更新日: 2019.01.08 その他資産運用
〈柴沼投資塾〉時事ネタ編⑥ 今、買うより利益確定?
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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方向感が出ない理由を冷静に考えよう
金融相場を短期的かつ直接的に動かす原動力は企業収益の行方です。長期的かつトレンドとして見守っていくべきなのは経済指標です。このうち前者については、スケジュールとして今は端境期なのですから長期的なトレンドを見極めてみましょう。前回もご紹介した通り、政治イベントもないし、米国での景気指標は確かにOKかもしれないけれど、小売売上高や住宅着工など、力強さに疑問符がつくようなものも散見されます。それ所以に、米国金融当局は積極的な利上げに踏み切れません。GDPで世界の4分の1を占める超大国米国の景気の方向性に確信が持てないため、投資家は「米国と比べた」相対的な距離感をほかの国の株式や債券に対してつかむことができずに立ち位置が確定できていないのです。
今の景気指標をまとめると、「力強い雇用統計」対「力不足な物価指標」になっています。これは需要が減少しているというよりも、供給過剰になっていることによるものと考えられます。その最たるものが原油相場。アラブ諸国の減産合意以上に米国のシェールオイルによる供給が増加しているために価格に下押し圧力がかかっています。
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相場の動きから牽引役を探すと:いずれも一服
昨年11月のトランプ新大統領誕生をきっかけとした上げ相場での主役は、インフラ関連銘柄でした。キャタピラーの株価は2016年11月10日の93ドルから2017年4月24日まで103ドルまで上昇しました。年があけて、大統領の求心力の低下とともに公約の実効性に懐疑的な見方が広がると、投資家は新たなテーマを探します。先進国の主要テーマである「少子高齢化=人手不足=人工知能による労働力の代替」から、AI関連に主役が交代しました。グーグルの親会社であるアルファベットの株価は、4月13日の840ドルから6月5日の1,003ドルまで大幅上昇を演じました。4月を境に完全に主役が交代したように見えます。
その後凪の状態が続き、相場全体で主役を演じてきた銘柄たちも、ミッション・コンプリート(役割完遂)と言う感じで落ち着いています。銘柄に感情があるわけではありませんが、売り買いの目安となるPER(株価収益率:利益の何倍まで株に投資するか。この倍率が高いと、株価は将来の上昇が期待されて人気が集まっていることを示します)が通常は達成感到達と投資家が考える20倍を上回って買い上げられているため、ここで投資をしてもさらなる上昇は期待できない、すなわち収益は獲得できないと思って新たな買いがはいらないのです。
凪の時ほど、次の動きに備える
これらの理由から「今は利益確定のタイミングだから」といって膠着状態の金融資産を売却したクライアントに、筆者は逆に尋ねます、「ではその利益確定したお金は冷蔵庫にストックしておくのですか?」
膠着状態があるということは、その先には相場がどちらかの方向に向かうエネルギーが溜まっているということです。ものごとは、みんなが「そうだ!そうだ!景気がいい!」と言っているときは、往々にして過大評価されているために相場は第四コーナーを回っているものです。「よくわからない」といぶかしく思っているときに投資する人が一番大きく収益を獲得することができます。
ではどうするか?ですが、時間軸を長めにとる。すなわち「長期トレンド」が上を向いている資産に注目します。この方向感がわからないときこそ、長い目で見て収益があがりそうだと判断できるもの、たとえば個別株であればROEが10%以上の銘柄、投資信託であれば予想GDP成長率が過去3年平均値を上回っている国や地域のもの(新聞に掲載されるIMFの発表数値でわかります)に資金を移すタイミングです。そのようにして準備した資金は、政治的なイベントやある企業のスキャンダルが発覚したときなど、経済成長には直接影響を及ぼさない理由で一時的にショック状態に陥って下げたタイミングに、買いの好機として利用しましょう。