更新日: 2022.09.26 資産運用

投資におけるファンダメンタルズ分析の基本の「キ」。金融相場と業績相場。業績相場は来なかった!?

執筆者 : 重定賢治

投資におけるファンダメンタルズ分析の基本の「キ」。金融相場と業績相場。業績相場は来なかった!?
これまで長い間、テクニカル分析について基本的な内容をお伝えしてきましたが、今回からはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析の基礎的な部分を解説していきたいと思います。
 
投資の実践では、テクニカル分析もファンダメンタルズ分析も行いますが、本格的な分析は投資を仕事にでもしない限り、非常に難しいのが現実です。そのため、特に投資初心者の方は基本的な内容を押さえておけばいいでしょう。
 
最も避けたいのは、何も知らないままでほったらかし投資をすることです。最低限の基礎知識を理解しないまま投資を行うことを避けるために、ファンダメンタルズ分析の基本について一連の記事で説明していきます。
※この記事は2022年7月29日時点の情報を基に執筆しています。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

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ファンダメンタルズ分析の意味


ファンダメンタルズ分析についてもテクニカル分析と同様、投資を行いながら基本を理解した方が分かりやすいため、ポイントについては「実践」に絞っていきます。
 
まずはファンダメンタルズの意味ですが、英語表記は「fundamentals」で、経済の基礎的条件を指します。
 
経済の基礎的条件についての分析とは、例えば、各国の中央銀行が行う金融政策や、国内総生産(GDP)の状況、消費者物価指数(CPI)、雇用統計などのマクロ経済分析だけでなく、株式投資なら企業の財務状況(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など)がどのようになっているかを把握・分析します。要するにファンダメンタルズ分析とは、投資を取り巻く環境について分析するということです。
 
このように聞くと、チャート上でさまざまな分析ツールを用いて行うテクニカル分析よりも、ファンダメンタルズ分析の方が難しいように思われるかもしれません。実際、テクニカル分析は乱暴に言えばゲーム感覚でできますが、ファンダメンタルズ分析の方がややこしく、難しいことは否めません。
 
多くの投資家がアナリストではないので、そこまで細かく分析する必要はありませんが、頻出する経済事象や経済指標、経営指標ぐらいは理解しておく必要があります。
 
それでは、これらを基にファンダメンタルズ分析が投資においてどのように「実践」されているのかを確認していきましょう。
 

相場の「循環(サイクル)」

第一に、短期、中期、長期投資であろうが、相場には「循環(サイクル)」があることを押さえておく必要があります。循環とは、ミクロ的には相場において価格が形成されるリズム(需給)であり、波動ともいえ、マクロ的には景気のサイクルや金融政策に基づく「金融相場」「業績相場」といった長期の相場サイクルをいいます。
 
短期的な循環を意識するなら分析方法はテクニカル分析がメインになりますし、中・長期的な循環なら企業分析や景気サイクル、金融政策といったマクロ面での分析、つまりファンダメンタルズ分析が重要な要素になります。
 

循環(サイクル)期間 短期的な循環 中期的な循環 長期的な循環
主な分析手法 テクニカル分析 ファンダメンタルズ分析 ファンダメンタルズ分析

※筆者作成
 
投資の実践においては、全貌を把握することから始めますが、大きな枠組みの中で相場がどのようなトレンドを描きそうかといった巡航軌道をイメージし、それに相場の動きが沿っているのか、もしくは離れているのかといった視点で相場を眺めていきます。そして、相場の大局観をイメージした後でテクニカル分析の領域となる、よりミクロな領域に視点を移していきます。
 
簡単にまとめると、大枠のイメージをファンダメンタルズ分析、よりミクロな需給関係の把握をテクニカル分析で行っていきます。
 
順序としては「ファンダメンタルズ分析」→「テクニカル分析」がいいように思いますが、実践では情報を得ながら両方を同時に行うことになるので、この順序で必ず行うべきだということではありません。
 

