資産運用で一喜一憂しないための「コロナショックの振り返り」

配信日: 2020.10.20

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資産運用で一喜一憂しないための「コロナショックの振り返り」
2020年3月、新型コロナウイルス感染症の拡大により、いわゆる「コロナショック」が発生し、株式市場に激震が起こりました。確定拠出年金制度や各種NISA(少額投資非課税制度)を活用し、投資信託で運用している方にとって、自分の投資信託がどうなるのだろうと心配になった方も多かったのではないでしょうか。
 
これらの制度を活用した場合、一般的には「積立投資」を行っていくため、毎月一定の金額で投資信託を購入し、基準価額が下がると購入コストが安くなることから、将来の基準価額の上昇を見込んで継続しているという方もいるでしょう。一方で、コロナショックが収まらず、さらに下落し続けるのではないかと気をもんでいる方もいるかと思います。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

一喜一憂するのは相場の変動要因がよく分からないから

資産運用をする際、「一喜一憂するのは良くない」とよくいわれます。確かに、日々の値動きに気を取られてしまうと仕事や家事がおろそかになってしまうかもしれませんし、また、今回のようにかなり大きなショックでは、大げさにいえば、心配で眠れないという方もいたかもしれません。
 
一喜一憂するのは良くない、というのはよく分かりますが、そうはいっても、日々の値動きに一喜一憂してしまうのは人それぞれ、何らかの理由があってのことです。「なぜ、そうなったのか」、「これからどうなるのか」など、相場の動向を自分なりに考え、結論を見いだすことができないことも、その理由の一つと思います。
 
相場の変動要因、つまり、相場が動く因果関係がある程度分かると一喜一憂しにくくなるため、コロナショックに至るまでの一連の流れをひも解きながら、考えていくことにしましょう。

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コロナショックはなぜ起こったのか

コロナショックを引き起こした原因は何か。いわずもがな、そのきっかけは新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う景気の減速懸念にあります。これは誰でも思うことですよね。しかし、これは株式相場が急落したきっかけに過ぎず、株価チャートにおいては、単に「株価が高値圏にあったから一気に売られた」だけの現象です。
 
テクニカル面でのシグナルはいくつかありましたが、チャート上では「売られやすい環境が整っていたから」というのが答えといえます。これは資産運用の経験を積んでいくと当たり前のように分かってくることですが、これから始める方や経験の浅い方にとっては、こういわれても合点がいかないと思います。
 
そこで、なぜこのようなことになったのかを説明すると、2019年の株式市場が2018年の米中貿易摩擦による景気減速懸念からの反動で上昇し、リーマンショック後の高値圏に再び突入していたためということができます。2018年10月以来、日経平均株価指数は1万9000円を目指すように下落し続けました。
 
この原因はアメリカと中国との間で起こった貿易摩擦ですが、2019年に入り貿易摩擦の是正が図られるようになったことを受け、株価は戻るようになりました。その後、株価はリーマンショック後の高値圏に再び突入し、それ以上に上げることができない状況がしばらく続いていました。
 
このような相場のときは、買いたい人と売りたい人が交錯し、相場に膠着(こうちゃく)が生まれるため、買うための材料と売るための材料の両方を待ちながら相場が展開していきます。そこに新型コロナウイルス感染症の拡大という新しい売り材料が発生したため、一気にガス抜きが起こり、株価が急落したというのがコロナショックに至るまでの大まかな一連の流れではないでしょうか。

利下げにより株価が高値圏に再び突入していた

コロナショックに至るまでの流れで見ておくべきポイントは他にもあります。アメリカの金融当局が利上げから利下げに姿勢を変えていたことです。米中の貿易摩擦が激しくなるにつれ、将来における景気減速懸念が濃厚になり、比較的早い段階でアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策のスタンスをそれまでの利上げ姿勢から利下げに切り替える措置を執るようになりました。
 
この結果、マーケットに安心感が広がり、株式市場は再び活況を呈したわけですが、これが金融政策における株価上昇の要因といえます。金利が下がると企業や家計のコストが軽くなるため、会社にとっても、家計にとってもプラスに働きます。企業としては売り上げが増え、家計としては収入増につながるため、経済活動や消費活動が活発化することから景気にはプラスであるとマーケットが判断しました。

まとめ

相場の変動要因を理解する場合、初めのうちはニュースなどで大きな流れに触れるようにするといいかもしれません。コロナショックまでの大まかな一連の流れを例に取ると、「米中の貿易摩擦」と「アメリカの金融政策の転換」の2つが大きなポイントといえます。
 
端的にいえば、「貿易摩擦が起こると景気は悪くなる」、そしてその結果、「アメリカの金融政策が金融緩和の継続(事実上の利下げ)にかじを切る」といった記事を読み、これらの意味を理解することがとても大切です。コロナショックはまさに不測の事態ですが、それに至るまでの過程で高値圏にあったわけですから、大きな売り材料が出てきたらという意味で、株価の急落はある程度予測することができたかもしれません。
 
とはいいつつも、将来のことは誰にも分かりません。だからこそ、資産運用で一喜一憂してしまうのかもしれません。ただ、一喜一憂しないためには、相場が下がる局面で少なくともその要因を自分なりに見立てる力が必要になります。
 
これから世界経済がどうなるか……。日々、新聞やニュースなどの記事で語られることを自分はどう考えるか。資産運用はこのような連想を頭の体操のようにしていくことが面白いので、経験を積みながら時折自分なりのシミュレーションを行っていくとレベルアップにつながるように思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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