更新日: 2022.10.05 資産運用

投資をするうえで最も重要な経済指標の一つ、アメリカの雇用統計の見方

執筆者 : 重定賢治

投資をするうえで最も重要な経済指標の一つ、アメリカの雇用統計の見方
資産運用は何が楽しいかというと、その一つに経済指標となるデータを読み込むことがあります。
 
この記事では、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析について説明していきますが、「雇用統計」も重要な指標の一つです。
 
なお、この記事は2022年9月18日の情報を基に執筆しています。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

雇用統計を観察する理由

雇用統計とは、失業率や雇用者数、賃金の状況などを集計したものですが、投資を行ううえではアメリカの雇用統計が最も注目されます。なぜ、雇用統計が非常に重要な指標かというと、中央銀行の金融政策に大きく影響を及ぼすからです。
 
中央銀行には、物価と雇用を安定させる役割があります。例えば、今のように物価が上がり過ぎると金利を引き上げ、景気の過熱を冷まそうとします。また雇用については、例えば失業率の上昇による景気の悪化を防ぐために利下げを実施します。
 
株式投資などを行う際は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析を通じ、雇用統計などの統計データを用いて中央銀行の政策企図を探っていくことになります。
 

雇用統計の見方

それではアメリカの雇用統計について、現在の相場環境を前提に、どのように観察すべきか具体的に確認していきましょう。
 

失業率

まずは失業率ですが、端的にいうと労働力人口に占める失業者数の割合で、働ける人のうち、失業している人が何人いるかということです。失業率が高いと景気が悪く、失業率が低いと景気はいいと判断しますが、投資においてはこのような素直な判断はあまり行わず、予想に対して実績値がどうかというところで投資判断を下します。
 
例えば、アメリカの2022年8月の失業率は予想値が前月比3.5%だったのに対し、実際の失業率は前月比3.7%だったため、予想よりも高かったと判断します。ちなみに、2022年7月の失業率は前月比3.5%で、前月よりも失業率は悪化したことになります。
 
失業率の動向は図表1のようになっています。
 
【図表1】


 
出典:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米労働省) Civilian unemployment rate
 
これはアメリカの労働省が発表している失業率のチャートですが、コロナショック後に急激に上昇した失業率は、その後、急速に低下してコロナ前の水準に戻っているのが分かります。この動向からいえることは、アメリカの失業率はおおむね低水準に位置しているが、8月の失業率の上昇を受けて、下げ止まった可能性も考えておく必要があることです。
 
とはいえ、依然として失業率は低い水準に位置しているため、失業率から推測するとアメリカの中央銀行に当たるFRBは、さらなる利上げを行う可能性が高いと予測することができます。
 

雇用者数

次に非農業部門雇用者数ですが、これは農業従事者以外の雇用者数が前月と比べてどれだけ増減したかを表すデータです。
 
こちらも失業率と同様、予想値と実績値を確認して判断しますが、2022年8月の非農業部門雇用者数は前月比30万人増の予想に対し、実際は31万5000人の増加と、予想を若干上回りました。ただし、7月の実績値が52万6000人だったので、8月分は予想値と実績値ともに前月を大きく下回ったことになります。
 
受け止め方としては、8月の雇用者数は前月より下回ったものの、予想値は若干上回ったため、それほど雇用環境が大きく悪化しているわけではないとなります。
 

賃金の状況

そして賃金の状況ですが、2022年8月の平均時給は前年同月比5.3%という予想に対し、実績値が5.2%と、わずかながら低下しました。7月の値が前年同月比5.2%であったため、横ばいです。
 
前月比ベースでは、予想の0.4%に対して結果が0.3%と、こちらもわずかに低下しています。7月は前月比0.5%だったため、若干下回っていますが、このようにみると平均時給は前年同月比も前月比もさほど大きな変化はなく、少し鈍化気味のほぼ横ばいといえます。
 
以上をまとめると、失業率、非農業部門雇用者数、平均時給は、いずれもそれほど大きな変化はなく、雇用統計の面では景気が悪化してきたと判断することはできません。むしろ、物価が上昇している割に雇用は依然として堅調であるとさえいえます。
 
2022年8月のアメリカの雇用統計が発表された9月2日(金曜日)、株価指数のS&P500は寄り付き後(マーケットのオープン時)に上昇して始まりましたが、結局は始値より終値が安い陰線で引けたことをみると、雇用統計の内容が比較的よいため、もっと利上げが必要になるだろうと株式市場は受け止めたようです。
 

まとめ

現在のように物価が高止まっているような局面では、賃金の状況が非常に重要で、マーケットでは今か今かと賃金の下落を待ち望んでいます。これは賃金の下落が消費の減退を招き、その結果、物価が下落するからです。
 
アメリカの雇用統計は毎月第1金曜日に発表されますが、その時々のマーケットの思惑によって受け止め方が変わるため、注視していきましょう。
 

出典

U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米労働省) Civilian unemployment rate
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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