更新日: 2022.03.01 資産運用

ウクライナ情勢は株式相場の変動要因として、実に教科書的!?

執筆者 : 重定賢治

ウクライナ情勢は株式相場の変動要因として、実に教科書的!?
ここしばらくはテクニカル分析について、投資初心者向けにお伝えしてきましたが、今回からは基本に立ち返って、株式相場の変動要因に基づき、どのようにシナリオを考えていけばいいか確認していきたいと思います。

※この記事は、2022年2月16日時点の情報を基に執筆しています。国際情勢などの変化により、現在の状況と異なる点があるため、基本的な考え方としてご理解ください。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

株式相場の変動要因を捉える一連の流れ

ご相談者さまからしばしば、「相場の変動要因について教えてください」といわれるときがありますが、個人的には「まいったなぁ」という複雑な気持ちになります。
 
ここで聞かれている相場の変動要因は、往々にして株式相場の変動要因という意味ですが、そんなに簡単に、ましてや一言でいえるような代物ではありません。このため、「どうしたものか……」と頭を悩ませます。
 
教科書どおりの説明でよければ、ある程度は解説することも容易ですが、特に今のようなマーケット環境においては、教科書どおりにはいかないのが当たり前だったりするので、あえていうならば「実際に経験しながら、吸収し、学んでいくようにしましょう」というのが結論のように思います。
 
とはいえ、学びたいという意欲を感じるので、ここ最近の事例を基に株式相場の変動要因についてお伝えすると、総論として次のような枠組みで捉えていけばいいと思います。

(1)国際情勢
(2)世界経済
(3)国内経済
(4)セクター(業界)動向
(5)個別株の動向
(6)売買(需給)の動向

(1)から(6)までの関係は、(1)を起点に(2)、(3)、(4)、(5)、(6)と順を追いながら考えていくことを示しています。
 
簡単にいうと、一番外側に国際情勢があって、その枠組みの中で世界経済や国内の経済が動いており、それらの経済動向の影響を受けながらセクター(業界)や個別株が動き、最終的に個別株の需給バランス(売り買い)によって株式が値付けされるといった一連の流れです。
 
このため、特に長期投資を行う際は、(1)の国際情勢の大まかな中身を知っておく必要がありますが、例えば、ここ最近のニュースや新聞などで話題になっている、ロシアのウクライナ侵攻による株式相場の動きは教科書的といえるかもしれません。
 
(1)については、国際情勢によって株価が動くため、株式相場の変動要因の1つになりますが、ロシアによるウクライナ侵攻については、分かりやすくいうと「戦争が起こったら、株式市場はどのように反応するか」ということです。
 
単純に、戦争が起こったら世界経済に悪影響が及ぶため、株価は下がりやすくなると想像できますが、これについては教科書どおりの考え方でいいでしょう。
 
しかし、これは資産運用の教本のようなものを読まなくても誰でも推察できることのように思います。
 
むしろ重要なのは、戦争が起こるかもしれないという(1)国際情勢が、(2)世界経済と(3)国内経済にどのような影響を及ぼし、その結果として(4)それぞれのセクター(業界)や(5)個別株について、(6)売買がどのように行われるかを関連付けて考えることにあります。
 

ウクライナ情勢をめぐる株式相場の一連の動き

試しに、これらについて順を追って説明していきます。
 

(1)国際情勢

まず、ロシアとウクライナに関する歴史を調べてみると、米ソの冷戦が終わった後、ウクライナは独立したものの、ロシアと欧米のはざまで親ロシア派政権と親欧米派政権とが入れ替わりで誕生し、現在のゼレンスキー政権は親欧米派ということが分かります。
 
また、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナにNATO(北大西洋条約機構)に加入してほしくない、ウクライナに対する軍事的・経済的な影響を保持しておきたいなど、ロシア側の事情もみえてきます。
 
そして、NATO(北大西洋条約機構)の盟主であるアメリカと軍事的に同盟を結んでいる欧州各国にとっては、ウクライナをヨーロッパとして取り込みたいという思惑が働いているようです。
 

(2)世界経済・(3)国内経済

そこで、仮に戦争が起こると経済的にはどのような影響が出てくるだろうと考えます。
 
基本軸としては、戦争はインフレを引き起こすということですが、例えば戦争になるとお金がたくさん必要になるので、戦争当事国はお金を刷り、国債を増発します。
 
お金の量が増えるわけですから、モノの価値が上がります。これが戦争⇒インフレの連想過程です。
 
インフレはモノの価値が上がることと考えると、例えばロシアの場合、またウクライナの場合、特にどのようなモノが影響を受けやすいのかと想像します。
 
ロシアの場合は、単純に原油や天然ガスです。ウクライナの場合は穀物でしょう。
 
また、戦争が起こり、お金の価値が下がるとなると、モノでもある安全資産としての金(ゴールド)が買われやすくなるだろうと考えられます。
 

(4)セクター(業界)・(5)個別株・(6)需給(売買)

案の定、セクター(業界)としては、エネルギーや穀物などの資源セクターと金の株価が上昇し、また個別株についても、それらと関連する企業の株式が買われることになりました。
 
こうしてみていくと、株式相場がどのように動くかについて一連の流れが分かるような気がします。好事例というと不謹慎かもしれませんが、実に教科書的ではあります。
 
しかしマーケットは、コロナショック後の景気回復や世界的に広がっているサプライチェーンの逼迫(ひっぱく)などを背景とした物価の上昇を受けて、特にアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)によるテーパリング(金融緩和解除に向けた動き)や、政策金利であるFFレート(フェデラル・ファンド・レート)引き上げ、資産の圧縮といった金融引き締め政策への転換に向けた思惑により、世界経済がどのように影響を受けるかということを土台にして動いているため、ウクライナ情勢に利上げ観測が加わる中での難しいトレードになりました。
 

まとめ

物事は「簡単に」だけで考えると、表面的で、それなりの結論しか導き出すことができません。
 
しかし、ある程度深く考え、そこから本質を見いだして理解したならば、その本質を基にシンプルに物事を組み立てることができるようになります。
 
つまり、簡単に考えること自体にはそれほど意味はなく、むしろ、本質を捉えることの方がシンプルに考えることにつながるということができます。
 
株式相場の変動要因などというものは、今回お伝えしたように世界情勢が最も外枠にあり、その枠組みの中で世界経済や国内経済が動いているため、そもそも複雑怪奇なわけです。
 
だからこそ、初めから簡単に考えようとするのではなく、どこに本質があるのかを探しながら、その過程で多くを学ばなければ、物事を簡単に捉えることは不可能といえるでしょう。
 
ウクライナ情勢については、2022年2月16日時点でロシア軍の一部撤収の報を受け、株式市場は反転上昇していますが、ウクライナ問題が完全に終わっていないという受け止め方と、アメリカの10年物国債利回りが2.00%台を維持していることから、株価の上値が抑えられている傾向があるように思えます。
 
今回は、株式相場の変動要因の1つとして、ウクライナ情勢を題材に説明してきました。次回は、今後の世界経済の前提となってくるであろう、利上げ局面についてお伝えしていければと思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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