更新日: 2023.12.16 キャリア
コーチングとは何か? その2 コンサルタントとコーチング
「その2」では、コーチングの技術をコンサルティングや、FP相談に応用するケースなどについて説明します。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
コンサルタントがコーチングのスキルを用いる場合の注意点やメリット
クライアントのニーズなどによっては、コンサルタントがコーチングの技術を用いる場合があります。
コーチングの技術は、コンサルティングのプロセスに有用な要素を提供することができますが、その効果は状況に応じて異なります。コンサルタントがコーチングの技術を用いる際の留意事項やメリットについて、以下で説明します。
1. クライアントのニーズに合わせてコーチングを行う
コンサルタントは、クライアントのニーズに応じてアプローチを考える必要があります。コンサルティング・プロジェクトが問題解決、戦略開発、プロセス改善など具体的な課題に焦点を当てている場合、コーチングの技術は課題達成をサポートすることができます。
また、クライアントが個人的なスキル開発やリーダーシップの向上を求めている場合、それらの目標を達成する手助けになる可能性があります。
2. コミュニケーションと共感
コーチングの技術は、コンサルタントがクライアントとのコミュニケーションを強化し、共感を築くのに役立ちます。クライアントの視点を理解し、質問を通じてクライアントに考えさせるほか、コンサルタントとして洞察を提供できます。
3. 自己責任と自己啓発
コーチングによって、コンサルタントはクライアントに自己責任を持たせ、自己啓発を促すことができます。
コンサルタントは問題を解決するためのサポーターであり、問題を解決するのはクライアントです。コンサルタントはクライアントに問いかけ、自分自身の解決策をみつけるプロセスをサポートする役割を果たします。
4. 適切なスキルとトレーニング
コンサルタントがコーチングの技術を適切に使用するためには、コーチングのスキルとトレーニングが必要です。コンサルタントにはコーチングの専門知識と、クライアントとの信頼関係を築く能力が求められます。
5. 倫理的な考慮
コンサルタントがコーチングの技術を使用する際には、クライアントのプライバシーと倫理規定を順守することが重要です。クライアントの情報やニーズを適切に保護し、倫理的なガイドラインに従うことが要求されます。
ファイナンシャル・プランニングにおけるコーチング技術の応用
1. FP相談ではFPとクライアントの間に信頼関係を醸成する必要がある
FP相談とは、個人の顧客であるクライアントが自分自身の経済的な問題を解決するために、専門家のアドバイスを求めるものです。FP相談において、FPとクライアントの間には乗り越えなければならないいくつかの壁があります。
FPはクライアントの状況とニーズを的確に把握する必要があり、そのためにはクライアントがFPに抵抗なく情報を提供してくれるように、信頼関係を醸成することが必要です。
有効なFP相談を行うためには、FPがクライアント側の状況、特に経済的な状況を的確に理解し、かつ、クライアントのニーズまたは希望を把握しなければなりません。
クライアントの経済的な状況(資産や収入の額、ローンを組んでいる場合は種類と目的、家族構成やそれに関わる問題など)は、できれば他人には教えたくない情報です。
FP相談でも必要な情報をすべて教えてくれるとはかぎらず、クライアントもどこまでFPに伝えれば有効なアドバイスをもらえるか分からないということがあります。そのため、せっかくのFP相談にもかかわらず、大事な情報が抜けていて回答が不完全なものになることもあり得ます。
こうした問題を回避するには、回数も含めて相談にある程度の時間をかけ、クライアントが必要な情報を抵抗なくFPに伝えられること、またFPは必要な情報を何でも聞けるような信頼関係を作り上げることが大切です。
「その1」でコーチングの要点として説明した、「信頼関係(ラポール)の形成」と「質問と対話」により、クライアントに本当のニーズは何か考えてもらう必要があります。
2. FPの育成にもコーチングの技術が役立つ
FP相談の範囲は広く、クライアントによって状況も異なるので、定型化した回答があるわけではありません。FPはそれぞれの状況に応じて、さまざまなパターンを想定しながら、どういった回答が最もクライアントのニーズを満たすのか考える必要があります。
もちろんFPの資格を取得したからといって、そのような対応がすぐにできるようになるわけではなく、例えば先輩のFPがアドバイスを行い、クライアントの相談に柔軟に乗れるFPを育成するケースもあります。その際にもコーチングの技術が役に立ちます。
先輩FPは、後輩FPとロールプレイング型の研修(各自が割り当てられたキャラクターを演じて、与えられた課題を解決していく研修)を行いながら、クライアントの立場として後輩FPの回答では不満があるなどの問題提起をし、さらに考えさせることで、より良い回答ができるように指導します。
これはまさにコーチングのプロセスで、先輩からのコーチングによって後輩FPは徐々に成長していきます。
まとめ
今回の記事では2回にわたり、コーチングの要点や目的、コンサルタントやFP相談での応用について述べてきました。コーチングはコーチからクライアントに押し付けるものでなく、クライアント自身の問題意識を高め、自己解決能力などを身に付けるためのものです。
だからこそ個人や組織のサポートからFP相談まで、応用できる範囲も広いといえます。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー