。
1.不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
2.電子的に記録され、移転できる
3.法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
仮想通貨という呼び方が禁止されたわけではありませんので、通称的に仮想通貨と呼んでも問題はありません。
しかし通貨と呼ぶ割には、まだまだビットコインを直接支払いの手段に使える場所は限られているようです。Bitcoin日本語情報サイトの調べでは2020年11月時点、日本国内でビットコインを決済に使えるお店は通信販売78件、実店舗262件となっています。
実店舗では一部の大手家電量販店などでビットコインによる決済を導入しているようですが、あまり国内でビットコインを支払いの手段とした導入は進んでいないようです。
それでも世界を見ると、ビットコインを支払手段として導入している店舗などは着実に増加しているようです。ビットコインが使える場所の情報を提供しているCoinMapによれば、2017年1月時点で約8000カ所だったものが、2021年2月時点で約2万1700カ所まで増えているようです。
普段の買い物でビットコインがもっと使えるようになれば、商品やサービスの円滑な交換や流通のための決済手段としてそれを「通貨」と呼ぶことに違和感が少なくなってくるのかもしれません。
ただ、今はまだその価格変動の大きさから「価値尺度」の観点からは通貨(貨幣)としての機能を満たしているとは見られてなく、「価値保存手段」としての「資産」としての側面の方が強いようです。
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暗号資産(ビットコイン)の価格が上昇してきた要因
2020年以降、コロナ禍により世界は経済的にも大きな影響を受けています。各国は積極的で大規模な金融緩和を継続しており、その結果、ドルや円などの法定通貨が大量に世の中に供給されるようになりました。このことは法定通貨の価値の下落につながり、将来のインフレ(物価上昇)懸念を生んでいます。
そのような中で、暗号資産、特にビットコインがインフレヘッジとしての価値保存手段として機関投資家や企業などに注目され始めてきた結果、価格上昇につながっているようです。このような動きは、2017年の仮想通貨バブルといわれた当時の個人主体による価格上昇といわれたものとの違いとなっています。
今の価格上昇の背景になっているともいえる、ここ最近のいくつかの話題の一例を挙げてみます。最近は米国での話題が暗号資産へ与える影響が多くなっているようです。
・米大手決済サービス企業が提供するアプリ上で暗号資産での決済サービス導入予定
・S&P500に採用されている米電気自動車メーカーがビットコインを購入
・ナスダックに上場しているソフトウエアメーカーがビットコインに投資
・米決済大手が財務上の資産としてビットコインを購入
・米フロリダ州マイアミ市長が市職員給与や税金の支払手段にビットコインを検討
・世界最大の信託銀行が暗号資産の資産管理(カストディー)サービス立ち上げを発表
これまでビットコインなどの暗号資産に対して盗難リスクなどを懸念して投資に踏み切れなかった機関投資家の中にも、暗号資産の資産管理サービスを提供する金融機関が増えることで投資環境が整い、暗号資産への投資に前向きになり、より資金が暗号資産へ流れやすくなっていくことが考えられます。
なお、上場企業がビットコインを資産として保有することは、投資信託などを通じてその企業の株式を保有している投資家も、間接的にビットコインを保有しているような状況になることを認識しておく必要がありそうです。
さらなる上昇の鍵となるのは暗号資産ETF?
ビットコインは「代替資産」とも呼ばれたりします。これに対し株式や債券などの資産を一般的に「伝統的資産」と呼びます。代替資産はそれら伝統的資産とは値動きに関連性のないことが一般的に考えられています。
代替資産と呼ばれるものには他にも不動産や商品などがありますが、貴金属の金(ゴールド)も代替資産と呼ばれるものの1つです。
ビットコインは金と似たような性質を持つ資産ともいわれており、2つはよく比較されています。似たような性質の1つに「総量が決まっている」という点があります。金がこれまで採掘された総量と残りの埋蔵量の合計は約21万トンと見られています。このことが金の希少性を生み出しています。
ビットコインもブロックチェーン技術をベースにマイニングという手段を使ってインターネット上で採掘されています。ビットコインの発行総量は2100万枚と上限が決まっていて、このことが金と同じように希少性を生んでいます。他にも以下のような共通点があるといえます。
■特定の国や組織に依存していない
■人々がそれ自体に価値があると思うことにより価値が決定される
■世界中で取引可能で換金性が高い
■偽造ができない
■劣化しない
■分割してもその価値が変わらない
ビットコインが「将来1ビットコイン5000万円程度になる」との予想をしている人の中には、現在の金の時価総額にビットコインの時価総額が追い付く場合のことをその根拠としているようです。
その金の価格推移を以下のグラフで見てみます。過去、金価格が大きく上昇したきっかけの1つには2004年の金ETFの誕生があったことがグラフから考えられます。
※金の価格推移グラフを基に筆者作成
2021年2月、カナダでビットコイン上場投資信託(ETF)の取引が始まりました。米国でも過去にETFの申請が何度かされてきましたが、現在のところまだ米国市場では承認されたETFはありません。そして日本市場でもビットコインのETFはまだありません。
ビットコインのETFに投資できるようになれば、投資家にとっては暗号資産の取引所を使わなくても、なじみのある証券会社を通じて投資できるようになります。そしてビットコインを保有するための保管場所についての心配も軽くなり、専用のウォレットと呼ばれる暗号資産保管用のお財布を用意する手間なども省けます。
また日本では暗号資産取引で得た利益は現在「雑所得」として扱われ、所得税の計算においては給与などの他の所得と合わせて総合課税されています。そのため、累進課税により利益額によっては税負担も重たいものになってきます。
これがETFとなった場合、売買による利益は譲渡所得扱いで分離課税となることが考えられるため、現在の雑所得で計算される所得税の負担より軽くなることが期待されます。
ビットコインなどの暗号資産のETFが世界的に広まれば、今よりさらに投資しやすい環境になることが考えられることから、代替資産としての価値が高まっていくことを筆者は考えます。
投資対象として見られるようになった暗号資産
金とよく比較されるビットコインですが、その歴史はビットコインがピザ2枚と最初に取引されたとされる2010年5月からまだわずか10年ほどしかありません。
それでも、同じように歴史の浅いインターネットやスマホなどが短い間にここまで世の中に普及してきたことを考えると、同じIT技術を基にしたビットコインの普及もそんなに時間を要さないかもしれません。またその価格上昇速度も他の資産には見られないほどのスピードを見せています。
まだまだ価格変動の大きい暗号資産ですが、投資対象として検討するだけの価値はすでにあるものと思います。
参考
日本銀行 暗号資産(仮想通貨)とは何ですか?
Bitcoin日本語情報サイト ビットコインが使える日本のお店(ビットコイン決済対応店舗)
CoinMap
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)