金融相場と業績相場

循環を探る際、特に投資初心者において最も分かりやすいのは「金融政策」でしょう。金融政策を理解する目的は、現在の相場循環が「金融相場」なのか、「業績相場」なのかを把握することです。
 
金融相場は、中央銀行が金融緩和政策を行い、その後、金融引き締め政策に転じるまでの間のサイクルをいいます。一方、業績相場は金融引き締め政策に転じる前後から、再び金融緩和政策が実施されるまでのサイクルのことです。
 
これらの理解の中心には「金利」がありますが、大きく分けると「短期金利」と「長期金利」の2種類です。
 
この記事の執筆時点(2022年7月29日)では、アメリカは金融緩和政策から金融引き締め政策に大きく転換し、金利が上昇する局面に入っています。通常、金融緩和政策は景気が悪くなってしばらくした後に始まり、景気が一定の条件を満たすようになれば解除され、この期間では金利は下がっていきます。
 
金利は大きく分けて2種類あると説明しましたが、金融相場では長期金利である「10年物国債利回り」が先行して下がっていきます。そして、実体経済に直接影響を及ぼす短期金利である「政策金利」が、後を追うようにして引き下げられていきます。このような局面が金融相場の始まる時期です。
 
金融緩和政策の下では景気は改善され、徐々に回復、拡大していきます。金融緩和政策は、金利を引き下げることで景気を下支えするのが目的であるため、基本的には景気をよくするための方策といえます。こうしたことから、金融緩和政策開始のニュースが出てくると、例えば、株式投資においては「ここからが本格的なブルマーケット(強い上昇相場)の到来」と判断されます。
 
その後、景気が徐々に持ち直していき、実体経済が好転していく中で最終的に景気に過熱感が見え始めると、金融緩和政策が解除され、金融引き締め政策への転換が図られます。この過程は、まず長期金利である「10年物国債利回り」が先行して上昇し、後を追うように短期金利である「政策金利」が引き上げられていきます。
 
金融引き締め政策の目的は過熱した景気を冷ますことであり、金利を引き上げることでそれを実現していきます。こういった局面が業績相場の始まる時期です。業績相場は好景気の下、企業業績が好調に推移しやすい相場循環であるため、金利が目いっぱい引き上げられるまで業績相場は継続します。
 
ここで注意しておきたいのは、金融相場と業績相場の間の時期です。金融相場は金融緩和政策の実施時期で起こる相場循環ですが、いよいよ金融引き締め政策に転換するという思惑が出てくると、例えば株式市場では、いったん株価が天井を着け、反落していきます。これは、マーケットにおいて金利上昇による景気減速懸念が広がるからです。
 
その後、ある程度の金融政策の見通し、つまり金融引き締め政策の内容や開始の時期が判明していくにつれ、相場の反落は収まり、そこから業績相場に移行していきます。
 
金融相場と業績相場は、相場の循環において知っておくべき必要最低限の知識です。相場の大局観のど真ん中に位置する考え方であるため、特に投資初心者の方は基本の「キ」として覚えておくようにしましょう。
 

コロナ相場後の相場循環

とはいえ、金融相場、業績相場という相場循環が、どの時代でも常に当てはまるわけではありません。特にコロナ相場以降は、それを明確に物語っています。
 
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により景気が急減速し、株価も急落しました。この過程で、アメリカの中央銀行に当たるFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)は、景気の急減速による衝撃を食い止めようと、それまで実施してきた金融引き締め政策から一気に金融緩和政策に転換しました。
 
通常は、ゆっくりとしたペースで様子を見ながら金融政策の転換が図られるため、この時は株式市場などのマーケットには心の準備すらできる余裕もありませんでしたが、その後、マーケットは落ち着きを見せ、そこから金融相場がスタートしています。
 
