更新日: 2022.07.20 資産運用

不動産投資信託(J-REIT)の「ペイアウトレシオ」。これって何?

執筆者 : 上野慎一

不動産投資信託(J-REIT)の「ペイアウトレシオ」。これって何?
不動産投資信託(J-REIT)の分配金は、年に2回(1回の場合もあり)支払われます。
 
その際、明細書(分配金計算書)と一緒に届く資産運用報告書には、分配金に関する方針が表明されているケースが大半です。
 
中には「ペイアウトレシオ○○%程度」といった具体的数値が記載されていることがありますが、これってどんなことなのでしょうか。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「ペイアウトレシオ」とは

例えば、サムティ・レジデンシャル投資法人の資産運用報告(※1)では分配方針が「ペイアウトレシオ70%程度を目処」とされ、このペイアウトレシオを「当期純利益に減価償却費を加算した額に対する利益超過分配分を含む分配金総額の割合」と説明しています。何だか難しそうですね。
 
ここで、上記の説明に次のように(  )を付けて、(  )の中を読み飛ばすとどうでしょうか。「当期純利益(に減価償却費を加算した)額に対する(利益超過分配分を含む)分配金総額の割合」。
 
「当期純利益額に対する分配金総額の割合」となります。何だ、これって株式でいう「配当性向」じゃないか。そう感じた方も多いでしょう。配当性向とは、当期利益(純利益)のうちどのくらいを配当金として株主に還元しているかの割合で、株式投資の判断材料とされることのある指標です。
 
この数値、低いと「株主軽視」といわれたり、逆に高すぎても「無理してないか」といった心配につながります。何%くらいが適正なのか一概にはいえませんが、「配当性向○○%程度」を目標や基準として表明している企業は少なくありません。
 

J-REITならではの「ペイアウトレシオ」

J-REITの投資法人の分配金は、通常の株式会社などの法人が支払う配当金に相当します。ただしこのJ-REITの分配金は、収益の90%超を分配するなど一定の条件を満たせば、法人税がほぼかかりません。こうした税制メリットを生かすため将来に向けてもうけの一部をキープすること(内部留保)をほぼせずに、収益のほとんどが分配金に充てられます。
 
このようにJ-REITでは、投資法人が利益の分配を行うための器(導管体)にすぎない位置付けである点が通常の法人と違い、また相対的に高い利回りが得られる。金融商品としてのJ-REITのまさに特徴です。
 
先ほど読み飛ばした(  )の中も、J-REITならではでしょう。利益超過分配金とは、その言葉のとおりですが、内部留保がほぼないJ-REITで利益を超過した分配金が出せるのは、減価償却費があるからです。
 
例えば、150万円の設備を購入した場合、資金はすぐに150万円出ていきますが、価値は少しずつ減っていくので、会計上は15年間にわたって毎年10万円ずつ費用を計上していく。減価償却費とは、こんなイメージのものです。
 

減価償却費から分配ができるワケ

毎年計上される減価償却費ですが、実際の資金支出はありません。利益ではないものの、先述の例ならばキャッシュとして毎年10万円が手元に残るわけです。
 
「不動産投資信託及び不動産投資法人に関する規則」の第28条(※2)では、毎期の減価償却費の6割を上限に投資元本の払い戻しができるとされ、利益超過分配金はこの規定に基づいたものです。
 
ペイアウトレシオでの、まず分母。その決算期での純利益に、同じ期の減価償却費が加算されます。そして分子も、通常の分配金に利益超過分配金を足して計算がされるわけです。通常の株式の配当性向とは少し違うことは、【図表1】を見ると視覚的にも理解できるでしょう。
 

図表1

 
ちなみに、先述の資産運用報告(※1)の「ペイアウトレシオ70%程度を目処」には実は、(物件売却・消費税還付を除く)と注記されています。こうした一時的に発生するかもしれない利益等は、分配方針の数値対象に含めない。当然の対応ともいえるでしょう。
 

まとめ

このようにペイアウトレシオは配当性向と同じ考え方ですが、細部には異なる内容が横たわっています。「配当性向」を和英辞書で引くと、「dividend payout ratio」あるいは単純に「payout ratio」が出てきます。「dividend」は配当の意味ですから、配当や還元の支払いの率(割合)ということ。結局、日本語と英語での両者は、大きなところでは同じ意味合いとも思えます。
 
「配当性向」と「ペイアウトレシオ」。耳新しい横文字用語は、すでに定着している日本語と基本的な部分では実は同じ意味だった。しかし細部では少々違うところもある。だから分けて考えるためにも、横文字用語にしているのだろうと推測されます。
 
こんなことからも、株式とJ-REITが“似て非なる”ものだと実感できるかもしれません。
 

出典

(※1)サムティ・レジデンシャル投資法人「2022年1月期(第13期)資産運用報告」(分配方針は3ページ、ペイアウトレシオの説明は58ページをそれぞれ参照)
(※2)一般社団法人投資信託協会「定款・諸規則等」~「不動産投資信託及び不動産投資法人に関する規則」
 
※2022/7/20 記事に一部誤りがあったため、修正いたしました。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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