30年前に預けた定額貯金が消滅 満期後放置すると危険な事態に?

配信日: 2022.10.18

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30年前に預けた定額貯金が消滅 満期後放置すると危険な事態に?
銀行などに預けておいた預貯金が消えてしまうことは考えられません。しかし、30年以上前に、郵便局に預けそのまま放置し続けている「定額郵便貯金」は、権利が消滅してしまいます。どう考えても「おかしいな?」と思うのですが、特に高齢の方は一度昔の通帳を確認してください。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

郵政民営化以前の貯金が対象

2007年10月から郵政民営化が実現し、現在の郵便局の貯金業務は「ゆうちょ銀行」が引き継ぐようになりました。しかし郵政民営化以前に預けた貯金のうち「定額郵便貯金」などは、それ以前にあった「郵便貯金法」が適用されるため、満期から20年経過した時点で通知があり、2ヶ月以内に解約の手続きをしないと、預金者の権利が消失してしまう規定になっています。
 
2007年9月以前の「定額郵便貯金」は、銀行の「定期預金」と同じ性格をもつ貯金で、年代がさかのぼるほど利率がよく、年利が5%以上だった時代もあり、非常に多くの方がこの貯金を保有していたと思われます、満期までの期間が10年で、その後放置された期間が約20年だとすると、現在消滅の危機にあるのは、1992年前後に預けた「定額郵便貯金」などです。
 
現在の定額貯金の金利は非常に低いですが、1970年代後半から90年代初めにかけては、定額貯金や銀行の定期預金の金利が次第に高くなり、多くの方が預けていた時代です。
 
当時は、株式や投資信託を購入する方は少数派で、郵便貯金は最高の投資商品といえる時代でした。郵政省管理下の旧来の郵便貯金法自体が、不公正との指摘もありますが、民営化以前の定額貯金に対しては、残念ながらこの制度が適用されてしまいます。民間の銀行などではまずありえません。
 

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住所変更や本人死亡で追跡できない

民営化後の郵便局でも、この制度を知らずに放置している預金者に、案内を送り解約の手続きをすることに現在でも努めています。具体的には、局内のポスターやホームページで告知をするほか、満期の期日を迎えた時点で通知をしており、さらに満期後20年を経過し、権利が消滅する前に、改めて注意喚起の案内を郵送しています。
 
ところが、多くの場合、本人が定額貯金を預けたこと自体を失念しているだけでなく、預金者が住まいを変更しているために案内が届かない、預金者自身がすでに亡くなっており、遺族が定額預金の存在に気づいていない、郵便貯金が消滅するとは考えず、安全だから預けたままにしている等、さまざまな事情があり、特にここ数年、権利を消失する定額貯金は増え続けています。30年前に定額貯金をした方は、現在ではほとんどが70歳以上の高齢の方だと思われます。
 
権利が消滅してしまうのは、「定額郵便貯金」が圧倒的に多いのですが、それ以外に「積立郵便貯金」「教育積立郵便貯金」などが対象になります。出し入れが簡単な「通常貯金」(銀行では「普通預金」に相当する)は、どんなに古い取引であっても権利が消滅することはありません。長期間、お金の出し入れがなくても大丈夫です。
 

郵貯の消滅額 2021年だけで457億円

ではどのくらいの貯金額が消滅しているのでしょうか。総務省が公表した資料を見ると、10年ほど前の2011年には、消滅した貯金額は90億円程度でしたが、多少の増減を繰り返しながら、最近では急激に増加しています。消滅した貯金額は、2020年には369億円、さらに2021年はこれまでの最高の457億円にのぼり、10年前の約5倍です。
 
今後数年間はこの水準は続くと思われます。30年前の1991年当時は、定額貯金の年利率が5.5%を超えていた時期にあたり、多くの資金が郵貯に流入していた時期に当たります。預金者の権利が消滅した郵便貯金は、ゆうちょ銀行の収益になるのではなく、すべて国庫に納付される仕組みです。
 
実際に満期を過ぎても払い戻されていない郵便貯金の残高もかなりあります。全体として、額自体は減少傾向にありますが、2020年には3476億円、2021年には3243億円の残高があります。比較的高金利の時代に預けられ、そのまま放置されてきたと推定され、その多くは10年満期の定額郵便貯金と思われます。
 
郵政民営化以前につくられたこの仕組みには、満期後に一定期間を過ぎても放置されていると、管理費用がかかるとの理由によるものです。民間銀行に預け放置した定期預金が消滅する、といった事態は考えらないため、時代感覚から大きくズレがある旧態依然の「お役所体質」の残滓といわれても仕方がありません。
 

制度が変更される可能性は少ない

現在では、消滅した定額貯金をめぐって、何とか権利回復ができないか、といった動きも見られます。消滅時点になって気が付き、消滅を防ぐために「真にやむ負えない事情」を伝えるなどして、解約までにこぎつけるケースも見られます。しかし時期が少しでも遅くなると、手続きができないなど、ハードルはかなり高いのです。
 
権利の消滅に対する苦情もここ数年増加傾向にあります。制度自体を知らなかった方も多く、気づいた時には権利が消滅していた、というケースです。民営化以降、社員のなかにも旧態依然としたこの制度の改善を求める声も強くなっていますが、旧郵便貯金法を改正することも簡単ではないため、「郵便貯金が蒸発した!」との事態に直面する方が、今後も出てくると思われます。
 
1992年以降、2007年の間に定額貯金をされていた方は、そのまま満期になっても放置していないか、古い通帳を探し確認してください。また現在では高齢になっている方も多いと思いますので、ご自分のご両親などが定額貯金に預けたままになっていないか、通帳の所在を確認してみることをお勧めします。
 

出典

法務省 郵政事業 郵便貯金の権利消滅に関するお知らせ

 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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