更新日: 2021.07.30 株・株式・FX投資

株式投資を始める前に覚えておきたいこと(6) EPS、PERってなに?

執筆者 : 西山広高

株式投資を始める前に覚えておきたいこと(6) EPS、PERってなに?
別稿で何度か「銘柄選びのヒント」についてお伝えしてきました。
 
株式投資を始めるとそれぞれの銘柄を評価する「指標」となる数値を目にすることが増えてきます。いくつかある指標はそれぞれその銘柄、会社の現在の状況を表すものですが、株価は未来を見通しているものです。そのため、一概に指標の高低が投資する価値がある(=将来値上がりが見込める)と判断できるということにはなりません。
 
しかし、それぞれの指標がどのような意味を持つのかを理解し、参考とする価値はあります。今回は「EPS」と「PER」という2つの指標について考えます。

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西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

EPSってなに?

EPSはEarnings Per Shareの略で「一株当たり純利益」と訳され、企業が上げる利益が一株あたりいくらかを示す指標で、下記のように算出します。
 

 
株主から集めた資本の総額が時価総額ですが、それをもとにどれだけの利益を生んでいるかという収益力、すなわち「稼ぐ力」を表す指標の1つです。
 
発行済み株式数には自社で保有している株式は含みません。つまり、市場に流通している株式数に対し、どれだけ稼いでいるかを示すことになります。
 
ですので、その会社が「増資」、既存の株主に新株を割り当てる権利を付与する「株主割当増資」や「第三者割当増資」「公募増資」などによって新株が発行され、発行済み株式数が増加すればEPSの数値は下がります。一方、自社株買いなどによって流通株式数が減少すればEPSは上がります。
 
株主にとっては、一株当たりの純利益が増加すれば一株に対して割り振られる配当も増える可能性が高まることから、自社株買いには株価を押し上げる効果がありますし、増資は逆に株価が下がる要因になりやすいといえます。
 

PERってなに?

PERはPrice Earnings Ratioの略で「株価収益率」と訳され、一般的に株価が割安か割高かを判断するための指標であるといわれます。下記のように算出します。
 

 
その会社があげる利益(純利益)に対し、株価が先述のEPSの何倍になっているかを示す指標です。株価が分子、EPSが分母ですのでPERの数値が少なくなる時は株価が下がるかEPSが上がった時ということになります。
 

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PERの適正水準は?

一般的にPERの適正水準は過去の株式市場のPERの平均が15倍程度であることから、15倍を下回ると割安などといわれることがあります。
 
しかし、実際にはそう単純ではありません。株価は未来を見ています。
 
その会社の稼ぐ力が将来上がればEPSは上がります。そのままの株価であればPERは下がるはずですが、将来稼ぐ力が上がると見込まれていれば市場がその状態を見過ごすことはありません。株価も将来に期待して上がることになります。結果としてPERの適正水準といわれる数値よりもかなり高い数値になることがあります。
 
PERが高いから割高という側面もありますが、PERが高いことは市場がその会社、銘柄に寄せる期待値が高いという見方もできると考えられます。逆にPERが低い場合、利益水準に比べ割安であるといえるのですが、将来の利益の積み増しについて市場が悲観的に見ているともいえます。
 
また、EPSは「一株当たり純利益」、すなわち純利益を発行済み株式数で割った数値ですので、仮にその会社の決算で純利益が赤字であった場合にはその年のEPS、PERはマイナスとなり、算出できません。
 
現在、コロナ禍の影響で一時的に業績を大きく落としている企業もあります。外食産業や旅行・観光業、航空行や鉄道業などはその典型ですが、それらの会社が倒産しなければいずれ復活する可能性はあります。EPSやPERはあくまでも参考指標の1つであり、それだけでは割高・割安を判定することはできないといえます。
 

事例研究

比較的身近な銘柄として電気機器のメーカーを取り上げ、それぞれのEPS、PERを比較してみましょう。
 

●三菱電機(6503) EPS 97.89(連結) PER 16.47倍(連結)
●パナソニック(6752) EPS 90.00(連結) PER 14.28倍(連結)
●日立製作所(6501) EPS 568.87(連結) PER 11.18倍(連結)
●バルミューダ(6612) EPS 114.39 PER 55.07倍

( )の数字は株式コード
(EPS、PERの数値はYahoo!ファイナンスの6月30日現在のデータを引用)

 
三菱電機、パナソニック、日立製作所は誰もが知っているでしょう。それぞれ東京証券取引所の一部市場上場銘柄であり、これらの会社の製品は家電量販店などでいくつも目にすることができます。
 
それぞれのデータは連結決算のデータであり、EPSは連結での売上高規模や発行済み株式数によって大きく数値が異なるため、これらの会社の間での単純な比較には利用できません。それぞれの会社の過去のデータと比較して、トレンドをつかむことには利用できるでしょう。
 
一方、PERは株価をEPSで割ったものなので、同じような事業を行う各社の比較を行ううえではある程度参考になると考えられます。
 
もう1つ参考に挙げたのは、2020年12月に東京証券取引所のマザーズ市場に上場したバルミューダです。前に挙げた3社と比べると売り上げ規模も発行済み株式数も圧倒的に少ない会社です。従業員数も100人ちょっと、扱う製品の品目も少なく比較するには無理があるかもしれません。
 
バルミューダは扇風機やトースターなどこれまでにさまざまなメーカーが扱い、すでに成熟した市場と思われていた白物家電市場にデザイン性や付加価値の高い製品を投入し、次々にヒットさせました。
 
その機能やデザインの独自性が市場でも評価され、2020年に上場しました。現在の55倍という高いPERが示すのは、市場が今後の同社のさらなる発展への期待の表れなのかもしれません。
 

まとめ

株価が変動する要因にはいろいろな要素があります。一方、株価の指標はある時点での会社の業績の一部を切り取ったものにすぎません。大事なのは、いまではなく未来です。どんなに経験豊富な投資家でも未来を確実に予測できません。
 
また、投資スタンスによっても見るべき指標は違うと考えられます。現在その会社が取り組んでいる事業、今後力を入れていく事業、その事業を行う市場の将来性、業界でのシェアの推移など、さまざまな要素が将来の株価の推移に影響します。
 
投資をする際には、その会社が取り組むさまざまな状況、環境を分析する必要もありますが、何よりも企業分析や株式投資を楽しいと感じられることが重要だと思います。
 
株式投資経験者のなかには、株価の急落などを経験し「損をするのが怖い」「痛い目にあった」と感じた結果、株式投資から遠ざかっていく人もいらっしゃるかもしれません。
 
元本が保証されていない株式投資ですので、無謀な投資は資金を減らす結果につながってしまいます。しかし、多少の損失は経験として次につなげるくらいの気持ちで取り組み、結果が出始めるとより楽しいと感じられるようになると思います。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役