更新日: 2024.01.19 NISA
2024年、新NISAスタート! NISA口座開設数の推移から見る留意点とは?
政府は2022年、家計の金融資産を増やすことを目的に、貯蓄から投資へのシフトを促進する「資産所得倍増プラン」を打ち出し、政策の一つとしてNISAの口座数を5年間で3400万、投資額を56兆円に倍増させる目標を掲げてきました。
そこで本記事では、これまでのNISAについて、口座の開設数や利用状況がどのように推移してきたか確認していきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
これまでのNISA口座数の推移
日本証券業協会が発表している「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)」では、証券会社におけるNISAの総口座数は図表1のように推移しています。
図表1
〇NISA総合口座数の推移
出典:日本証券業協会 「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について」
グラフの青色が一般NISA、緑色がつみたてNISAの口座数です。なお、2024年から始まった新NISAでは、一般NISAとつみたてNISAという口座区分ではなく、一つの口座内で成長投資枠とつみたて投資枠の利用が可能です。
日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について」によると、2023年9月末時点で証券会社でのNISAの総口座数は1356万口座で、2022年末時点と比べて15%増加しています。
ただし、図表1は証券会社に限った口座数とその推移です。金融庁によるNISAの取扱全金融機関を対象とした調査結果では、2023年9月末時点での総合口座数は2034万7321口座(一般NISAは1128万4963口座、つみたてNISAは906万2349口座)となっており、2022年末時点の1800万7257口座からは約13%の増加です。
資産所得倍増プランでは、5年間でNISAの口座数を3400万件に増やそうとしていますが、目標を達成させるには2023年9月末時点から口座数を約1.7倍にする必要があることが分かります。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
NISA口座の開設者における投資未経験者割合の推移
次に、証券会社でNISA口座を開設した人のうち、投資未経験者の割合がどのように推移してきたか見てみましょう。
図表2
〇投資未経験者の割合の推移
出典:日本証券業協会 「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について」
2023年9月末時点は、一般NISAの口座開設者のうち投資未経験者の割合(青色)は52.9%、つみたてNISA口座では(緑色)は90.9%となっています。
【PR】SBI証券のNISA(ニーサ)
NISA口座での買付額の推移
これまでの一般NISAとつみたてNISA、それぞれのNISA口座における証券会社の買付額がどのように推移してきたか、図表3, 4で確認してみます。
〇一般NISA口座での買付額の推移
図表3
出典:日本証券業協会 「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について」
〇つみたてNISA口座での買付額の推移
図表4
出典:日本証券業協会 「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について」
2023年9月末時点の一般NISAの買付額は、2兆7300億円(累計買付額:22兆7404億円)です。一方、つみたてNISAの買付額は8869億円(累計買付額:2兆8260億円)となっています。
また、金融庁発表のNISA取扱全金融機関での買付額は、2023年9月末時点で一般NISAは2兆7798億5602万円(累計買付額:29兆9438億7413万円)、つみたてNISAは1兆2325億8037万円(累計買付額:4兆842億7184万円)です。
調査結果から見える留意点
これらの調査結果からは、一目瞭然ではありますが、NISAの口座開設数、および買付額は増えていることが分かります。
こうした傾向を踏まえると、新NISAがスタートした2024年も、おそらく口座開設数と買付額は増えていくと考えられます。しかし、これらは際限なく増えるわけではなく、いずれどこかの水準で頭打ちになります。つまり、政府が掲げている目標(NISA口座開設数3400万件、投資額56兆円)に達するまで、どれくらいの期間を要するのかが一つのポイントです。
2023年12月の時点では、2024年中にアメリカとヨーロッパでは利下げが、日本では利上げが始まる可能性が指摘されています。このような金融環境の変化があるなかで、果たしてどこまでNISAの口座の開設数が伸びるのか注意を払う必要はあるでしょう。
また、証券会社における一般NISAとつみたてNISAでの投資未経験者の割合では、圧倒的につみたてNISAのほうが多く、新NISAのつみたて投資枠でも同様の傾向は続くと考えられます。
しかし、つみたてNISAの買付額を見た場合、2023年9月末時点では証券会社で8869億円(累計買付額:2兆8260億円)、取扱全金融機関で1兆2325億8037万円(累計買付額:4兆842億7184万円)と、世界の株式市場の規模と比べて必ずしも多いとはいえず、新NISAでの投資未経験者の新規参入でどこまで拡大するインパクトがあるのか注視したいところです。
まとめ
2024年から始まった新NISAは、個人の資産形成をサポートするという意味では従来のNISAよりも優れた制度といえます。一方で世界的な金融環境の変化を考えた場合、口座開設数と買付額がどれだけ増えるのかは疑問が残ります。
相場が急落して状況が変わるなど、梯子を外されなければいいのですが、仮にそのようになった場合に投資未経験者はどう考えるのか、2024年はマネーリテラシーをさらに高めることが必要な年になるのかもしれません。
出典
金融庁 新しいNISA
内閣官房 資産所得倍増プラン
日本証券業協会 NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について
金融庁 統計・データ集
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)