「iDeCo」vs「NISA」月5000円を35年積み立てた場合、最終的にどっちがお得? 年率「1%・3%・5%」で結果をシミュレーション
配信日: 2025.04.26


執筆者:福嶋淳裕(ふくしま あつひろ)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
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iDeCoとNISAの制度上の比較
iDeCoとNISAは、どちらも「運用益(売却益、配当・分配金など)が非課税となる投資制度」です。iDeCoとNISAの大きな違いは、iDeCoが国民年金や国民年金基金などと関連する私的年金制度であるのに対し、NISAは年金制度ではないという点です。
iDeCoにはさまざまな制約がある代わりに、加入者掛け金の全額を所得控除できるという税制優遇があります。NISAは、投資元金に対する税制優遇はないものの、iDeCoに比べて制約が少なく、分かりやすい点が魅力です。
iDeCoとNISAの制度上の違いについて、図表1で比較します。
図表1
iDeCo | NISA (つみたて投資枠) |
NISA (成長投資枠) |
|
---|---|---|---|
制度名 | 個人型確定拠出年金制度 | 少額投資非課税制度 | |
位置づけ | 私的年金制度の1つ 所管:厚生労働省 根拠法令:確定拠出年金法 |
資産運用に関する制度の1つ 所管:金融庁 根拠法令:租税特別措置法 |
|
投資(買付)できる人 | 国民年金の被保険者 (ただし、企業年金加入者の一部を除く※) |
日本国内に住む18歳以上の人 | |
投資方法 | 定時定額購入(積立買付) | 制限なし | |
拠出限度額、投資枠 | 国民年金第1号被保険者:月6万8000円 国民年金第2号被保険者: 月2万円または2万3000円 (企業年金加入者の一部は加入不可※) 国民年金第3号被保険者:月2万3000円 国民年金任意加入被保険者:月6万8000円 |
年120万円 | 年240万円 |
非課税保有限度額 (総枠) |
制限なし | 1800万円 | |
非課税保有限度額 (内数) |
- | 1200万円 | |
運用商品、 投資対象商品 |
運営管理機関(金融機関等)が 3以上35以下の運用商品を選定、提示 |
長期の積立・分散投資に適した 一定の投資信託 |
上場株式・投資信託等 |
拠出時の税制優遇 | 加入者掛け金:全額所得控除 (小規模企業共済等掛金控除) |
優遇なし (そもそも課税対象外) |
|
運用時の税制優遇 | 運用益 (売却益、配当・分配金など):非課税 |
||
給付時の税制優遇 | 年金:公的年金等控除 一時金:退職所得控除 |
優遇なし (そもそも課税対象外) |
|
受給・出金できる年齢 | 原則60歳以降 | 制限なし | |
月額費用(手数料) | あり (運営管理機関により異なる) |
なし |
※については、国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト 加入希望者の方へ を参照
厚生労働省 確定拠出年金制度の概要、金融庁 NISA特設ウェブサイト を基に筆者作成
35年間、毎月5000円で積立投資する場合、どっちが有利?
35年間、毎月5000円で積立投資する場合のiDeCoとNISAの違いを比較してみましょう。
前提
●20代、会社員、年収500万円
●企業年金制度には加入していない
●iDeCoまたはNISAの口座を開き、35年間、毎月5000円で積立投資する
●積み立てる運用商品は投資信託(購入時手数料なし)
●途中売却はしない
●毎月同じリターンが続くものとし、年率1%、3%、5%の3パターンを想定
●iDeCoの手数料は3種類を負担する(初期費用2829円、月額費用171円、給付費用440円)と想定
35年後の最終残高
35年間の元金合計210万円に対し、最終残高は次のとおりです。
●リターンが年率1%の場合、iDeCoは約242万円、NISAは約251万円に。
●リターンが年率3%の場合、iDeCoは約357万円、NISAは約371万円に。
●リターンが年率5%の場合、iDeCoは約547万円、NISAは約568万円に。
iDeCoもNISAも運用益非課税のため、運用商品や購入日などほかの条件が同じであれば、iDeCoの手数料が最終残高の違いとして表れます(初期費用2829円、月額費用171円など)。手数料がかからない分、NISAが有利です。
35年分の節税効果
NISAには投資元金に対する税制優遇はありません。それに対してiDeCoは、加入者掛け金の全額を所得控除できるため、年末調整または確定申告によって所得税と住民税を軽減(節税)できます。
年収500万円が続く、配偶者控除はない、現時点の税制が今後も変わらないなど、単純化のための前提を置いて試算すると、この人の所得税の税率は10%。35年分の節税効果は次のようになります。
●iDeCoなら42万円節税([所得税6000円+住民税6000円]×35年分)
●NISAは節税効果なし
所得税を納めている人は、加入者掛け金の全額を所得控除できる分、iDeCoが有利です。
35年後に一括で出金した場合の手取り
NISAは出金時に課税されることはなく、多くの金融機関では出金手数料もかかりません。
一方、iDeCoは給付時に、年金の場合は雑所得、一時金の場合は退職所得として課税計算の対象になります。とはいうものの、iDeCoに35年間加入した場合の退職所得控除額(一時金の非課税枠)は1850万円です。
今回のケースのように、iDeCoから一括で受け取る額が1850万円以下であれば税金はかかりません。なお、給付費用(440円など)は一時金から差し引かれます。税金も出金費用もかからない点で、出金時はNISAが有利です。
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向いている人、向いていない人
住宅ローン以外の有利子負債、特に、金利が高い借金がある人は、投資より返済を優先するほうが良いケースがあるため、iDeCoやNISAを始めるのは時期尚早かもしれません。このような人を除けば、次のようにいえるでしょう。
iDeCo
確定拠出年金(DC)には、個人型(iDeCo)と企業型(企業型DC)があります。所得税を納めている人のうち、「企業型DCには加入できないがiDeCoには加入できる」という人にiDeCoは向いています。
企業型DCに加入できる人は、iDeCoよりも企業型DCのほうが有利なケースが多いため、iDeCoとの二者択一(または併用)については慎重に検討しましょう。なお、所得税を納めていない人はiDeCoよりもNISAを優先しましょう。
NISA
「収入または預貯金がある人のほぼ全員」にNISAは向いています。企業型DCに加入できる人は「NISA+企業型DC」を、企業型DCに加入できない人は「NISA+iDeCo」をおすすめします(所得税を納めていない人は「NISA」のみでも良いでしょう)。
まとめ
iDeCoは各種の手数料がかかる分、運用商品などほかの条件が同じであれば、実質的なリターンはNISAを下回ります。ただし、iDeCoは、運用成績に関係なく、所得控除による節税メリットを確実に享受できます。
「毎月5000円×35年間、リターン年率1~5%」の前提であれば、iDeCoは手数料によるマイナスよりも節税によるプラスのほうが大きく、「理論上はNISAよりもiDeCoのほうがお得」といえるでしょう。
実際には、運用益非課税の枠を最大限に活用したいため、「DC(iDeCo、企業型DC)とNISAの併用」をおすすめします。
出典
厚生労働省 確定拠出年金制度の概要
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト 加入希望者の方へ
金融庁 NISA特設ウェブサイト
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)