更新日: 2022.12.01 株・株式・FX投資
S&P500のメインシナリオを作成! 短期・中期目線でどんな可能性が想定できる?
「これから株式市場はどうなるか」というのは、投資について積極的に学び、実践していきたいという方にとっては、資産運用の実力を伸ばす、いいきっかけになるように思います。
本記事では、前々回の記事「株式投資の重要局面! 9月のCPIが映し出す金利水準の考え方」と、前回「S&P500の現在地はどこ? 相場循環を眺めながら確認する方法を解説」の記事を踏まえ、以前に取り上げたチャート分析の方法を振り返りながら、シナリオ作成について説明していきたいと思います。
なお、この記事はあくまでもシナリオ作成の方法を提示するものであり、実際の投資において相場がこうなると断定するものではないことをご理解ください。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
株式相場の現在地
まず、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の確認ですが、現状ではアメリカのコア消費者物価指数(以下、CPI)が依然として上昇傾向にあるため、中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)は、今後も積極的な利上げを行っていくだろうというストーリーを描いたとします。
これを前提に、前回お伝えした相場循環に現在のS&P500の状況を当てはめ、S&P500の現在地を以下のように見立てていきます(あくまでも個人的な相場観です)。
【図表1】
〇S&P500(日足)
出典:TradingView Inc. TradingView
※解説を目的に使用
物価が高い、金利が上がる、株価は下落するといったストーリーが描けるかもしれませんが、果たして本当にそうなるのかは誰にも分かりません。
投資はあくまでも、可能性をどのように想定するかという連想ゲームであるため、できるだけ決め打ちせず、いくつかのシナリオを作成し、可能性を模索する謙虚な姿勢が必要になります。
これは短期投資であろうと長期投資であろうと、共通して備えもっておく必要がある姿勢であり、だからこそ「長期にわたる積立投資が鉄板」といった、投資の考え方や方法が1つしかないと投資初心者が思ってしまうような安易な風潮は、投資においてむしろ危険ということができます。
短期投資にしろ、長期投資にしろ、複数のシナリオをあらかじめ用意し、どのような状況になっても臨機応変に対策できるようにしておくことがリスクマネジメントとして重要です。そのため、チャート分析を行い、視覚的に投資をイメージしてリスク(不確実性)に備えます。
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波動の計測とトレンドラインの描画
テクニカル分析にはいくつかの方法があり、どの方法を採用するかは人それぞれです。筆者は個人的に波動を重視しているため、エリオット波動理論とよばれる古典的な分析方法を用いていますが、これに基づきS&P500の波動を計測すると、以下のようなイメージで捉えることができるかもしれません。
【図表2】
〇S&P500(日足)
出典:TradingView Inc. TradingView
※解説を目的に使用
※チャート上の「Doble Zigzag」は、「Double Zigzag」に訂正
簡単に説明すると、2022年に入って2020年3月以降続いていた上昇相場が終わり、その後、現在に至るまで、S&P500は下降局面のなかにあるという見立てをしたとします。エリオット波動理論については、過去の記事を参考にしていただければと思いますが、波の取り方(波動)は図表2のチャートのように考えています。
相場の波は、相場がどうなるのかという大局観を表していますが、このシナリオでは下降局面はまだ続くことを前提に描いています。
テクニカル分析では、このように相場の大局を波形取りによってイメージしていきますが、次にチャートで示してあるようなトレンドラインを引いていきます。図表2のチャートでは、トレンドラインを赤の線のように上値同士を結んだもの(上値のトレンドライン)と、青の線で下値同士を結んだもの(下値のトレンドライン)で表示しています。この2本の線は、相場がこのレンジで下落していることを視覚的に捉えるものです。
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フィボナッチ・リトレースメントの描画
波動とトレンドラインに基づき、方向感がある程度見えたところで、次に行うことはフィボナッチ・リトレースメントの描画作業です。フィボナッチ・リトレースメントも過去の記事で取り上げましたが、簡単にいうと1つ前の相場に対し、今の相場がどの水準で止まるかを探るためのツールです。
図表3のチャートでは、コロナショック後の上昇相場に対して、2022年当初から続いている下落相場がどの水準で終わりそうなのか、フィボナッチ・リトレースメントを用いて計測しています。
【図表3】
〇S&P500(日足)
出典:TradingView Inc. TradingView
※解説を目的に使用
※チャート上の「Doble Zigzag」は、「Double Zigzag」に訂正
