定年を迎えたばかりの夫が「まとまった資金がある今がチャンス」と、退職金「1000万円」を株に投資すると言い出しました。老後資金まで投資に回して本当に大丈夫なのでしょうか? 注意点を解説
そこで、退職金を株に投資することの是非について、退職金を1000万円有している方を例にして考えてみます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
退職金を「一気に株へ」は、老後資金の運用としては不適切
結論からいえば、退職金1000万円を一括で株に投資するのは、老後資金の管理としては基本的には不適切といわざるを得ません。なぜなら、株は株価上昇や配当による利益がある一方で、値下がりや配当の廃止・減額などといった元本割れのリスクがあるからです。
現役世代の若いうちに始める資産形成であれば、たとえどれだけ大きく値下がったとしても、老後までの時間が十分にあるため、働いて補ったり、株価の回復を待ったりすることもできます。
しかし、退職金で投資をするとなると、そうはいきません。老後の生活が差し迫っている状態であるからです。最悪の場合は老後資金を大きく目減りさせた状態で老後の生活を始めることとなり、当初想定していたような老後の生活を送ることができなくなってしまうこともあり得ます。
退職金は運用しないというのもひとつの選択
正直なところ、1000万円という額では値下がりリスクが非常に大きく、株への投資はしないというのも堅実な選択といえます。安定を取って貯金に回し、必要に応じて切り崩すという選択も十分現実的です。
参考までに総務省統計局が公表している「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」を見てみましょう。平均的な65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月約4万円の赤字が生じるとされています。
仮に毎月5万円赤字が生じたとしても、退職金が1000万円あれば16年分ほどの赤字を補うことができます。65歳からその生活を続けても81歳までの不足分を補える計算です。そして、日本人の平均寿命は男女で差はあるものの、おおむね85歳前後になります。
それらを踏まえると、体が動く限り、週2回程度シルバー人材などで働き、収入を得て、極力退職金の切り崩し額を少なくしながら堅実に生活していく方が、無理に株へ投資するより精神的にも経済的にも安定した生活を送ることができるかもしれません。
お金に余裕があればある程度株に回してもいい
とはいえ、やはりインフレや株高などで引き起こされる実質的なお金の価値の低下は無視できません。今の1000万円は10年後には実質900万円程度の価値しかないようなもの、ということも十分に起こり得ます。
そこで、老後も働いて得たお金や、退職金以外の貯金や資産で生活できるような場合に限り、保険として退職金を元本割れしても諦めのつく範囲で、株への投資に回してもよいでしょう。
そうすることで、余裕のある老後生活においてインフレリスクに備えつつ、退職金での投資をより意義のあるものとすることができます。
老後資金である退職金での投資は慎重に
退職金が1000万円と聞くと、気が大きくなるかもしれませんが、大切な老後資金です。
平均的な生活では16年分程度の生活でなくなってしまう可能性のある金額であり、決して全額を投資しても大丈夫というほどのリスクをとれる額ではありません。
退職金を株などの投資に回すのであれば、老後資金とは分けたうえで、元本割れしても老後の生活に大きく影響せず、諦めのつく範囲でのみ行うことをおすすめいたします。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2025年-
執筆者 : 柘植輝
行政書士

