更新日: 2021.06.29 株・株式・FX投資
【おさらい】「造船」だけど造船やってません。「水産」だけどインスタント麺が主力です。社名がいつでも「名は体を表す」わけではない!
こうした「?」を調べる以前に、企業のことを社名で思い込みしてしまうと、意外な展開となることだってありえるのです。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
「名は体を表す」わけではない企業とは
「名は体を表す」。その企業の主力の製品やサービスが社名になっていれば、こうしたことわざの典型的なケースなのでしょう。しかし、長い時間のなかで、もともと主力だった事業が今やそうではなくなった。こんなことも決して珍しくはありません。
よく指摘されるのが日立造船㈱。東証1部上場の機械・プラントメーカーで、証券コード7004、株価719円(2021年6月16日終値)です。
もともと「大阪鉄工所」として創業され、現社名となったのは1943年です。2002年に造船事業を分離し、またかつて属した日立製作所「日立グループ」のメンバーでもなくなっています。
この企業への投資を考えるとき、造船業界の事業環境や成長性を調べたり、日立グループ全体の成長戦略をチェックしたりすることは、あまり的を得ていないわけです。
ここまで極端ではありませんが、富士フイルムホールディングス㈱もそうでしょう。東証1部上場、精密化学メーカー等の持株会社で、証券コード4901、株価7960円(2021年6月16日終値)。ちなみに、社名のフイルムの「イ」は大文字で、読み方も「ふいるむ」です。
もともとの社名「富士写真フイルム」のイメージが、まだまだ強いかもしれません。しかし、カメラがほぼデジタル化されてしまった昨今、同社の写真フィルム製品を日常で見かけるとしたら、定番商品の「写ルンです」(使い捨てカメラ)くらいでしょうか。2021年3月期の売上高約2.2兆円のうち、フィルムのシェアはごくわずかです。
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こちらも、社名と主力事業が違ってます
東洋水産㈱も、社名と主力製品が大きくズレてしまった事例になります。東証1部上場の食品メーカーで、証券コード2875、株価4460円(2021年6月16日終値)です。
築地市場で創業されて、もともと水産物や魚肉加工食品(ハム・ソーセージなど)が主体でしたが、1962年から「マルちゃん」ブランドのインスタント麺に進出。売上高が日清食品グループに次ぐ業界第2位の大手です。ブランド「マルちゃん」が社名と一体で認知されているので、「水産」主体と誤解されることはあまりないでしょう。
製造メーカーが他社から委託されて、その相手先の名前やブランドの製品を製造することや、そのメーカーを意味する「OEM(オーイーエム)」について、以前に書きました。カップ麺での事例の1つとして挙げた西友の「みなさまのお墨付き 特製ブレンドソース焼きそば」は、東洋水産製でした。
この「みなさまのお墨付き」カップ麺シリーズのなかには、㈱酒悦が製造したものもいくつかあります。この社名を聞いて、福神漬けに代表される瓶詰め食品が思い浮かぶかもしれません。カップ麺とは無関係にも思えますが、どういうことなのでしょう。
江戸時代から続く漬物の老舗で、明治になって福神漬けを考案し元祖を名乗っていた酒悦がライバルの桃屋に市場を次第に奪われ、ついに倒産した。1977年4月2日に朝日新聞がこのように報じています。
その後、東洋水産の傘下となり、東洋水産のホームページにもグループ会社の1社と掲載されています。福神漬けが東洋水産を介してカップ麺につながっていくわけです。
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まとめ
社名が必ずしも実態を表していないケースは、世の中にたくさんあります。また、横文字やカタカナ文字ばかりで、社名を聞いただけではどんな事業をしているのかまったくイメージできないケースも珍しくありません。
株式投資は、特定の業界やそのなかの特定の企業をスタートラインに検討する場合には、“名が体を表していない”ことにより勘違いやピントはずれな判断をしてしまうことはめったにないと思われます。
しかし、例えば「配当利回りがよい」など機械的な数値基準でグルーピングをすると、いろいろな業種や業態の企業が候補にのぼってきます。
そんなとき、よく調べずに社名のイメージだけを鵜のみにしてしまうと、思わぬ投資行為になりかねないかも。企業名が必ずしも「名は体を表す」わけではない。このことは、いつでも要注意なのです。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士