最初の大事件から4年・・環境整備で仮想通貨の取引は活性化するか
配信日: 2018.12.26 更新日: 2019.01.11
仮想通貨は決済や海外送金において、スピーディーかつ安価で活用できるというメリットがうたわれています。しかし、実際にはその90%以上が価格上昇を見込んだ投機取引であり、取引所からの大量の不正アクセスだけが話題となっています。
今回は仮想通貨について見ていきましょう。
Text:丸山隆平(まるやま りゅうへい)
経済産業ジャーナリスト
最初の大事件・「マウントゴックス(Mt.Gox社)事件」
仮想通貨が最初に話題を集めたのは2014年の「マウントゴックス(Mt.Gox社)事件」です。当時、世界最大の仮想通貨の取引所であったMTGOXに顧客が預けていた300億円超相当のビットコインが、突然引出不能に陥りました。
同社の経営者は当初、「外部からのサイバー攻撃により奪われた」と説明していましたが、実際には彼自身が会社名義の口座から独断で出金し、一部を着服していたことが分かり逮捕されました。
この事件をきっかけに、取引において本人確認を行うことや、消費者を保護するという考え方が金融当局に出てきました。
また、国際的には仮想通貨交換所の登録・免許制度、本人確認によるマネーロンダリング(資金洗浄)や、テロ資金供与の規制をするべきだという議論が行われてきました。
こうした2つの流れを受けて、安倍政権は2016年の伊勢志摩サミットにあたり、「資金決済法」を改正しました。
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資金決済法上の仮想通貨の定義
資金決済法では仮想通貨の定義として以下の3つを挙げています。
1.物品購入やサービスの提供を受ける際に、これらの対価の弁済のために、不特定多数の者を相手方にして購入及び売却ができるもの(これと相互に交換を行うことができるものを含む)
2.電子的に記録された財産価値で、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
3.法定通貨建てで表示され、または法定通貨をもって債務の履行等が行われる通貨建て資産に該当しないもの
法律ですので大変分かりにくくなっていますが、要するに…
1は、普通のお金のようにモノを買える、サービスを受ける際の支払いに使える、そして交換ができること
2は、コンピュータープログラムとして記録されていること
3は、プリペイド型の電子マネーやポイントとは異なるものであること
―――を表しています。
まとめると、仮想通貨とは「通貨的な機能を持つ財産的な価値」となります。
20倍の高騰から5分の1に下落
仮想通貨の特徴に価格変動が激しいことがあります。
代表的仮想通貨であるビットコインの価格は、2017年度の1年間で20倍に高騰し、その年の年末には2万ドルを超えるほどまでに上昇しました。しかし、現在では4000ドルを切り、5分の1程度までに下落しています。
また、ビットコインの取引通貨を見ると、その3割から4割は日本円が占めています。かつては中国元が取引高の多くを占めていましたが、中国が仮想通貨の取引禁止政策をとったこと、日本が世界に先駆けた形で仮想通貨の法整備を行ったことが大きな要因となっています。
コインチェック事件でさらに厳しく
今年(2018年)1月に、コインチェック社から多額の仮想通貨NEMが流出しました。同社が派手なテレビコマーシャルを打っていたこと、流出額が多額であったこと、同社が仮想通貨の「みなし事業者」であったことなどから、大きな社会問題となりました。
同社の事業は、最終的にはマネックスグループが買収しました。この事件を受けて監督官庁である金融庁は、仮想通貨交換所に立ち入り検査に入ったり、行政処分を行ったりと、厳しい姿勢で臨むことになりました。
当時、上場企業を含む160社以上が仮想通貨交換業に参入しようとしていましたが、金融庁が審査を厳しくしたため、現在の登録事業者は16社にとどまっています。みなし事業者も当初は16社ありましたが、申請の取り下げなどで現在は3社です。
また、10月には仮想通貨の業界団体である日本仮想通貨交換業協会が、金融庁から認定業界団体として認められ、業界の自主規制ルールが策定されました。
こうして仮想通貨は年初に起きた不正アクセス問題を乗り越え、取引活発化の土壌も整いつつありますが、依然として取引の多くは価格上昇を見込んだ「投機」であり一般の消費者には遠い存在にあります。
Text:丸山隆平(まるやま りゅうへい)
経済産業ジャーナリスト