更新日: 2023.02.15 株・株式・FX投資

「定年を機に投資を始めてみようと思います」って大丈夫?

「定年を機に投資を始めてみようと思います」って大丈夫?
仕事中心の生活をしていた頃は株式投資に割く時間もなかったけれど、投資に興味が湧いてきたというAさん。「退職金で投資を始めるのは危険」と思っているAさんに、投資に挑戦するうえでの心構えなどを伝授します。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

興味を持った時が始め時

Aさんは昨年定年退職し、現在は“毎日が休日”という生活を送っています。コロナの行動制限が緩和されたこともあり、最近は同期会・同級生との集まりなどで旧交を温める機会が増えました。そこでは、投資に関する話で盛り上がることもあります。
 
これまでは不労所得に後ろめたさを感じ、投資とは距離を置いていたAさんですが、周りの友人たちが投資経験者だった事実に驚きを隠せません。特に、もうかったという話に興味津々です。
 
年金生活者にとっては、高配当の株式や毎月分配型投資信託で「定期的にお小遣いがもらえる」ことは、とても魅力的です。世間でもよくある話ですが、失敗した話よりも成功した話を聞いた時のほうが記憶に残りがちです。
 
友人の成功体験に登場する企業が自分の身近な会社である場合、「企業を応援するつもりで個別株式に投資する」というポリシーのもと、投資意欲はかき立てられるかもしれません。
 
実はAさん、これまでメインバンクを通じて投資信託の経験があります。NISA口座の開設を勧められた時には、毎月10万円ずつ積立投資を行いました。また退職金を受け取った時に、定期預金と投資信託のセットプランを勧められ、リスクの少ないタイプの投資信託をしています。ですが残念なことに現在の成績はマイナスで、投資信託との相性は悪いと勝手に決めているようなところがあります。
 
ですが、これは時期的な要因が大きいと考えられます。「成績が良くないから」と、売却してしまうのは早計です。全体の相場が好転する時期になって挽回できるか否かを見極めることが大切です。筆者はこれまで多くの方から経験談を聞きますが、受け身で始めた場合は、このようになるケースが多いように思います。
 

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NISA口座で始めるのがお勧め

今回Aさんが始めたいと思ったのは、個別株式の投資です。銀行では取り扱いがなかったので、NISA口座を銀行から証券会社に移すことにしました。銀行でNISA口座の廃止手続きをし、証券会社では銀行で発行された「投資信託 勘定廃止通知書」と「(少額投資非課税制度)非課税口座開設届出書」をもってNISA口座が開設されます。
 
「手数料が安いネット証券が良いかも」「ゆっくり対面で相談したいので店舗があるほうが安心」などの理由で、金融機関を変える場合も同じです。NISA口座は1人1口座しか作れないので、この手続きが必要になります。
 
「定年後に時間ができたので投資を始める」という場合、退職から時間がたっていませんので、手元に相当な資金があるかもしれません。
 
折しも、老後資金を長く持たせるためには、(1)長く働く、(2)投資で資金を増やす、(3)節約する、などと見聞きすることもあるでしょう。“働かず節約も苦手”となると、「投資で大きく増やそう」と無理をしてしまいがちで、ここが失敗の要因となるのです。
 
そこでお勧めしたいのは、NISA口座です。 NISAは“少額投資非課税制度”で、「少額」がポイントです。まず1年間は、NISA口座の範囲内で取引経験を積んでみてはいかがでしょうか。退職後は資産を守るスタンスが大切です。
 
NISAは年間120万円の範囲で投資が可能です。この金額は限度額ではなく、一度使うと減額されていきます。X社30万円Y社40万円で購入した場合は、120-(30+40)=50なので50万円が残枠となります。その後X社の株式を売却しても、増枠されることがない点は注意が必要です。すなわち、慎重に銘柄選びをすることになります。
 
個別株式に投資する場合は、(1)100株で(2)複数銘柄に投資する場合は業種を分ける、などの分散を心がけてください。
 
来年からはNISA口座の投資枠が増枠される予定です。慣れた頃に投資金額を増額するチャンスがやってきます。分散投資できる投資信託との合わせ技にもチャレンジしてほしいと思います。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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