金融緩和政策の中身は史上まれに見る大規模なもので、これに加え、アメリカ政府は財政政策として巨額の財政出動を実施したことにより、わずか2ヶ月で景気後退(リセッション)から抜け出しました。この過程で株式市場において株価が急上昇し、アメリカの三大株価指数であるNYダウ、S&P500、NASDAQは史上最高値を更新しましたが、この局面がまさに金融相場です。
 
ここまでは通常の相場循環どおりの動きを示しており、金融相場においては景気が回復、拡大していく局面であるため、物価の上昇も当然の現象といえます。しかし、アメリカ国内において物価がハイスピードで上昇していく中で、FRBの対応が遅れたのではないかと批判が沸き起こりました。
 
今から約1年前、2021年7月、8月、9月のアメリカのインフレ率は、前年同月比のおおよそ5.0%超程度で推移していましたが、2021年10月に6.2%、11月に6.8%、12月には7.0%と早いペースで上がっていき、その過程でFRBは金融緩和政策を解除し、金融引き締め政策に転ずることを決定しました。
 
FRBへの批判の是非はさておき、2022年7月13日に発表された6月のインフレ率に至っては、前年同月比9.1%となったため、さらに物価が大幅に上昇していることが分かります。
 
後から振り返れば、本来なら2021年の早い段階で金融緩和政策解除に向けたガイダンスがなされるべきと考えるのは至極もっともな話ですが、その時点では、まだ新型コロナウイルス感染症拡大による経済的なダメージもあったため、FRBの姿勢が間違っていたと一概にいうのは難しいかもしれません。
 
このような背景が、金融相場がいつごろ終わるのか、そして反落局面の到来、その後の業績相場はいつ来るのかという、通常の相場循環の見立てを複雑にさせました。結論を言ってしまうと、金融相場の後、反落局面がそのまま景気の減速、後退局面に入ってしまい、業績相場は来なかったということになります。
 
ここでいう景気後退(リセッション)は、投資の世界でいうところのテクニカルリセッションで、アメリカでは2四半期連続でGDP成長率がマイナスになると、景気後退局面に入ったとされます(正式にはこれが基準ではなく、本当に景気後退に入ったかどうかは、もうしばらく後の判断を待つことになります)。
 
2022年1~3月期のGDP成長率が前期比マイナス1.6%、そして7月28日に発表された2022年4~6月期のGDP成長率が前期比マイナス0.9%であったため、とりあえず2022年1月からアメリカ経済はリセッションに入ったと判断し、結果的に業績相場は来なかったと考えていくことになります。ただし、あくまでも「投資を行うなら」という意味においてです。
 
つまるところ、業績相場は来なかったわけですが、今後、これを前提にすれば株式市場はもう一段、下落する可能性を見ておく必要があるかもしれません。一方、現時点で進んでいる長期金利の低下トレンドに着目する場合、業績相場は来なかったが、再度の金融緩和政策への転換がそれほど遠くないと判断し、買い進む動きも出てきています。
 
この点については次回以降で説明しますが、短期、中期、長期といった投資期間にかかわらず、金融相場と業績相場という相場循環はファンダメンタルズ分析の基礎であるため、通常どおりに動いているなら問題なし、イレギュラーな動きになっている場合は、その現象について自分なりに調べ、理解するといったアプローチは求められます。
 

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まとめ

投資を行う際はファンダメンタルズ、つまり経済の基礎的条件に関する情報を把握、理解する必要があります。
 
今回は相場の循環、特に金融相場と業績相場についてお伝えしましたが、時代によっては基本的な考え方がいつも成り立つわけではないことが分かります。
 
大切なのは、実際の状況を拾い上げる力です。「セオリーとしてはこうだけど、そのとおりにならない場合もある」といった認識を常に持ち、常識にとらわれない分析が求められるのがファンダメンタルズ分析の面白いところです。
 
次回も相場の「実践」をテーマに、ファンダメンタルズ分析についてお伝えしますが、今、マーケットで何が起こっているかを把握しながら、金利の推移が株式市場のプレーヤーにどのような思惑を抱かせているのか考えていきたいと思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
 

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