「iDeCo」と「NISA」は何が違うの? 30歳から毎月「5000円」を投資する場合でシミュレーション
配信日: 2025.06.09

今回は、NISAとiDeCoの加入例を比較してみましょう。

ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
目次
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iDeCoとNISAの共通点と違い
最初にiDeCoと、NISAのつみたて投資枠とを比較してみましょう。
図表1
表は筆者が独自に作成
iDeCoもNISAも非課税制度であることは共通していますが、iDeCoは私的年金であるのに対して、NISAは非課税で金融資産を保有できる金融機関口座を作れる制度のことです。私的年金と非課税の金融資産の保有制度について、詳細はそれぞれ図表1のとおりです。
今回は30歳から65歳まで、毎月同額の積み立てをした場合の結果を、シミュレーションしてみましょう。
iDeCoとNISA(つみたて投資枠)の35年間のシミュレーション
図表2は、iDeCoとNISA(つみたて投資枠)において、同一期間、同じ金融商品に対して同額の払い込みをした場合のシミュレーションです。
図表2
30歳、年収500万円、毎月積立額5000円(年間6万円)、運用商品の年間利回り2.0%
税金計算:扶養家族は配偶者、扶養親族は子供2名、扶養控除は計算せず
昇給・転職などに伴う収入額は、今回は35年間同額として計算する。
iDeCoは所得控除が適用されるので、年収800万円のケースも計算する。
シミュレーション結果は、図表3のとおりになります。
図表3
表中の「3積立期間中の運用利益」は(※2)に基づき算出、「5所得控除(年収500万円)」と「6所得控除(年収800万円)」は所得税法に基づき独自に算出
筆者作成
表中の3 運用利益(利息)の端数は、切り捨て/切り上げ/四捨五入しています。また利息への課税は「なし」として計算しています。
同一金融商品を同期間払い込みした場合は、iDeCoもNISAも運用益は非課税となるため、1~4元利累計額までは同額になります。iDeCoとNISAに差が出るのは、5 所得控除以下の部分になります。
NISAで年間6万円の所得控除が適用されると、所得税において約3000円、住民税で約6000円、合計で年間約9000円の差が出ます。35年間では31万5000円の差額が発生します(年収800万円では約69万3000円となります)。
一方、iDeCoでは金融機関の手数料が毎月かかるので(171~556円。ここでは平均350円と計算しました)、年間4200円、35年では最大14万7000円の負担が発生します。
このシミュレーションの図表3からいえることは、「同一金融商品で同一期間加入した場合、iDeCoは所得控除が適用されるので、NISAより節税になる」ということと、「所得が多いほうが節税額も多くなる」ということです。
ここからは、iDeCoとNISAの使い方について、このシミュレーションを元に考えてみましょう。
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iDeCoとNISAの利用方法はどうすれば良いのか
iDeCoとNISAはどちらか片方のみを選ぶこともできますが、どちらが良い・優位かであるといったものではなく、併用できる制度です。iDeCoとNISAは、個人ごとのライフプランに合わせて選択するのが賢い選び方といえます。
ライフイベント(教育資金、住宅資金など)に合わせて、途中で引き出しができるのはNISAです。一方、老後の受給年金額を増やすことや運用益以外の節税も考える場合は、iDeCoが有利になります。また、iDeCoは途中で引き出しができないため、確実に老後資金をためることにつながるともいえるでしょう。
ただし、iDeCoでは勤務先などの状況によって掛金に上限があるので、よく調べてみる必要があります。iDeCoの掛金上限を超える場合などには、NISAの「つみたて投資枠」を併用することが考えられます。
また、金融商品の選択の自由度は、定期預金、保険も選べるiDeCoが高いといえるでしょう。
終わりに(iDeCoとNISA制度の見直し)
iDeCoとNISAは、今後さらに見直しが検討されています(2025年税制大綱)。例えばiDeCoは現状で払込年齢が65歳未満とされていますが、70歳未満にまで引き上げられることが検討されています。また年間払込額も、81万6000円から90万円に上限の引き上げが検討されています。
一方でNISAのつみたて投資枠でも、ETFの投資枠の要件について見直しが検討されています。
年初からの金融商品市場は、2024年からは一転して波乱の状況にありますが、冷静に金融商品や制度を学習する良い機会になっているのではないでしょうか。
出典
(※1)一般社団法人投資信託協会 投資信託に関するアンケート調査報告書 2022 年(令和4年) NISA、iDeCo 等制度編
(※2)カシオ計算機株式会社 積立計算(複利毎課税)
金融庁 令和7(2025)年度税制改正について
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP