来年「退職金3000万円」を手にする父が「一括投資で5%運用なら、10年で1500万円以上増える」と言います。母は反対しますが、一括投資は“効率がいい”ですよね? 実際いくら投資すべきでしょうか?

配信日: 2026.05.29
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来年「退職金3000万円」を手にする父が「一括投資で5%運用なら、10年で1500万円以上増える」と言います。母は反対しますが、一括投資は“効率がいい”ですよね? 実際いくら投資すべきでしょうか?
定年が迫り、もうすぐ多額の退職金が手に入る状況になると、退職金を元手にした投資を考える人も多いのではないでしょうか。ただ、老後資金でもある退職金を60代から運用する際は留意すべきことも多く、考え方も人それぞれです。
 
とくに老後に差し掛かる中、どんなタイミングで、どれくらいの資金を投資するのかは、悩みのタネになるかもしれません。本記事では退職金3000万円を運用する場合を例に、一括投資のメリット・デメリットや、投資する金額の割合の目安なども紹介しますので、参考にしてください。
松尾知真

FP2級

一括投資は効率がいい?

本来、株や投資信託といった値動きが激しい資産への投資は「長期・積立・分散」でリスクを抑えるのが1つのセオリーです。しかし、若い人に比べ人生の残り時間が少ない60代にとって、15年から20年以上の長期積立では時間がもったいないと考える人も多いでしょう。
 
そのため、退職金をすぐに一括投資して、できるだけ早く資産を増やすのも1つの選択肢です。
 
もし、3000万円の退職金を全て一括投資し、年5%の利回りで運用した場合、10年後には運用益約1900万円が加わり、資産は約4900万円まで膨らみます。NISA口座を使わず、売却時に利益に対する約20%の税金を払ったとしても、1500万円以上資産が増えることになります。
 
仮に3000万円を月25万円に分けて10年間積立投資した場合では、同じ年5%の利回りでも運用益は約859万円となり、一括投資に比べ1000万円以上少なくなります。このように単純な計算結果だけを見れば、残された時間の少ない60代にとって、一括投資は魅力的な手法に見えるかもしれません。
 

一括投資のデメリット

まとまった金額を一括投資すれば、短期間で大きく資産を膨らますことが可能です。その反面、一括投資のタイミングが悪く、運用期間と価格の下落局面が長く重なると損失が大きくなってしまう可能性があります。
 
もちろん、金融商品の価格が上昇するタイミングで一括投資できれば、それに越したことはありません。しかし、いつ最適なタイミングが来るかは誰にも分からないでしょう。
 
とくに貴重な老後資金でもある退職金を全て一括投資に回すのは、かなりリスクが高いと考えるべきでしょう。60代であれば、一度損失を抱えてしまうと、若い人に比べ、取り戻す機会は限られます。
 
そのため、一括ではなく、可能な範囲で投資時期を分散することも大切です。また、当面の生活費や万一に備えて、資産の一定割合は預金や債券などの安全資産で保有する必要もあるでしょう。
 

60代はどれくらい投資している?

それでは退職金をリスク資産で運用する場合、どれくらい投資すればいいのでしょうか?参考までに、退職金を手にすることが多い60代は、実際どれくらい投資しているのかから確認してみましょう。
 
金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、2025年時点で60代の二人以上世帯では約9割が何らかの金融資産を保有しており、金融資産保有世帯の平均値は3087万円です。
 
さらに保有する金融資産の主な内訳は、預貯金1250万円、個人年金などの保険商品が約500万円、株式724万円、投資信託310万円、債券116万円などとなっています。つまり保有する金融資産のうち、株や投資信託といったリスク資産は全体の3分の1ぐらいしかありません。
 
もちろん、資産規模や投資に対する考え方、あるいは年金受給額次第で、各々のご家庭に最適な割合は変わるでしょう。ただ、退職金3000万円以外に金融資産をあまり持たない60代の世帯であれば、このような割合が一般的なのかもしれません。
 

年齢に応じたリスク資産の割合

60代の金融資産の平均を見ると、リスク資産の保有割合は3分の1ぐらいでした。ただ、リスク資産の年齢に応じた保有割合(%)には「100-年齢」もしくは「110-年齢」という考え方もあります。
 
これは金融資産に占める株や投資信託といったリスク資産の割合として、アメリカでの経験則から導きだされたものです。以前は「100-年齢」が良いとされていましたが、現在は平均寿命の延びなども考慮され「110-年齢」とも言われるようになりました。
 
もしもこの目安に沿った場合、60代ならリスク資産の最適な割合は40%から50%になります。ただ、この比率も投資意欲が高い人が多いアメリカでの経験則であり、1つの目安に過ぎません。
 
それでも現在はインフレが進み、現預金だけを保有していると資産は知らぬ間に目減りしてしまうのも事実です。インフレ下では資産運用の重要性が増すことも含め、それぞれのご家庭にあった投資や運用を心掛けることが大切でしょう。
 

まとめ

退職金3000万円を一括投資に回すと、年5%運用で10年後は資産が1.5倍以上に増えます。このように一括投資は効率性が高い反面、運用期間が価格下落局面と重なると、損失が大きくなってしまう点には注意が必要です。
 
とくに60代での一括投資は、損失を取り戻す時間が少ないデメリットもあります。このような一括投資のメリット・デメリットに加え、年齢や資産規模なども考慮し、株に代表されるリスク資産と預金などの安全資産のバランスを考えることも大切です。
 
退職金3000万円だけを前提にするなら、3分の1程度、つまり1000万円前後を1つの目安とし、投資に慣れている場合でも40~50%程度に抑える考え方が現実的でしょう。まずは年金受給額なども念頭に、手元に残しておくべき預金などがどれくらい必要なのかから検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査 2025年
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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