更新日: 2024.06.26 NISA

NISA口座を開いたけど「シニアは投資しないほうがいい」「インフレに対応するには投資が必要」といろいろな情報に惑わされています。どのように投資したらいいですか? ~前編~

NISA口座を開いたけど「シニアは投資しないほうがいい」「インフレに対応するには投資が必要」といろいろな情報に惑わされています。どのように投資したらいいですか? ~前編~
新NISAが始まり、資産運用に関するニュースを耳にする機会が増えました。シニア世代としては、「もう無理?」「まだできる?」と心が揺らぐでしょう。今回は、シニアの投資初心者からの質問に回答します。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

「シニアに投資はお勧めできない」といわれる理由

「NISA口座を開設したけれど、使い方が分からない」というAさん(68歳女性)。「投資に興味はあるし、老後資金は増やしたい」「どの銘柄を買えばよいのかは教えてもらえないの?」「買うタイミングや売るタイミングを教えてほしい」など、矢継ぎ早に質問が続きます。
 
これまで、「シニアに投資はお勧めできない」「リタイアしたら自己資金に占める投資割合を減らしていくべき」など、年齢とともに投資からフェードアウトしていくことを勧められる傾向がありました。
 
この考え方は今でも、間違ってはいません。Aさんは、これまで投資による老後資産の目減りを警戒して、投資に関心を持たないようにしていたようです。ところが、時代はインフレにシフトしました。「手持ちの100万円は10年後に90万円の価値しかなくなるかも」と考えると、預金に預けたままでいることに焦りを感じてしまったようです。
 
そもそも「シニアに投資はお勧めできない」といわれているには、主に2つの理由があります。
 

(1)時間の問題

投資にはリスクがつきものです。投資の世界で“リスク”とは、ブレ幅のことです。これを低減する手法が分散投資です。
 
金融庁の「NISA早わかりガイドブック」(P.3)では、1989年以降毎月同額ずつ国内外の債券と株式に積み立て投資した場合の、5年後と20年後を比較しています。
 
保有期間5年の場合は、投資を始めたタイミングによって大きな収益を得ることもあれば、損失を被り元本割れとなることもあります。一方20年の場合は、どのタイミングで始めても収益は安定し、データ内では元本割れになることがありません。
 
このように、リスクを少なくする手法である分散投資をした場合でも、保有期間が短いと元本割れの危険があります。「投資に充てようとしている資金は、当分使う予定のない余裕資金ですか?」と問われているのです。
 

(2)判断能力の低下

シニアに「判断能力は大丈夫?」と問うことは、とても失礼な話です。しかし、銀行の定期預金に預ける場合と違い、一般的に投資となると対象となるのは株式や債券などの商品になり、値動きがあります。
 
従来のイメージのような「売った」「買った」となると、「その投資判断がいつまでも可能か?」と不安です。
 
短期的に売買をするのではなく、長期保有で手持ちの資産をシンプルにしておくことで、自身も頭の整理ができるかもしれません。また、家族とも資産内容を共有しておくとさらに安心です。そのためには個別株ではなく、分散投資が比較的容易にできる投資信託を使うことがお勧めです。
 

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欲張らない投資姿勢でリスクを回避

冒頭のAさんの質問に戻ります。Aさんのいう銘柄とは個別銘柄を指していて、「もうかる銘柄をよいタイミングで買い、値上がったところで売却益を得たい」を意味していると考えられますが、これは危険です。
 
“短いスパンでもうけたい”と思う気持ちは分かりますが、リスクを考えると大きく損失の可能性も大です。投資スタンスとしては、「今後のインフレに負けないように少し増やしたい」「3~5%くらいの運用利回りを目指したい」、これくらい控えめな目標設定で始めることがお勧めです。
 
では、実際にどのように始めたらよいでしょうか。
 
この「じっくり増やす方式」に投資する資金は、当分使わない余裕資金です。もし5年後に予定しているリフォーム費用を使ってしまい、その時期に値下がりしていたら、工事ができなくなります。その資金をどうするか? 後編では、実践の考え方をお伝えします。
 

出典

金融庁 はじめてみよう! NISA早わかりガイドブック
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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