更新日: 2022.02.23 株・株式・FX投資

ハードルが上がってしまった! 株主優待の内容が変更された場合のチェックポイントとは?

ハードルが上がってしまった! 株主優待の内容が変更された場合のチェックポイントとは?
日本で株主優待制度を導入している企業は、1500社程度あると聞いたことがあります。日本の上場企業の3分の1以上です。
 
この株主優待は、配当とは別の“おまけ”のような存在。それだけに、廃止や内容変更がいきなり発表されるケースも少なくありません。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

株主優待の内容が変更されるワケとは

株主優待は、企業業績の停滞が続くと真っ先にリストラ対象となりがちです。また優待内容の多くが個人向けで機関投資家などには利用しづらい点が問題視されて、公平性の観点から見直しされる場合もあります。
 
長く安定的に株式保有してもらいたい。企業のそんなスタンスとは真逆に、配当や株主優待を目的に権利確定日周辺だけ短期保有してすぐに売却してしまう。そんな動きだって、珍しくありません。
 
こうした背景のため、廃止ではなく内容変更であっても、株主優待のハードルが上がってしまった。つまり、優待を受けるための株数や保有期間の条件が今までよりも厳しくなるケースも少なくないのです。
 

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事例で見てみましょう

株主優待の価値を金額に換算し、配当金額に足したものを「実質配当」とする考え方があります。株主優待の内容変更によって、実質配当を株価で割った「実質利回り」がどう変わるのか。ある事例で見てみましょう。まず【図表1】をご覧ください。
 


 
A社は東証1部上場の自動車部品メーカーで、近時の株価は600円台から700円台くらいの水準で推移。今まで100株保有していた株主は、引き続き株主優待を受けるために200株の追加購入が必要になります。
 
仮に、もともとの100株の購入額も含めて株価650円(100株当たり6万5000円)、年間配当24円(100株当たり2400円)とすると、変更前後で実質利回りは、【図表2】のようになります(税金や株式購入手数料は考慮せず)。
 

 
この事例で、配当額や保有期間に応じたクオカードの金額は変わりません。しかし、投資資金つまり割り算の分母が3倍になるので、実質利回りがかなり減少してしまうのは当然でしょう。
 

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「次の一手」はどうする?

この事例で、変更後の対処法「次の一手」は、以下が想定されます。


(1)100株保有を継続 ⇒ 配当だけもらい続ける
(2)200株追加購入   ⇒  配当と株主優待をもらい続ける
(3)100株を売却 ⇒ 別の株式などへ投資先を乗り換える

もともとの100株を安く購入していれば、(1)の配当利回りは4%台や5%台もありえます。株主優待の内容変更は確かに「改悪」ですが、継続保有が必ずしも無意味ではない場合だってあります。
 
(2)は、その追加資金13万円程度で別の高利回りや高株主優待の株などの購入もできる点を留意すべき。「改悪」をリカバリーするため意地になってA社株を買い増す以外にも、投資先はたくさんあります。
 
(3)でこの機会に利益や損失を実現してしまい、その資金で別の運用をすることも一考でしょう。この事例は、株主優待に必要な株数だけを単純に引き上げたもの。ほかに、もっと複雑なケースだってあります。
 
中には【図表3】のB社のように、ハードルを上げて小刻みな設定をしているケースも見られます。
 


 
こちらは、変更前後とも保有期間のハードルはありませんが、株式をたくさん保有するほど優遇される内容に変更です。
 
500株以上で100株ごとに1000ポイント増。しかし900株から1000株で急に3000ポイント増え、1000株から2000株では3倍増。このように、追加投資の効果・効率が急増する「節目」が設定されています。
 
B社の株価や配当額の数値は省略しますが、もともと100株持っていた人が追加購入する場合の実質利回りは、上記の節目で大きく変わるのです。
 

まとめ

今年・2022年4月から東京証券取引所の市場が再編され、市場で個人などが自由に売買できる株式(流通株式)の比率や時価総額などの基準が新市場区分ごとに定められます。個人株主のすそ野や間口を広げておくことは、企業にとっても重要な課題です。
 
長く安定的に保有してくれる、あるいはたくさん保有してくれる株主をより優遇する。そうした流れが今後さらに明確になっていくかもしれません。
 
株主優待のハードルが上がって「改悪」だから、売却してしまおう。あるいは、「改悪」をリカバリーするために何としても買い増しをして、株主優待の権利をキープしよう。こんなストレートなやり方だけが対処法でしょうか。
 
もちろん、安定的な業績が長く続くかどうか。その企業に対する見通し次第ですが、先述のように「次の一手」は、いろいろな選択肢がありえるのです。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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