更新日: 2022.01.21 株・株式・FX投資
失敗から学ぶシニアの投資入門。 シニアが陥りやすい落とし穴って?
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
現役世代とシニア世代の違い
現役世代の投資は、資産形成とも呼ばれています。いわばコツコツ資産を積み上げていくイメージです。これに比べてシニア層の投資は、すでに資産は積み上がっていますので、その資産を活用して「守りつつ増やす」あるいは「資産の取り崩し速度を緩やかにする」が肝となります。
ご存じのとおり貯蓄と違い投資にリスクはつきもので、それを減らす手だてとして「少額・分散・積立」の三原則があります。資産形成時の重要なポイントとされていますが、シニアの投資の場合も基本は同じです。私の失敗例を通じて“やってはいけないこと”との関連をひも解きます。
【失敗の実例】
筆者がFP資格を取得するために学校に通っていた頃の話です。受講生の中に、元証券マンの男性と「配当おじさん」の異名を持つ男性がいました。
ふたりともベテランの投資家です。お昼休みになると、ふたりを囲み、お勧めの銘柄話などで盛り上がっていました。私はその中の某銘柄で投資を始めました。
その銘柄に決めた理由は、誰もが知る大企業で業績が安定していること、ちょうど手持ち資金が100万円ほどあり購入するのにピッタリの金額だったということです。初心者がいきなり100万円をつぎ込むなんて、今では無謀と思いますが、当時はその感覚さえ持ち合わせていませんでした。
さて、しばらくは小幅の値動きをしていたのですが、ある時期にガクンと株価が下がり、さらにガクガクと下げが止まらない状況に陥りました。どのタイミングでどうしたら良いのか分からないまま、気がつくと半額に値下がってしまいました。ぼうぜんとするばかりでした。
この失敗には4つの理由があります。
(1) 少額から始めることをしなかった
(2) 分散投資しなかった
(3) 自分の投資戦略を決めていなかった
(4) 損切のタイミングを決めていなかった
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シニアが陥りやすい落とし穴
シニアの投資に対し、上記4つの失敗理由から導かれる教訓を当てはめてみます。
【少額で始める】
すでに資産が積み上がっていますので、手元にはまとまった資金があります。お勧めとされる個別銘柄や投資信託の商品に、一括で投資して失敗した例は多いです。
まずは少額から始めて、投資に慣れることは必要だと思います。リスクとの付き合い方など、貯蓄とは違う側面があります。これまでの経験上、投資には向き不向きがあるようです。気乗りしないのに始めても、うまくはいきません。
【分散投資】
「1つの籠に卵を盛るな」の格言が示すように、一括投資は時には大きな損失につながります。個別株式でも投資信託でも、少額からの投資が可能です。定期預金に預けるのなら、100万円を一括かもしれません。
銘柄・商品の分散や買付時期の分散をすることは、リスクを減らすことになります。分けるのが面倒と感じたら、これを怠って大事な資産を半分にした例を思い出してください。
【自分の投資戦略を考える】
投資でもうかった話を聞いて始めてみた筆者ですが、自分の投資戦略がなかったことも失敗の理由です。何をしたいのか、ということも重要なファクターです。
「値上がり益を期待している」「配当や分配金が欲しい」「株主優待を楽しみにしている」など、投資の期間や目的により選ぶ銘柄や商品は変わってきます。マネー雑誌やサイトで、著名な投資家がお勧めの銘柄を指南することがあります。
意見を参考にしたり考え方を学んだりすることには賛成ですが、うのみにせずに自分の判断を大切にすべきです。
【損切りのルール作り】
株価が上昇している時は「もっと上がるかも」、下落している時は「そのうち元に戻るかも」と判断しがちです。
“10%下がったら売却する”といった損切りのルールを事前に作っておくことで、売り時を逃して大きな損失になる危険を回避できます。含み損となると損を確定するタイミングが難しいですが、見極める決断も必要です。
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失敗を小さくする努力が成功につながる
損をした時の対処法も忘れてはなりません。投資をしていると、株価が急落する場面に度々遭遇します。先に“損切りのタイミングを決めておく”と書きました。自分で決めたルールに従いオートマチックに売却することは良策です。
ですが、市場全体が急落したり低迷したりしている場合は、様子見も一案です。時には市場から撤退したくなりますが、ここで損を確定するか、しばらく我慢して回復を待つかによって展開が大きく変わるかもしれません。
例えば、コロナにより一時期株価は急落しましたが、その後間もなくして回復したことは記憶に新しいです。下落は一時的とみて、買い増しした結果、利益を得た投資家も多いです。
これらの教訓は、「どれも理解している」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、分かっていても、いざとなれば正しい判断ができないのが人情です。実は筆者の失敗も、これが最後ではありません。株式投資で勝率100%はないと思います。
いかにリスクを少なくするか、損失を少なく抑えるか、欲張らずに冷静に判断することが基本かもしれません。
筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士