2020年3月から続く大相場では、特に「山高ければ谷深し」の相場格言にもあるように、非常に高く打ち上がった上昇相場に対して、下落相場は深く落ち込む可能性を考えておく必要があります。このような相場の習性を知っていれば、2022年当初から続いている下落相場が簡単に終わるといった楽観的な見方は、当初からもたずに済むわけです(相場では常に、過去の歴史に学ぶ謙虚な姿勢が大切です)。
大相場の後の修正(調整局面)ではおおむね、フィボナッチ・リトレースメント「0.382」「0.5」「0.618」の3つの水準が意識されやすくなります。これらの水準をS&P500で示すと、図表3のチャートでは「0.382」が「3800水準」、「0.5」が「3500水準」、「0.618」が「3200水準」となっています。
S&P500は一時「3500」近辺まで下がっているため、フィボナッチ・リトレースメント「0.5」の水準が意識されていることが分かります。これに相場循環を照らし合わせると、S&P500はすでに逆業績相場のなかにあると推定しているため、今後のタイミングによりますが、フィボナッチ・リトレースメント「0.618」の水準である「3200」へのトライがくることは想定しておく必要があると考えておきます。
もちろん、その水準を下回ることも考えられますが、そのような深さにまで落ち込む場合は、世界経済が完全に不況に陥り、ヨーロッパや新興国で金融危機や通貨危機が発生する、極めてシビアな状況が現れる可能性を見越しておく必要があるでしょう。この段階では、まだ後の話として現実視しませんが、念のため頭に入れておくといったイメージです。
レジスタンスラインとサポートラインの描画
フィボナッチ・リトレースメントによる計測作業が終わると、今度はレジスタンスライン(上値抵抗線)とサポートライン(下値支持線)を描画していきます。
レジスタンスラインは、相場がここまで上がるという線で、サポートラインはここまで下がるという線です。描画のポイントは、節目に存在する直近の値と過去の値を線で結ぶことです。例えば、チャートにおいてレジスタンスラインとサポートラインを引くと、図表4のような描き方ができます。
【図表4】
〇S&P500(日足)
出典:TradingView Inc. TradingView
※解説を目的に使用
※チャート上の「Doble Zigzag」は、「Double Zigzag」に訂正
何本か線が引かれて少し見にくいかもしれませんが、直近の節目水準と過去の節目水準が結ばれて1本の線になっていることが分かります。
このシナリオでは、2022年10月13日の下値をいったんの下値(チャートの「a?」)と見ていますが、仮にこれが想定どおりに下値となる場合、おそらく、この水準がいわゆる2番底となるため、この地点から下落相場が反転し、一時的に上昇相場に転換するだろうと考えることができます(この場合、長期金利と短期金利はいったん下落)。
もちろん、その水準を下に抜け、短期的に下がる可能性も見ておく必要がありますが(この場合、長期金利と短期金利はさらに上昇)、2022年9月の米CPIの総合指数で下落傾向が見て取れるため、原油価格が再び大きく上昇しないかぎり、前者の予測でシナリオを立てていくことになります。
仮に今後、短期的に相場が上昇していくと考える場合、S&P500は現在の地点から上に向かっていくことになるため、どの水準まで切り上がっていくかを想定する必要があります。これを見るために使うのがレジスタンスラインです。
S&P500では、まず節目となるレジスタンスラインが「3600水準」と「3700水準」に1本ずつ引かれています。この水準が目先で意識されやすい上値のめどとなりますが、これらを突破すると、次のレジスタンスラインが「3900」の手前にあるため、短期的にはここまでの上昇をイメージしておきます。
それ以上の上昇は、2022年当初から続く下降局面のなかではなかなかイメージしづらいため、いったん「3900水準」を限度に上昇相場のシナリオを立てておきます。
波の予測軌道の描画
このような考え方に基づいて波の描画を行うと、以下のような軌跡になるかもしれません。あくまでも、そうなるかもしれないというイメージですが、このイメージをつかむことがシナリオ作成の第一の目的になります。
【図表5】
〇S&P500(日足)
出典:TradingView Inc. TradingView
※解説を目的に使用
※チャート上の「Doble Zigzag」は、「Double Zigzag」に訂正
チャート上に「b?」と「c?」と記してありますが、これがレジスタンスラインとサポートラインに基づく上値と下値のイメージです。これに従って波の方向性を描画していきます。
このように上下の水準を想定したうえで、横軸の年月日や時間などの日柄について考えていきますが、このシナリオでは2022年内は上昇、2023年の年明けに下落という大ざっぱな想定にしてあります。
まとめ
S&P500は、このシナリオに基づくと短期目線ではいったん上昇、中期目線ではまだ下落する可能性を想定しています。前々回、前回、そして今回と、投資のシナリオの作成における考え方を説明してきましたが、本記事で作成してみたシナリオをメインシナリオとしながら、他のシナリオも検討する必要があります。
投資のシナリオは最低限、3つぐらいの方向感をイメージするように組み立てていくといいのですが、次回は本記事で作成したメインシナリオを軸に、ほかのシナリオも作成していきたいと思います。
出典
TradingView Inc. TradingView
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)