更新日: 2021.12.03 その他資産運用

【おさらい】「マイナス金利」と「マイナス利回り」は、何が違うの?

執筆者 : 上野慎一

【おさらい】「マイナス金利」と「マイナス利回り」は、何が違うの?
銀行預金の金利は、今やゼロに近い水準。口座維持手数料を取られたり、紙の預金通帳発行が有料になるケースだってじわじわと広がっているようです。
 
わずかな金利をもらっても、口座維持や通帳発行の手数料負担まで考えると実質的に金利はマイナス。そんな状況が個人の日常生活にも迫っています。

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上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「マイナス金利」とは

とはいえ、「マイナス金利」自体は金融ビジネスでの現象です。日本銀行(日銀)は「銀行の銀行」とも呼ばれ、民間金融機関は一定額を日銀に預金することを義務付けられ、また余剰資金を預けることもあります。この当座預金の一部にマイナス金利が適用されているのです。
 
2021年10月の残高を金融機関業態別に抜粋すると、【図表1】のとおりです(※1)。
 


 
マイナス金利政策は2016年2月に始まりました。日銀への預金流入を抑制して市中に出回るおカネを増やす目的でしたが、金融機関の経営にも配慮してマイナスではない金利のベース部分も確保された結果、このような三層構造となっています。
 
【図表1】で、どの銀行業態の残高もプラス金利適用がマイナス金利適用を大きく上回っています。つまり、三層の当座預金トータルで金利がマイナスの金融機関は、実は今のところないことが分かります。
 

「マイナス利回り」とは

では、「マイナス利回り」とは何か。こちらは、国債や社債など債券(借金の借用書を有価証券にしたもの)での話となります。
 
債券は、いくらを(額面金額)、いつまでに(償還日)、そして金利をいついくら支払うか(利払い)を明記して発行されます。同じ有価証券の株式よりも、元本回収や運用益の面で確度がより高い金融商品ともいえるでしょう。
 
また償還日前であっても、元本は保証されませんが、流通市場で換金できます。こうした債券で「利回り」とは、【図表2】のようなイメージで計算されます(※2)。
 


 
債券の利回りは、受け取った利子だけでなく売却した際の利益(損失)もトータルに反映して1年当たりの収益を算出します。投資資金に対する収益(インカムゲイン)だけでなく、投資資金自体の差益(キャピタルゲイン)も含めて計算するのです。
 
株式の「配当利回り」や不動産投資の「表面利回り」などがインカムゲインだけで計算されるのと、大きく違っています。そして債券の「マイナス利回り」ですが、マイナスのものは国債の発行でも見られます。
 
例えば、発行単価100円(表面利率年0.005%、償還期間約5年間)のものが100.42円(利回りはマイナス0.079%)で取引成立する(※3)といった具合です。では、こうしたものにどうして買い手がつくのでしょうか。
 

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「マイナス利回り」の債券が買われる理由とは

「金利が上がると債券価格は下がる」、「金利が下がると債券価格は上がる」とよくいわれます。【図表2】の[額面金額100万円、年利率4%]で発行された債券で考えてみましょう。
 
その後に市場金利が5%に上昇したとすると、この債券の年利率4%は相対的に見劣りするので魅力薄となって価格は下がります。逆に市場金利が3%に下落すると、4%は魅力があるので価格が上がる。金利以外にも債券価格に変動を及ぼす要因はありますが、ざっとこんなイメージです。
 
また償還日までの期間の長短も、市場で取引される債券価格に影響します。金融やビジネスの世界でも“一寸先はやみ”です。債券発行主体の信用力が仮にずっと変わらないとしても、償還日が近いほうが元本回収の確実性が高まるため、金利が安くなっても人気を集めます。
 
そのため、債券の利回りは、【図表3】のような左下がりの曲線で推移します。
 


 
買ったときの利回りが仮にマイナスでも、買ってからの時間の経過とともに、【図表3】の曲線(イールドカーブ)を転がり落ちる(ロールダウンする)ように利回りが低下する(=債券価格は上昇する)ため、最終的にはトータルでプラスの利益が期待できるのです。
 
こうした動きは「ロールダウン効果」と呼ばれます。なお、マイナス利回りの債券が買われる理由は、ほかにもいくつか指摘されています。
 

まとめ

預金のマイナス金利と債券のマイナス利回り、実態としては両方とも純粋に「マイナス」(資金を投じると損をする)というわけではないようです。
 
一方、先述のように、「金利」は投資資金に対する収益(インカムゲイン)だけが対象ですが、債券の「利回り」はインカムゲインだけでなく投資資金自体の差益(キャピタルゲイン)も合算して考える。そこは大きく違います。
 
[出典]
(※1)日本銀行「業態別の日銀当座預金残高」
・この中の「公表データ」添付のエクセルファイルの2つ目の
「ref」(参考)付利の対象となる当座預金残高の明細を参照。
・なお、2021年11月25日時点の閲覧に基づくデータを本文に記載した。
(掲載日が2021年11月16日の2021年10月分エクセルファイル)

(※2)日本証券業協会「利率と利回りの違いって何?」
(※3)財務省「5年利付国債(第149回)の入札結果(令和3年10月14日入札)」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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