「国債を持っていないから自分には関係ない」と思う人もいるかもしれませんが、長期金利は住宅ローンや企業の資金調達、債券、株式市場など幅広い分野に影響します。
ただし、すべての金利が同じように3%になるわけではありません。長期金利上昇が私たちの家計や資産運用にどのような影響を与えるのかを考えてみましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
「長期金利3%」とは?
一般に日本で「長期金利」と呼ばれるのは、新発10年国債の利回りです。国債は市場で売買されるため、価格が下がると利回りは上がり、価格が上がると利回りは下がります。
例えば、額面100万円で、毎年2万円の利息を受け取れる国債があるとします。100万円で購入すれば、年間の利息2万円は購入価格の2%に相当します。
その後、市場金利が上昇し、新しく発行される国債の金利が高くなれば、毎年2万円しか受け取れない既存の国債の魅力は相対的に低下します。そのため、市場で売却しようとする動きが活発になれば価格が下がります。
もしこの国債の市場価格が80万円まで下がれば、同じ年間2万円の利息でも、80万円で購入する人から見れば利息は購入価格の2.5%に相当します。
このように、国債価格が下がると利回りは上昇する方向に動きます(これは説明のために単純化しています。実際の国債利回りは、利息だけでなく購入価格と償還価格との差や償還までの期間なども考慮して計算されます)。
2026年9月1日には、新発10年国債利回りが一時3.00%と、1996年以来約30年ぶりの高水準になりました。背景には物価上昇への警戒、日銀の追加利上げ観測、財政に対する市場の見方など複数の要因があります。
ただし、ここでいう3%は10年国債市場の利回りです。住宅ローンや預金、企業向け融資などの金利が一律3%になるという意味ではありません。それぞれの金利は異なる仕組みで決められます。
住宅ローンは固定金利への影響に注意
住宅ローンでは、固定金利型と変動金利型で長期金利から受ける影響が異なります。固定金利型の住宅ローンは、長期の市場金利の影響を受けやすいため、長期金利が上昇すると、新規借入時の固定金利にも上昇圧力がかかります。
実際、住宅金融支援機構によると、2026年9月の「フラット35」で借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合、最も多い金利は年3.460%です。2026年6月には同条件で年3.210%でした。
一方、変動金利型は、一般に短期金利の動向をより強く反映します。そのため、「10年国債利回りが3%になったから変動住宅ローンもすぐ3%になる」という関係ではありません。
住宅ローンを利用している人は、自分の契約が固定か変動か、金利や返済額がいつ見直されるのかを契約書などで確認することが重要です。
預金には追い風だが、3%になるとは限らない
金利上昇は借りる側には負担増となる可能性がある一方、お金を預ける側にはプラスになる面があります。日本銀行による政策金利の引き上げや市場金利の上昇を受け、金融機関は預金・貸出金利を見直します。
ただし、預金金利は各金融機関が設定するため、長期金利と同じ水準になるわけではありません。預金だけでなく、国債の金利も上昇しています。
2026年9月募集の個人向け国債では、変動10年の初回適用利率が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%です。長く続いた超低金利期と比べれば、安全性を重視した資産にも利息を期待しやすい環境になっています。
株価やNISAにはどんな影響がある?
一般に金利上昇は株価に下押し要因となることがあります。企業が借入れや社債発行によって資金を調達する際の金利が上昇すれば、利払い負担が増え、利益を圧迫する可能性があります。
また、債券など比較的安全性の高い金融商品の利回りが上昇すると、投資家が株式から債券へ資金を移すことも考えられます。
ただし、金利上昇だけで株価の方向が決まるわけではありません。企業業績、景気、物価、為替、海外市場など多くの要因が影響するため、「長期金利3%になれば株価が必ず下がる」と考えるのは適切ではありません。
また、長期金利が上昇してもNISAの制度そのものが変わるわけではありません。NISAは株式や投資信託などから得た一定の運用益を非課税にする制度です。長期で資産形成を目指している人は、金利のニュースだけで積立を中止するのではなく、自分の運用目的や資産配分を確認することが大切です。
まとめ
長期金利3%は、国債市場だけの話ではありません。住宅ローン、預金、債券、株式などを通じて家計にも影響する重要な指標です。固定型住宅ローンの新規借入金利には上昇圧力となる一方、預金や国債など、お金を預けたり貸したりする側には金利収入が増える可能性があります。
株式にはマイナス要因となる場合がありますが、「長期金利上昇=株価下落」と単純に決まるものではありません。
重要なのは、長期金利3%という数字だけを見て行動するのではなく、「住宅ローンを借りているのか」「安全資産を増やしたいのか」「長期で資産形成しているのか」など、自分の家計や目的に当てはめて考えることです。金利のある時代では、借入れと資産運用の両方を改めて確認することが大切でしょう。
出典
財務省 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債
財務省 国債の利回りはどのように決まるのでしょうか
日本銀行 以前の「公定歩合」は、現在、どのように位置づけられていますか?
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
