更新日: 2023.07.25 キャリア

ひとり親は資格取得で収入を増やそう! 受講料や受講中の生活費を支援する制度とは?

執筆者 : 新美昌也

ひとり親は資格取得で収入を増やそう! 受講料や受講中の生活費を支援する制度とは?
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、令和2年の母自身の平均年間収入(世帯収入)は373万円、うち平均年間就労収入は 236万円と多くありません。学歴別に見ると、平均年間収入(世帯の収入) は、中卒の場合272万円、高卒の場合335万円となっています。
 
本記事では、ひとり家庭の収入アップに役立つ、公的な3つの資格取得支援制度についてご案内します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

(1) 高等職業訓練促進給付金

就業に結びやすい資格の取得には、養成機関で6ヶ月以上のカリキュラムを修業するなど長期間の受講が必要です。就業に際して有利だと分かっていても、受講期間中の生活費のことを考えると、たとえ意欲はあってもためらってしまう人も多くいるでしょう。
 
高等職業訓練促進給付金は、ひとり親の方が就職の際に有利な資格(養成機関において6ヶ月以上修業するもの)を目指して修業する期間の生活費を支援する制度です。また、修了後に修了支援給付金が支給されます。これにより、生活費の負担が軽減され、資格取得が軽減されます。
 

<対象資格の例>

教育訓練給付の対象となる講座を受講して取得する資格(一部を除く)など、就職の際に有利となる資格で、養成機関において6ヶ月以上修業するものが対象になります(下記参照)。
 
■国家資格
・看護師
・准看護師
・保育士
・介護福祉士
・理学療法士
・作業療法士
・調理師
・製菓衛生師
など
 
■デジタル分野等の民間資格
・シスコシステムズ認定資格
・LPI認定資格
など

以上のような資格が対象になります。
 
対象者は、訓練開始日以降、資格取得を目指す方で次のいずれにも該当するひとり親の方で、現在20歳に満たない児童を扶養している方です。

・児童扶養手当の支給を受けているか、または、同等の所得水準(※)にある方
(※)例:子どもが1人の場合、1年間の収入が365万円未満を目安
 
・養成機関で6ヶ月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれる方

これらの資格の訓練期間中、月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)、訓練期間の最後の1年間は支給額を4万円増額の支援(月額14万円、住民税課税世帯は11万500円)を受けることができます。
 
また、訓練修了後、修了支援給付金として、5万円の支給(住民税課税世帯は2万5000円)を受けることができます。ただし、修了支援給付金の申請は、修了日から起算して30日以内にしなければなりません。詳しくは、お住まいの自治体の担当窓口にご相談ください。
 

(2) 自立支援教育訓練給付金

ひとり親家庭、特に母子家庭の母は、就職しても、結婚・出産等で離職し、専業主婦等であった期間が長いと、職業経験が乏しく十分な技能も身についていないので再就職する際に不利です。そこで、親たちの主体的な能力開発の取り組みを支援し、経済的自立を促進するために自立支援教育訓練給付金制度が設けられました。

自立支援教育訓練給付金は、ひとり親家庭の方が対象教育訓練を受講し、修了したときに対象講座の受講料60%が受けられる制度です。支給するためには、受講する前に都道府県等から講座の指定を受けなければなりません。必ず受講前にお住まいの自治体にご相談ください。なお、制度を設けていない自治体もありますのでご注意ください。
 
対象者は、ひとり親家庭の方で現在20歳に満たない児童を扶養し、以下の要件をすべて満たす方です。

・児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にあること
 
・就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、当該教育訓練が適職に就くために必要であると認められること

対象となる講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座および、その他都道府県等が地域の実情に応じて必要と認める講座です。
 
雇用保険制度から給付金の支給を受けることができない方は、対象講座の受講料の60%、雇用保険制度から給付金の支給を受けることができる方は、上記の金額から雇用保険から支給される額を差し引いた額です。ただし、一般教育訓練講座は20万円、専門実践教育訓練講座は160万円(修業年数×40万円)、特定一般教育訓練講座は20万円が限度です。
 
給付金は、講座修了証明等の確認後に支給されます。ただし、支給額が1万2000円未満に満たない場合(受講料2万円未満)は対象となりません。
 

(3) 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業

ひとり親家庭の親のなかには、さまざまな事情により高等学校を卒業していない・卒業できなかったという人もいるでしょう。そのような場合、希望する職種や安定した仕事に就けなかったなどで、経済的にも困難な状況になってしまうことがあります。
 
そこで、高等学校卒業程度認定試験合格支援事業制度は、高等学校を卒業していないひとり親家庭の親、および20歳未満の児童に対して、高等学校卒業程度認定試験の合格を目指す場合の対策講座の受講費用を軽減するため、受講開始時、受講修了時、合格時に給付金を支給するものです。それぞれの給付金については、以下のとおりです。

・受講開始時給付金:支給の対象となる人が対象講座の受講をスタートした際に支給される
・受講修了時給付金:支給の対象となる人が対象講座の受講を修了した際に支給される
・合格時給付金:受講修了時給付金を受け取った人が、受講修了日から起算して2年以内に高卒認定試験の全科目に合格した場合に支給される

対象者は、ひとり親家庭の親および児童で、下記のすべての要件を満たす方です。ただし、高校を卒業した人など大学入学資格を得ている人は対象外です。

・ひとり親家庭の親が児童扶養手当を受給していること、または、同等の所得水準
・就業経験や技能、どの資格の取得しているのかなど、これらを労働市場などから判断を行い、高等学校卒業程度認定試験に合格することが、その人の適職に就くのに必要だと認められること

対象となる講座は、通信制講座を含む高卒認定試験の合格を目指す講座です。ただし、高卒認定試験の試験科目免除のために高等学校に在籍している人で、単位を取得する講座を受けて高等学校等就学支援金制度の支給となるケースにおいては、この事業の対象となりませんのでご注意ください。
 
令和5年度の支給額は、以下のとおりです。なお、令和5年度は通学制の対象講座の支給限度額が創設されました。

<通学制、通学制と通信制併用の場合>

1. 高卒認定試験対策講座受講開始時は、対象講座の受講料の4割相当額(上限20万円)
2. 高卒認定試験対策講座修了時は、対象講座の受講料の1割相当額(1と合わせて上限25万円)
3. 高卒認定試験合格時は、対象講座の受講料の1割相当額(1、2と合わせて上限30万円)

(注:3は受講修了日から起算して2年以内に高卒認定試験に全科目合格した場合に限る)

<通信制の場合>

1. 高卒認定試験対策講座受講開始時は対象講座の受講料の4割相当額(上限10万円)
2. 高卒認定試験対策講座修了時は、対象講座の受講料の1割相当額(1と合わせて上限12万5000円)
3. 高卒認定試験合格時は、対象講座の受講料の1割相当額(1、2と合わせて上限15万円)

(注:3は受講修了日から起算して2年以内に高卒認定試験に全科目合格した場合に限る)

受講開始時給付金は受講費用の3割(上限7万5000円)、受講修了時給付金は受講費用の1割(受講開始時給付金と合わせて上限10万円)です。合格時給付金は受講費用の2割(受講開始時給付金、および受講修了時給付金と合わせて上限15万円)です。ただし、受講修了日から起算して2年以内に高卒認定試験に全科目合格した場合に支給されます。
 
詳しくは、自治体や福祉事務所にご相談ください。
 

出典

厚生労働省 令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
厚生労働省 高等職業訓練促進給付金のご案内
厚生労働省 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について
厚生労働省 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業について
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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