更新日: 2021.10.01 不動産投資

募集開始から3分で「即完」! クラウドファンディングの不動産投資とは?

募集開始から3分で「即完」! クラウドファンディングの不動産投資とは?
「即完(即日完売)」というフレーズがあります。マンションや戸建の分譲住宅で、購入希望者が多くて発売(申込受付)を開始したその日のうちに全部が完売する状況を表わしています。
 
特に人気が殺到して売り切れるケースでは、「瞬間蒸発」・「瞬殺」などと呼ばれることもあります。先日、そんな言葉を実感したのがパソコンで目にしたあるシーンでした。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「クラウドファンディング」と「小口化」がキーワード

それは、クラウドファンディングで不動産小口化商品を販売するサイトの画面。「不動産特定共同事業」という制度を用いて、1口1万円から投資できる手軽さです。対象物件は、東京23区内でターミナル駅にも近い立地の新築賃貸マンション1棟。募集総額3億円台後半、想定利回り4.5%、想定運用期間18ヶ月となっていました。
 
画面には、応募状況がリアルタイムで反映される円形の棒グラフが表示されています。12時の位置がスタートラインで、応募があるたびに棒グラフが時計回りに進んでいきます。これが受付開始からわずか3分で100%に到達し売り切れたのでした。
 
こうした商品の側面のうち、まず「クラウドファンディング」(crowdfunding)とは何か。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、インターネットを通して不特定多数の人たちが少しずつ資金を出し合う形態です。
 
日本で始まったのは2011年といわれています。資金を提供する立場でも調達する立場でも、従来のやり方よりも幅広い対象や展開が期待できて、市場規模も10年間で大きく拡大しました。
 
資金の使われ方で「寄付」、「購入」、「金融」の3つの型に分かれ、金融はさらに「融資(貸付)」、「株式」、「ファンド(事業投資、不動産)」などに分類されることがあります。先述のものは、金融でファンド(不動産)の商品ということになります。
 
次の側面は「不動産小口化」。不動産を小口化したこうした商品は、現物不動産に比べて、少額で始められ分散投資もしやすく、管理・運営・賃貸運用の手間もないなどのメリットがあります。一方で、値動きがあり元本の保証がない点は現物と同じ。現物よりも換金化しにくいケースも多いです。
 

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「即完」した商品の概要は

先述の商品の利用の流れは、[会員登録 ⇒ 投資家登録(本人確認) ⇒ 資金入金 ⇒ 投資申込・運用 ⇒ 出金] となっています。ネットバンキングを利用すれば、オンラインで全部完結してしまうほど手軽で簡単です。
 
資金入金がないと投資申込はできません。先述のように申込が殺到して完売する状況には、おカネの裏づけも伴っているのでしょう。登録者への事前案内メールには、人気案件では申込が殺到して数時間で終了する可能性が予告されていたそうですが、実際には3分で即完したのです。
 
想定の年利4.5%・期間18ヶ月で計算すると、仮に10万円を投資した場合の配当は合計6750円(課税前)です。ただし、詳しい説明表示では「インカムゲイン相当2.5%」と「キャピタルゲイン相当2.0%」に分れています。
 
インカムゲインは賃貸収益、キャピタルゲインは売却益を意味します。つまり、賃貸利回りが4.5%あるわけではなく、将来の売却益も含めているのです。
 
少額で不動産への投資ができる点では、J-REITやREIT関係の投資信託でも数万円台で可能な場合があります。しかし、将来の(不確定な)売却益まで想定利回りに組み込んでいるかどうか。そこの違いは目立ちます。
 
もう1つ気になるのが、新規投資を呼びかけるキャンペーン。多くの業者が採り入れてPRをしています。この商品を取り扱う業者の場合、期間限定ですが、新規投資家登録して10万円以上を初回投資すると5000円相当のネットギフト券がもらえます。
 
先述のように、10万円を投資して18ヶ月間の賃貸・売却両方の配当合計が7000円足らずです。キャンペーン還元額は、かなり“大判振る舞い”のように思えます。
 

まとめ

1口1万円から始められて、手続きもネット上でほとんど完結する。こんな手軽さや気軽さをまとった不動産投資の新しいトレンドが、長引く超低金利状態に後押しされて、わずか3分で「即完」となったのかもしれません。
 
一方で、「利回り」の構成の違いや先述のような還元キャンペーンなど、今までの経験からすると少々違和感も否定できません。
 
ベースとなる不動産には、賃貸でも売買でも市況によって価格水準のブレ(リスク)はつきもの。金額や手続きの面でのハードルが低くなったとしても、最後は自己責任になるという本質に変わりはないのです。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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